「大きくなって見えるもの」

「あでっ」


ド派手に砂の上に尻餅をついたやっちんは、

痛そうにお尻をさする。


「やべ、ズボンに砂利がついた。」


ユウリは周囲を見渡すと驚いたように声をあげた。


「ここは、砂場…?」


そう、気がつけば、

僕らはどこにでもあるような

公園の砂場の上に立っていた。


いや、砂場で元の姿に

戻ったという方が正しいだろう。


霧はすでに霧散し、

砂場の真ん中には僕らがスタンプした

やや大きめの腹部に人の影を残した

アリの着ぐるみが横に倒れている。


しかし、それを確認した瞬間…


パシュン


瞬時に黒焦げになった着ぐるみ。

もはや腹部にあった人の姿も見えない。


そこに立つのは煙の上る銃を持った、

一人の制服を着た青年。


彼の顔は健康的に日に焼けており…


「よお、子供時代の俺。危ないとこだったな。

 このまま小さくなり続けちまえば、

 周りの人間見たく踏み潰されるとこだったぞ。」


…そう、一目見てすぐにわかった。


それは、随分と背の伸びた、

中学生ぐらいのやっちんの姿。


今までのことから推察するに、

それは三年後から来たやっちんの姿のように思われた。


「…ほへ?」

 

ただ、呼びかけられたやっちんは

話している相手が誰か気づいていないらしく、

ほけーっとした顔でズボンについた砂を払っている。


見れば、周囲には頭部や体の一部を潰された人間が

数体いて、そこからも未来のやっちんが言っていることが、

おおむね正しいように思われた。


そして、未来のやっちんは、

話を別の人間に振った方が良いと思ったのか、

僕に近づき、こう尋ねてきた。


「なあ、子供時代のマサヒロ。

 一つ聞きたいんだが、病院でスタンプを押したのは、

 ナースキャップを頭に被ったネズミの着ぐるみだったか?」


その言葉を吟味し、僕は首を横に振る。


「いや、僕らが病院であったのは二体のカンガルーだったよ。

 そのナンバーずも最後は未来のユウリと僕が退治した。」


それを聞くと制服姿のやっちんはニカッと笑い、

「よし、未来はちゃんと変わっているようだな」と、

嬉しそうに声をあげる。


「ナンバーずを倒したいと言い出したのは俺だったんだが、

 未来を変えられたのは三年後のお前による功績が大きい。

 もう直ぐクリアによる願い事の話を聞くとは思うが、

 俺はお前たちを信じているよ…じゃあな。頑張れよ!」


「あの!未来って…」


そうして、ユウリが何か言い出す前に、

周囲の景色がぼやけ始め…

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