音楽を聴けないbyAOAOさん
毎日聴いていた歌を聴けない
あなたがそれを歌ったから
あなたの声で憶えていたい
好きな歌も聴けなくなって
聴こうと試みても
イントロで止めてしまう
あなたの歌ではないのに
あなたの声でないと聴けない
それほどに
あなたの歌声は美しかった
他の歌に感動できない
それくらい美しかった
また歌ってくれると
約束してくれるのなら
その歌を聴けるかもしれない
あなたの歌声を聴かせてください
(引用ここまで:https://kakuyomu.jp/works/1177354054891554161/episodes/1177354054891554621)
今回はこちらの作品を取り上げさせていただきました。
「毎日聴いていた歌を聴けない/あなたがそれを歌ったから/あなたの声で憶えていたい」と書き出されるまま、語り手と「あなた」、「好きな歌」をめぐる情念が語られていく構成です。
たとえばですが、どういう状況で「好きな歌」を聴いているのか(部屋の中?外?イヤホン?スピーカー?)、「あなたの声」と出会ったのはいつどこでなのかなど、普通だったら耐えきれずに書いてしまいそうな情報を、あえて省略している印象です。
で、そういった情報を中途半端に出してしまうと、かえって読み手の集中がそれてしまうということがあるかなーと思いますので、こういう方法もあるよな……と勝手に納得しながら読んでいきました。
これは余計なお世話であるとは思いますが、もう一歩踏み込んで「美しさ」への批評的な目線が入ると、もっといいのかな~と思いました。
たとえば、本来美しくない名詞とくっつけてみるとか。
書くときにどれを選んでどれを捨てるか、どれを出してどれを隠すかというのは、文章の形式にかかわらず考えるべき話なんだろうなと思います。
今回読ませていただいた作品を通し、そのことにあらためて思いとどまらせていただいた格好です。
ありがとうございました。
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