レコードショップ

半地下になっているレコードショップ。そんなに大きくはない。個人経営って感じだ。


ジャズのレコードばかり置いてあり自分はよくわからない。


雰囲気はとてもいい。照明は半地下もあるのか少し暗い。が、店独自に明るさは調節されていて、レコードがしっかりと見える。バーのようでもある。オープンして十年くらいは経ってそうだ。少し年季が感じられて、落ち着いている。


あたりを見回すと確かにジャズが流れている。マイルスの"So What"みたいな。

壁にレコードがグリッドに沿ってきれいに縦横とディスプレイされてある。一見したところ自分にはわからない。多少名称がわかる商品もありそうだが、食指が動かない。


ただ所在なげにしていると舐められそうなので、物色してみようか。あたりを見回すと、いろんなショップの紙袋をOPP袋にパッケージして売っている。ルイ・ヴィトンのショッピング袋を大事に残しているような。おもしろいことをするものだ。レーベルのノベルティなのか僕にはわからない。1センチ×2.5センチほどの小さい値札で280とプリントされてある。280円。小さなショップ袋は80円。8点くらい壁に展示されている。The Bucketheadsの"The Bomb"らしき袋、280円。ジャケットをそのまま袋にしたもので、シルバー地でゴシックのフォントが踊っている。


お、いいなと思えるレコードはやはり高い場所にあり、天井近くに。8,680円だった。掲げている感じ。白地にイラストで、男女がダンスしている。ミュージカルのサントラみたいだ。1960年代の映画ポスターのよう。


所在なげでここでも一人かと独り言ちる。

僕の勤め先の理事長に似ている店員は一段高いレジカウンターで下を向いて耳を傾けている。もしくは作業をしているのか、集中しているようだ。店員は一人なのでおそらく彼が店長兼オーナー=趣味の店なのだろう。


「これには"やさしいキスをして"が入っているんですよ」振り返ると、店長が客と会話をしていた。


壁にはシールも商品としてディスプレイされていた。壁はショップ内に何面かある。その中の僕はマーチャンダイズコーナー、つまり雑貨コーナーにいる。ちょっと情けない。

音符とかMとかのレタリング。これもゴシックだ。かわいい。白い壁だった。クロスではなく塗装。手のひらで少し触って感触を確かめた。


客の相手、店長も大変だな。

ドリカムの曲をジャズにしたレコードなのだろう。しょうもない商品にウンチクを披露して、気の毒そう。けど、本当に楽しく話をしているようにも見える。有名なミュージシャンが参加しているのだろうか、聞いたことのあるアーティスト名が聞きとれた。


やっぱ常連客として店長と話すのは憧れるな。うらやましい。

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文学界 村上春樹特集を立ち読みした後の夢 @yaq96757 @yaq96757

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