第20話
「京子ちゃんもまりのちゃんもよく頑張ってると思うな」
「そうですわ。おふたりとも人の出来ないことをやってらっしゃるんじゃありませんか。胸を張ればいいと思いますわ」
このまま険悪な方向に流れていってしまっては困るので、はなもみかこも必死になってほめそやした。先ほどまでのお互いにほめあっていた雰囲気を維持しようと努める。
「そうかしら」
「そうだよ。だって京子ちゃんが勉強できるのみんな知ってるよ。まりのちゃんだけが同じように勉強してるだけじゃないんだから。あたしだって京子ちゃんみたいに成績よくなりたいもん」
「そ、そうかしら」
今度はちょっと鼻の穴が大きくなって気分よさそうだった。みかこも続ける。
「そうですわ。きっとお父さまの会社でも求めているのは京子さんみたいな優秀な人材に違いありません。今から将来を見据えて努力しているなんてすばらしいことですわ」
京子は鼻をひくひくさせたまま気分よさそうだった。隣で見ていたまりのはちょっと不服そうな顔をしている。あわててはながまりのへと向いた。
「まりのちゃんだってそうだよ。だってまりのちゃんがかわいいのは誰が見たってわかるもん。あたしも弟たちがいなかったらまりのちゃんみたいな真似がしてみたいな」
「え、そう?」
こちらも嬉しそうだった。京子に負けないくらいに鼻の穴が開きぴくぴくしている。またもみかこが続けて押した。
「もちろんですわよ。わたくしもまりのさんのことかわいらしいと思いますわ。きっとそれはわたくしたちだけではなくて殿方もそう思われるはずですわ」
「ふふ、そうかな」
ますます鼻の穴を大きくして喜んでいた。
京子とまりのはほめられることによって気持ちよくなったのか、にこにこしたままぼんやりとしている。なんとか二人の間で生まれ始めていた険悪な雰囲気は上塗りできたような気がしてきた。はなとみかこはほっと一息をつき目の端で確認しあう。こちらの二人も自然と微笑みが浮かんでいた。
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