第4話 ほたると一緒

 やれやれだぜ。俺は会長の汚物を処理し、おぶって1階まで運んであげた後に帰路についた。バイト先をチラっと見て帰ろうかな。 Cafe Sayは学校から歩いて10分くらいのところだ。


 学校を出て3分くらい歩いたところでコンビニがあるので寄って行こう。確かお茶が無くなっていた気がする。




 コンビニに入るとウエイトレスのような格好をした人がコーヒーメーカーの前に立っていた。高校生くらいの人だ。短く和風の髪型だった。


 まぁそういう人も来るのだろう。コンビニだしな。横を通ってお茶を探しに行こうとする。すると横からブフッーっと噴き出すような音がした。なんだなんだ。


 おどろいて横を見るとそのウエイトレスの格好をした女の子がコーヒーを噴き出していた。熱かったのかな?


 はぁはぁと涙目になりながら、コーヒーにスティックシュガーを入れる。




 1本。まぁ普通か。




 2本。まぁ、そういう人もいるよな。




 3本。多いねぇ。甘党かな?




 4本。そろそろコーヒーじゃなくなるな。




 5本。MAAXコーヒーでも作るのだろうか。




 6本。糖尿病への片道切符発行。




 7本。ラッキー7だ。味はラッキーじゃなさそうだが。




 8本。もうなんか下の方ざらざらしてそうだよね。




 あ、止まった。女の子はミルクも3つくらい入れてやっと飲めたようだ。コーヒー飲めないのか……?だったらなんで。


 おっと、そんなことをしにきたんじゃなかった。あまりに変な人だったから見つめてしまった。親がいれば見ちゃダメよと言われるだろう。


 その女の子はくるっとこっちを振り返ったので慌てて目をそらしてそそくさと奥のコーヒー……じゃなかった。お茶を買って出た。




 さて、歩いてあと7分くらいか。コンビニを出て横断歩道を2つ渡った先の橋を通る。すると見たことのある人、というかさっきまで一緒にいた人を発見した。




「ほたるーなにしてるんだー」




「……あ、蒼司か」




「ぼーっとしてんな。どうした?」




「あぁ、いや、なんでもない。散歩だよ散歩」




 散歩って、ここ人通り少ない場所だから女の子一人だと危ないと思うんだよなぁ。それとも本当はこっちになにか用事があったのかな。まぁいいか。




「そっか。じゃ、俺は用事あるから」




「ま、待て」




 歩き出そうとすると右の袖をちょこん掴まれ、引っ張られた。




「どうした?」




 その行為が少し可愛く感じてドキっとしてしまったがあくまでクールに平静を装う。装えてるよな……?がんばれ俺の童貞力。




「なんでニヤけてるんだ?」




 ダメでした。ええい、用があるのはそっちだろうが。咳払いをし、もう一度聞き直した。




「えっと、用事ってなんだ?何処かへ行くのか?」




 若干不安そうな声で言ってくる。本当にどうしたんだ?




「Sayに行くんだよ。下見っていうか、自分が働くのがどんな場所でどんな雰囲気なのか見ておきたかったからさ」




「わ、私もついていこうかなぁ」




「? 別にいいけど。っていうか袖」




「あっ悪い……」




 若干頬を赤くして手を引っ込める。なんだお前。そういう奴じゃないだろ。いや会ってから数時間しか経っていないからほたるがどんなやつかは知らないが、強気なイメージからは想像しづらい雰囲気だった。




「じゃ、行くか」




「おー!いこー!」




 ニコっというよりニカっというような笑いを浮かべた。不安そうな声はもう無くなっていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ここか……?」




「わからないが……。多分そうだろ」




 わからんと言いながらぽかーんとしてるほたる。かくいう俺も苦笑いを浮かべて内装を外から覗いていた。


 洋風の装飾がなされた柔らかそうなソファーと木のテーブル。オレンジ色の照明が、何個もつるされてそれらを照らしていた。カウンターには様々な種類のコーヒー豆が並び、それを入れるためのサイフォンがいくつかあった。


 まだオープンしていないから入ることはできないが、外から見ても『オシャレなカフェ』の一言に尽きる。




「なぁ、ほたる。ここで働くのか」




「そうだなぁ」




 両者でため息を吐きながら下見を終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オシャレカフェで働くことになった童貞(オレ)はどうすればいいですか?〜残念系美少女たちに囲まれる物語〜 RiIght @Right52411

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ