助けてあげるby坂本 ゆうこさん
助けてあげるそう言ってわたしの首を絞める
あなたは幸せそうで、少し苦しそう
右手を貸して。手伝ってあげる
落ち着かない 見合わないところにいる そんな感じ
もっと下、わたしはもっと下
首を絞めよ 泥を投げよ
わたしをいじめているのはわたしだと気がついた
わたしをいじめたいのはわたしだと気がついた
圧倒的な安心感 そして
解放されることはない苦しみ
手綱を握っているのはわたし
助けてあげるそう言ってわたしの首を絞める
わたしは苦しいけれど幸せなのよ
あなたは幸せそうで、少し苦しそう
右手を貸して。手伝ってあげる
いつか殺されるかしら? いいえ
そんな熱量はない
じわじわとわたしを苦しませている
地獄に導くあなたがわたしを救ってくれる
不安にさせないで そのまま力を込めて…
(引用ここまで:https://kakuyomu.jp/works/1177354054891504822/episodes/1177354054891504904)
「首を絞める」という行為。そこに託された自分の欲望が、他者によって向けられていること、同時に他ならぬ自分によって向けられていること。
一見して両端に位置する、ふたつの欲望のせめぎ合いを、あるいはせめぎ合い自体すら「欲望」として綴った作品と、個人的には解釈させていただきました。
「圧倒的な安心感 そして/解放されることはない苦しみ」
という二行が、そのトリックの種明かしとして機能しているように思います。
小さなディティールや逡巡を経由しながら、全体のたくらみが徐々に明らかになる構成は緻密で、妄想的な方向へいってしまいそうなところにきちんと抑制がきいています。
自傷的な未達の愉楽があって、情念のほうに流れきらないところでとどめてある印象で、それがこの作品の巧緻さなのかなと思いました。
というわけでそんな全体の中、
「首を絞めよ 泥を投げよ」
の部分は奇妙に浮いているように見えます。
鏡合わせの「私」の監獄に置かれた作品世界の中で、この一節だけはもっと超越的な、向こう岸からやってくる感覚を象徴しているように感じました。
もちろん、だから完成度が低いという話をしたいのではなくて、むしろこのような「破れ目」こそがその作品のキモとなるのではないかと思います。
思っていたことと異なること、異なる手触りがするりと出てきてしまう瞬間が折り目正しく、なおかつ予想外に露わになっている点が、とてもよいと感じました。
とはいえそういったところは、自分が何かを書くときも留意しなくちゃいけない点ですね。やっぱり他の方の書かれたものを読むと、いろいろ参考になる点が見つかって面白いです。
ありがとうございました!
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