第22話
みかこが目配せして合図をしてくる。しばしわからず目をぱちぱちさせながら見返すしかなかったが、はっと気づいてはなも言葉を続けた。
「そうだね。京子ちゃんは勉強しなくちゃいけないだろうし、まりのちゃんもおしゃれの練習する時間がいるもんね。あんまりあたしたちで時間奪っちゃ悪いよ」
「そうね。まだやっときたいテキストもあるわ」
「うふふ、今日新しい髪形試してみようかなぁ~」
嬉しそうにそう言った。
ようやく二人がまだほめられたがっていたことに気づいたはなは、なんとかみかこの求めに応じることが出来てほっとしていた。このまま気分よく一日を終えることが出来れば明日には昨日のことなど忘れているだろう。
このまま気分よくなってくれている二人を害さないよう、さっと立ち上がると扉の方へと向かった。
「それじゃ今日は早めにお終いにしよう。ふたりともいそがしいんだからね」
「そうですわ。おふたりの将来のためにもわたくしたちが邪魔をしてはいけませんもの」
みかこも立ち上がりそそくさと扉へと向かう。まりのも重い腰を上げ立ち上がると、部屋の主である京子も腰を上げて後を追った。
「まぁ、仕方ないわね。みかことはながそういうんじゃそうしましょうか」
「そうだね。はなちゃんもきっと帰ってから家のことやることあるだろうし」
まりのにそう言われ、たしかにやることはいっぱいあるな、と思うはなだった。多分家に着いたらまずはお風呂を入れるところからだろう。汚れた弟たちを放り込まないと部屋が同じように汚される。
「それじゃ帰りましょうね」
「うん」
みかこが最初に扉をくぐり、ついではながくぐったあと、ようやくまりのが部屋を出た。京子はにこにこと来た時とは別人のような笑顔を浮かべたまま見送ってくれ、マンションの玄関から外に出ることによってようやく二人の軋轢が完全に断ち切れたような気がしたのだった。
まりのは気にした様子もなく楽しそうに帰っていたが、はなもみかこもすっかり疲れ果てて肩を落としながら深く息を吐くのだった。
ただの無駄な時間同好会 古都 吹佬 @ulula-At
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ただの無駄な時間同好会の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます