「そのアヒル、移動中につき」

飛ばされた先でいきなりアヒルの攻撃を食らった僕は

あまりの不甲斐なさに着替え終わるとすぐに二人に頭を下げた。


しかし、二人は別に気にすることはないと

言って僕をなぐさめる。


「…いや、というかね。

 原因は移動時の位置関係だったと思うの。」


ユウリの話によると、僕らがラリーで移動した際、

僕だけがプールの中に着地してしまったらしく、

他の二人は売店のすりガラス越しに僕の姿を認めて、

慌てて対処に行ったということだった。


その原因として考えられるのは、

移動時に僕だけが二人よりも

距離のある位置にいたせいだったらしいのだが…


「ごめんよお。届いた宅配荷物を頼んじまって、

 下の階でハンコ押すだけだから大丈夫だと思ったんだよお。」


そう言ってベソをかく、やっちん。


…あー、そういや、

そうだった気がする。


三人で対策会議をしているとスマホが反応して、

『残り10分でスタンプラリー参加です』と通知の直後に

宅配が来てみんなが慌てているうちに僕が取りに行って、

ハンコを押して受け取って二階に戻ろうとした

時点で移動をしてしまった気はする。


でも、その先がまさかプールの中で、

あとちょっとでアヒルの羽に押しつぶされる

ところだったかと思うと…


「今日、厄日かもね。

 これが終わったら神社に

 お祓いに行ってきたら?」


すでに手遅れな気もするが、

僕はユウリの言葉に素直にうなずく。


確かに、何かやばい気はする。


そして、もらった耳栓をしようと手を伸ばした時、

僕はぎょっとした。


薄く開いた倉庫の窓。

半地下の倉庫の窓。


その窓から何かが覗いている。


…それは、プールにいたはずのアヒルの顔だった。

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