「最適解」
叩きつけられた先、
そこは壁際に落ちたソファの上であり、
幸い、ケガにはいたっていなかった。
そして、跳ねたはずみで僕の腕が上がり、
持っていたスマホの画面が一瞬だけ目に入る。
その瞬間、僕は左右にいる二人に
大声で指示を出した。
「ユウリは後ろの壁際!
やっちんは目の前の車椅子を持った着ぐるみに!」
ばっと動き出す二人。
それに対し、カンガルーの着ぐるみは…
そう、僕の右と左のはしにいる、
二体のカンガルーの着ぐるみは、
たじろぐように後ろへと下がる。
『カンガ・ルール、二体で一対の単眼カンガルー、
二体で見ているものにルールをつけて動かせる、
片方ずつで見ているものは動かすことができない、
ルールは一度にひとつまで!』
…そう、カンガルーは二体いた。
僕らが最初に来た時に聞いた
遠のく音と近づく音。
それは、二体のカンガルーが、
お互いに獲物がよく見える
ベストポジションについた音だった。
だが、カンガルーは自分のルール上、
一つだけしかルールを施行できないため、
僕を飛ばすための新たなルールを制定した際、
重力に縛られていたやっちんもユウリも動ける状態になった。
しかも、最後のルールを口にしたとき、
僕はこの二体から一番離れた位置、
すなわち二体を同時に見ることができる位置へと飛ばされたため、
正確な位置がわかり、このような芸当をすることができたのだ。
そして現在、二体は目の前にほぼ同時に向かってくる
ユウリとやっちんしか目に入らないわけで…
『あああああああアアアアアア!』
『あああああああアアアアアア!』
ほぼ同時にさけぶ声。
スタンプを押された二体から
聞こえる二重奏はすさまじく、
僕らはとっさに耳をふさぐ。
その時、車椅子の少年がわずかに動いた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます