「三度目の正直」

次に転移した場所は高層マンションの下、

大量に車が停まる駐車場のど真ん中だった。


僕らのポジションはやっぱりカメレオンの後ろ、

途端にカメレオンとやっちんと自転車の塊は

ぎょっとしたように飛び上がる。


『もウ、こんなニ近くに?

 でも、一歩遅かったゲコォ〜!』


そしてカメレオンは素早く舌を出すと、

自転車ごと車のボンネットに飛び移り、

そのまま車と同化してしまった。


『ケケケッ、一丁上がリぃ〜!』


素早く回るタイヤ。


左右のドアからニョキニョキ足が生え、

周りの車を蹴散らしながら緑色の車は

あっという間にカーブを曲がり、

僕らの視界から消えていく。


「…どうしよう、とても追いつけない。

 このままじゃ私たち全滅しちゃう。」


ユウリがショックのあまり、

膝をついて呆然とする。


「…多分、大丈夫。」


そんな僕の言葉にユウリは

今にも泣き出しそうな顔をした。


「なんで?車のスピードには追いつけないじゃない。

 このまま次の転移に入られたら、その次は…」


…いや、違う。次が最後のチャンスのはずだ。


僕はユウリの目を見てこう言った。


「次に飛んだら、なるべく車体をつかむんだ。

 振り落とされないようにして、動かないで。

 すぐにスタンプできるように構えておいて。」


「え?」


そうしているうちに再びアナウンスが鳴る。


『三度目の転移を行います、これは最後の転移です、

 繰り返します、これは最後の転移です』


「行くぞ!」


「え…。」


そして次の場所に転移した瞬間、

僕はとっさに前に出る。


『ゲコ!?』


そうして狙い通り、

僕は目の前にいるやっちんを

とっさにつかむことに成功した。

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