第7話 新しい恋の予感
【檸檬が遅れて来た恋を思い出させてくれた⑦】
山口君は関西の大学を卒業してから大手の保険会社に就職した。
大学時代から付き合っていた彼女もいたらしいが就職後は疎遠になっていたらしい。
そして指導してくれた会社の2年先輩に恋をしたそうだ。
「僕の片思いで終わってたら良かったんだけど、彼女も僕に好意を持ってくれてたんだ」
「じゃあ学生時代の彼女さんは?」
「別れを告げたらあっさりと受け入れてくれた、今では子ども1人いて幸せそうだよ、しかも計算したら二股掛けられてたみたいだった、まぁ当然だろうけどね」
「そしてね、その先輩には旦那さんがいたんだ」
「不倫てやつですか?」
「お互いに惹かれあってたのは確かだったけど、一線は超えてないし超えてはいけないと思って仕事も恋もリセットしたんだ」
庭の小さな池を見ながら彼は呟いた。
悲しげにみえる彼の話を聞いてなんて不器用なんだと思った。
器用に生きることから離れてしまってる私と同じなんだと思った。
「それで、生まれ育ったここに帰って来たってことさ、情けない話だよね、実家は去年二世帯住宅を建てて兄貴夫婦もいるから今はあのアパートに住んでるって話だよ」
「それでその先輩との事は吹っ切れたの?」
「何とかね、幸せでいて欲しいし、俺もきっと吹っ切れると思うよ、そんな気がしてきたんだ……今度入る会社は小さいけど何だか僕には向いてるのかもしれないと思ってる、タウン誌を発行してるとこなんだけどねライター兼営業ってやつさ」
「それで、コンビニ辞めちゃうんですね、ちょっと寂しいかも、帰り道楽しみにしてたから」
「それは僕もだよ、毎日あの自転車が店先に止まるのを待ってたりしたからね、それであれからチェーンは大丈夫?」
ドキリとしたことをふんわりと言われて胸の中がチクリとした。
「あっ今のところ大丈夫みたい、また外れたらお願い!」
「喜んで、どこにでも行かせてもらうよ」
「私の買ったサイクルショップも来てくれるらしいけど、順番待ちが面倒だから助かる」と顔を見合わせて笑った。
食事を堪能して店を出る時に、財布を出そうとする山口君を全力で止めた「これはあの時のお礼なんだからぜったいダメです!」
山口君は苦笑いしながら
「わかったありがとう!ご馳走様、でも今日のお礼に今度は僕のオススメの店に付き合ってくれる?それが条件でどう?」
「わかった、是非連れて行って下さい」
帰り際に山口君は言った。
「あのレモンの蜂蜜漬け何だか懐かしいよね」
「こんど久しぶりに作るからまた食べてみる?」
「喜んで!」
夕焼けが近づく空の青といちごの色の夕焼けのグラデーションはシャーベットみたいに美味しそうにそして綺麗に見えた。
こんな景色を一緒に見てくれる人といつまでも見ていたいような美しさだった。
✼✼✼TheEND✼✼✼
檸檬が遅れて来た恋を思い出させてくれた あいる @chiaki_1116
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます