第21話

 ふと窓の外を見ると日も傾きかけていた。このまま和やかな雰囲気のまま今日を終えたくて、はなは言った。

「そろそろ変えろっか。ちょっと暗くなってきたし」

「あら、本当ですわ」

 みかこもはなの気持ちを察したのか手を打って立ちあがる。

「あまり長居してはご迷惑ですわね。.そろそろおいとましましょうか」

「あらそう?」

 しかし部屋の主である京子は乗り気ではなさそうだった。ちゃぶ台の前に座ってすっかり冷え切ったお茶を飲んでいる。

「まだもうちょっと時間あるんじゃないかしら。うちはまだ大丈夫よ」

 そのまま急須からもう一杯お茶を注ぐ。ずずずっと二杯目を飲んでいた。

「い、いえ、でも……」

「そうだよ。京子ちゃんがいいっていってるんだから、まだいいんじゃないかな」

 なぜかまりのまでがそう言いだし座り込むと同じようお茶を飲みだす。

 このまま話しこんでいて、いつまた先ほどのような言い合いになるかもわからない。今日を挟んで一日たてば忘れるかもしれないが、このままではまだそんな危険性がありそうな気がした。

「でも暗くなる前に帰らないと危ないし……」

 なんとかして帰ろうとはなが言うが、京子もまりのも座ったままだ。

「もう少しくらいなら大丈夫じゃないかしら」

「そうだよ。急いで帰る必要ないよ」

 どういうわけか腰が重い。困ってみかこを見るが、こちらも眉を落として困っていた。

 京子とまりのはお茶を飲みながらもじっとはなとみかこを見つめていた。理由がわからず見返すしかなかったが、なにかを期待しているらしい。はなは理由がわからず困惑したままであったが、みかこが急に声を上げる。

「そうですわ。京子さんもまりのさんも一生懸命頑張ってらっしゃるんですもの。あまり遅くなってその邪魔をしてはいけませんわ」

 はなはよくわからずみかこを見ていた。しかし京子とまりのは嬉しそうに声を上げる。

「え、そうかしら」

「たしかにやることいっぱいあるよねぇ¬~」

 なにやら声が弾んでいる。

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