「最適解」

叩きつけられた先、

そこは壁際に落ちたソファの上であり、

幸い、ケガにはいたっていなかった。


そして、跳ねたはずみで僕の腕が上がり、

持っていたスマホの画面が一瞬だけ目に入る。


その瞬間、僕は左右にいる二人に

大声で指示を出した。


「ユウリは後ろの壁際!

 やっちんは目の前の車椅子を持った着ぐるみに!」


ばっと動き出す二人。


それに対し、カンガルーの着ぐるみは…

そう、僕の右と左のはしにいる、

は、

たじろぐように後ろへと下がる。


『カンガ・ルール、二体で一対の単眼カンガルー、

 二体で見ているものにルールをつけて動かせる、

 片方ずつで見ているものは動かすことができない、

 ルールは一度にひとつまで!』


…そう、カンガルーは二体いた。


僕らが最初に来た時に聞いた

遠のく音と近づく音。


それは、二体のカンガルーが、

お互いに獲物がよく見える

ベストポジションについた音だった。


だが、カンガルーは自分のルール上、

一つだけしかルールを施行できないため、

僕を飛ばすための新たなルールを制定した際、

重力に縛られていたやっちんもユウリも動ける状態になった。


しかも、最後のルールを口にしたとき、

僕はこの二体から一番離れた位置、

すなわち二体をへと飛ばされたため、

正確な位置がわかり、このような芸当をすることができたのだ。


そして現在、二体は目の前にほぼ同時に向かってくる

ユウリとやっちんしか目に入らないわけで…


『あああああああアアアアアア!』

『あああああああアアアアアア!』


ほぼ同時にさけぶ声。


スタンプを押された二体から

聞こえる二重奏はすさまじく、

僕らはとっさに耳をふさぐ。


その時、車椅子の少年がわずかに動いた気がした。

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