キノコハンバーグ。
人間、嫌いなものがあってもいい筈だ。
食事をするのは個人の自由であって、何を好み、何を嫌うかなんて、
好きにしてもいいじゃないか。
幼い頃よく言われていた。
「好き嫌いしないで食べなさい。」
私はピーマンとキノコ類、梅類、それから生物が嫌いだ。
苦い料理も嫌いなのだが、珈琲だけはブラックでも飲めてしまう。
あまり自分からは飲まないが。
嫌いなものを食べないと、大人たちはこぞって遠い国の子供たちはご飯が食べれないんだから有難く思えだの口を酸っぱくして言ってくる。
それならば、私が残したものでも届けてあげればよいだろうと、
何度思ったことか。
そんな私だが、先日、食に関して非常に苦い思いをした。
味も気分も苦かった。
その日は、従兄弟が中学に入学するから皆で祝おうと、
小さなレストランに親戚で集まった。
予約制らしく、選択肢はエビフライ、ハンバーグ、シチュー
だった気がする。
私はハンバーグと告げて、
数日後に、ある程度のお洒落をして、例のレストランへ集った。
豪華な店とは言えないが、隠れ家のような安心感のあるレストランだった。
色とりどりのジュースがグラスに注がれ、
私が頼んだハンバーグが出てきた。
其処には、ハンバーグにホワイトソース、
そして無数のキノコが乗っていたのだ。
冗談じゃない。
だから、写真の無いメニューは不安だったんだ。
最初から文字でしか料理を教えて貰えなかったから、
こんな事になるんだ。
残さず食べるのは食事の最低限のマナーである。
此のぐらいは知っている。
喰わなければいけないのか。
これを、何の拷問なんだ、
素直に祝ってあげたい所だが、従兄弟よ。
私はコレを素早く片付けなければいけないようだ。
ナイフとフォークで器用にハンバーグを切り分け、キノコを沢山添えて、
口に含む、
出来るだけ、早くキノコを平らげなければ、
肉汁の美味しいハンバーグとホワイトソースの組合せは最高に美味しかった。
キノコが無ければ…
キノコの独特のあの苦みに、筋の細かく、ぐにゃぐにゃと気持ち悪い食感、
吐きそうだ。
噛み締めただけで涙目になる。
きっと、私は細胞レベルでキノコが嫌いなのだろう。
噛んでは、水で流すというのを繰り返していると、
隣に座っていた親戚のお姉さんが、これも美味しいよと、
白米の上に緑色の野菜の茎のようなものを問答無用で乗せてきた。
それは白米の上に乗せても美味しいですよ、みたいなノリで好みで乗せて食べられるように、小さな器に入っていたものだった。
味は完全にシソだった。
たまったもんじゃない。
嫌いなものをこんなにも食べさせられて、最悪だ。
このままではトラウマでハンバーグを嫌いになりそうだ。
それから、機械的に咀嚼しては、水で流していると、
ガリっとした食感がして、瞬く間にシロップの甘さが広がった。
確認すると、どうやら缶詰に入っているような、
パイナップルのシロップ漬けがハンバーグに乗っていたのだ。
キノコに隠れていて、分からなかったが、なんというアンラッキー、
肉の香ばしい味とシロップの異常な甘さ、そしてキノコの生々しい苦みが、
口の中で混ざり合い、個性として戦っている。
ここまでくると、もう本当に、吐かせてほしかった。
気持ち悪い。不快、
その時の気持ちを文字で表現したかったが、
あまりにも好まない味で、本当に辛かった。
全てを平らげた私は、口直しの如く、コンビニでアイスを購入した。
予約制の店には気を付けようと、思った。
ハンバーグにパイナップルは私は好まない。
絶対にだ。
食について。 冬野 小雪。 @yuyu0505
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。食について。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
大沢朔夜の雑記最新/大沢 朔夜
★20 エッセイ・ノンフィクション 連載中 765話
私の思うパーソナリティー障害の現実とは最新/星咲 紗和(ほしざき さわ)
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 15話
孤独感と向き合う為に、するべき50のポイント最新/星咲 紗和(ほしざき さわ)
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 15話
書きたいときに書くだけのメモ的エッセイ最新/ようひ
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 48話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます