恋は目に見えない。恋は透明なんだね。

１ でも、わかるよ。

　恋は目に見えない。恋は透明なんだね。

　プロローグ

　でも、わかるよ。

　……ここにあるのが、ちゃんとわかるよ。

　本編

　誰もいない教室の中。

　私は、あなたの席まで移動する。

　そこにはあなたがいる。

　いなくなったはずのあなたが、ちゃんといる。

　それが私にはわかる。

　確かにあなたを感じ取ることができる。

　消えてしまったあなたのこと。

　みんなが忘れてしまっても、私はちゃんと覚えている。

　だって、私はあなたのことを愛していたから。

　だって私は、今も、あなたのことを愛しているから。

　……だから、涙が止まらないの。

　どうしても、止まってくれないの。

　本当に悲しいよ。

　どうして、一言言ってくれなかったの？

　……世界から消えちゃう前に。

　私の前からいなくなっちゃう前に、……どうして一言、言ってくれなかったの？

　悲しいって。

　助けてって。

　なんで言ってくれなかったの？

　ねえ？　どうして？

　お願い。返事をして。

　どうしてなにも言ってくれないの？

　……あなたはどうして、そんなに悲しいのに、いつも、ずっと笑っていたの？

　ねえ、教えて。

　お願いだから、あなたのことをもっと教えて。

　私の中に、あなたのことを、ちゃんと、もっと、あなたの溜め込んだ、本当の思いを打ち明けて。

　愛しているの。

　あなたのことを愛しているの。

　今も、わかる。

　ちゃんとわかる。

　消えてしまったあなたは、今も、この場所にいる。

　だってここは、あなたの居場所だから。

　あなたのいるべき、場所だから。

　さよなら。

　さようなら。私の、世界で一番大好きな人。

　……もし可能なら、あなたに、私があなたのことを世界で一番愛しているって、伝えたかったよ。

　少女は教室をあとにする。

　あとには、なにも残らない。

　……きっと、なにも。なにもかも。

　恋は目には見えない。恋は透明なんだね。　終わり