長らくありがとうございました。
大臣の持つ紙を見て、カエルムは(繰り返すが本当に珍しく)驚き、王女は嬉々として手を叩いた。
「すごいすごいお兄様! やっぱりお兄様は格が違うわ!」
「ここまでとは……」
複雑な表情で見入るのはロスの方だった。ただ、もし一興とやらが変なものであれば、とりあえず自分は免れたか。同じ危惧はカエルムも持っていたようで、ポツリと呟く。
「何をやらせようとしているのか知らないが……妙なことであれば王権で阻止……」
その小さな一言を、王女は聞き逃さなかった。楽しそうにころころと笑う。
「あら、もしお兄様が阻止なさるなら、女王権力で阻止を撤回するわ」(*シレアは共同統治制です)
「二人とも、そんな私情で王族の権力濫用しないでくださいよ」
呆れる従者を尻目に、兄妹は「冗談だから」と笑いながら王城へ入っていく。長い一日もそろそろ終わりだ。夜闇が濃くなるにつれ、星の光は一層強くなっていく。扉を閉める前に振り返り、空に南十字星をみとめたカエルムは、思い出したように王女に言った。
「ところで姫、ちょっと頼みたいことがある」
「ん? なぁに?」
「近々、テハイザの方へ行ってもらえないか。ちょっとした約束もあるので」
「テハイザへ!?」
王女は海を見たことがない。それは、実に嬉しい提案だった。
「ぜひ行きたいわ。時期は?」
「未定だが、遠からずに実現できるといい、と思っているよ」
兄の微笑む顔を映して、王女の紅葉色の瞳がきらきらと光った。
「それは早々に準備したいわね。恥じない訪問にするためにも……即位も間近だし、シレアの方もテハイザに劣らぬ国になるようにしなくちゃね」
盛秋以来の怒涛の日々は、多くの助けを得たおかげで、無事に過ぎようとしている。しかしまだ、シレアもテハイザも新王のもとでの歴史は浅い。彼らの時代はこれからである。
***
カクヨムコンが終わって初の週末。日本との時差で嫌なのはあれですね、起きたら日本から仕事のメールが入っていることでしょうか。一つ仕上げて、これを書いています。
今年は短編二つに長編一つという、カクヨム登録二年目にしてチャレンジでした。しかも長編、続編参加というなんとも空気を読まない思い切ったことをしたと思います。
出張疲れなのかコンテスト疲れか。まあ、後者は楽しかったです。たくさんの作品、作者様と交流することができまして、好みの作品や、自分の経験、関心にストライクヒットする作品との邂逅も多く有りました。
夢中になると応援コメントが錯綜してしまい、不快に思われましたらごめんなさい。
ツイッターでの宣伝も、頑張ってみました。宣伝するたびに「うるさいわ自分!」と思いながらのツイートでした。実は。自薦ってね。うん。でもこの話の最後にやっぱり、誘いますけれど(下記参照)。
競争みたいなのが苦手なので、ランキングや評価には一喜一憂、様々に励ましのお言葉やアドヴァイスを頂き、その節はご迷惑&お世話になりました。すみません汗 どうもありがとうございました。
お星様も、応援コメントも、PVも(これ、まだ伸び続けてます!!)、過去にないほどで。どれだけ嬉しかったか。ファンタジーと言いつつ、いわゆるファンタジーにはハマらないし、文章もカッタイもので、けしてスラスラ読めるものではないと自覚しています。
それなのに多くの方に読んでいただき、一気読みも多数。本当にありがとうございました。
新しい機能の「ワークスペース」のおかげで進歩も解りやすく、初めは妹編と比べて読まれる数の多さに「兄すごい」と言っていたのが、途中からその勢いに圧倒され(蜜柑桜作品比です)、「殿下すごい」になっていました。どうでもいいですが、主人公を名前で呼ぶのがいまだに苦手なのですよ。ねえ殿下。
体験記では、PVはテハイザ入国回数、フォローは滞在者数としておりました。
お祭りは終わり、この体験記も終わりです。驚いたことに体験記で六万字近く。何やってるのだろう私。小説仕立てにしちゃえ、と思いついて書き始め、毎回、前半のネタに苦労したので、「あ、これ書きたい」と思ってもエッセイのようには軽く書けずでした。(他薦方法では失礼もありましたらご一報ください。削除します。)
ただ、楽しかったのは事実です。
体験記もお付き合いいただき、ありがとうございました。
こちらはこれでおしまい、完結とし、通常のエッセイ「旅情日常」に戻ります。これからはコンテストに関してもエッセイで書くと思います。https://kakuyomu.jp/works/1177354054893854875
でも番外編を書き始めているので、そちらができた時、コンテストの結果発表の時にはまた「体験記」も更新すると思います。
そして一つ、やっぱり姉妹編を紹介させて下さい(番外編は姉妹編のネタバレになります。しかも核になるところのネタバレ)。
読者様の中にも、「天空」だけでは未消化の方もいらした様子。王女が何をしていたのか、シレアで何が起こっていたのか、シレア旅情に浸っていただけたら幸いです。
「時の迷い路」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889868322
それでは、この度のコンテストでお知り合いになった作者読者の皆様、今後ともよろしくお願い申し上げます。私も皆様の作品をこれからも読んで行きたいと思います。
シレア国、冬。奇妙な本『天空の標』がシレア王城に舞い込んでから、ようやく平穏が訪れたようです。またの出会いはシレアか、もしくは王女のテハイザ訪問で! (第三作目の長編は、ただいまネタ探し中。その前に書きかけの「楽園の果実」をどうにかせねばならぬのです)
最後にもう一度。
ありがとうございました!!
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