お祭り終わり こぼれ裏話

 投票によって決まる……祝典での一興など、あの厳格な大臣がそのようなことを一人で思いつくとは考えにくい。料理長が誰かが口を挟んだに違いない。


「参ったな……これは、触れが出ているということは城中一丸となっているに違いない。まずは票の結果を待つか……」


 カエルムが珍しく顔を曇らす。反面、名前の上がっていない王女は実に楽しそうである。


「私は何をやってくださるのでも楽しみだわ。滅多なことではこんな機会ないもの」

「テハイザ訪問の報告がやっとのことで終わったと思ったら今度はこれですか」


 掌を額に当てたロスはいかにもうんざりといったていで、はぁっと息を吐いた。

 そもそも先日のテハイザ訪問は、本来の予定通り進めば、もっとすんなり済むはずだったのだ。報告書の方も短く終わるはずだった。それが災難に見舞われたおかげで、報告書の量も倍以上になってしまったのだ。カエルムもロスも、その後始末で随分と時間を使ってしまった。シレアの国内も大変な状況だったため、会議にかけるためには両方の書類を付き合わせて調整しなければならなかったし、実際に会議も長引いた。


「それでも、やっと終わったな……数ヶ月か。収穫は思った以上に多かったのだから、そう大仰に息を吐くなよ」

「そうよロス。貴方がものすごく苦労したのは知ってるから、元気出しなさいな」


 二人に代わる代わる言われると、ロスは頭をさっと上げて晴れ晴れという。


「テハイザ訪問は、結果として良かったです。いい出会いもあったし。だから愚痴じゃないんですよ。この後のことがちょっとわからないってだけで」

「確かに。まだこの後に何があるのか、未知数ね。即位したらどうなるのかも」

「あぁ、そうですね……それを言われたら俺も」


 それぞれが思うところを述べ合い、思案に耽る。そんな三人を見て、カエルムは微笑んだ。


「これまでの大きな仕事は済んで今は落ち着いている時期だ。とりあえず、あの妙な本の動きも止まったのだし、今日はもう三人は休むのがいいかもな」


 空を見上げれば星屑がいつもよりも輝きを増している。明日は満月だ。冬の空に散りばめられた瞬きは、今まで見ないほど美しかった。


 ***


 カクヨムコン5、終わりましたね! 

 人気投票もありがとうございます。まだ受け付けております〜!! 多くのご参加、感謝と引き続きお待ちしております(集計時間がまだ取れないので)。

 いただいたコメントには、開票時に一度にお返事します。


 それにしてもすごいお祭りでした。初参加でびっくりいたしました。

 今まで交流のない方々ともやりとりできて、素敵な作品にも出会えて、良かったです。心残りは、みなさまに比べてあまり読むに回れなかったことでしょうか。頑張ったのですが、最後は出張でネットがつながらないこともあり、短編も読めずで終わってしまったものも、不甲斐ない〜。


 今日はこぼれ話を少し。戯言でも良いよという方、お付き合いください。


 *その一 もともと超、短かったお話

 少し前に、『天空の標』は一度書けなくなったものを改稿と書きました。実のところ、今回書き上げたものの「誘惑」までの話でたったの二万字強。ロスが外に出た時のシーンや古文書のシーンも無し。全体で四万字くらいで終わるかな、という予想でしたとも。

 それが書いてみたら、「誘惑」までで7万字はいってるのではないでしょうか。すごいボリューム・アップです。因みに作者にとってチャレンジで、尚且つ書いてて面白かったのは、このシーンだったりします(笑)普段絶対書かないタイプのシーンだったので。読者様のコメントも、この回は随分と多くいただきました! (カエルムとロスの会話の部分はどれもこれも楽しかった)


 あ、因みに改稿前では「誘惑」の前に毒殺未遂もありました。二人とも飄々と交わしていきましたけれど。


 *その二 何が大変だったって

 姉妹編と時間軸の合わせ方でしたよ!! 姉妹編お読みの方が気づいてくださったら嬉しいのですが。伝書鳩で書簡が来るタイミング(姉妹編で飛ばした時間より少し後)、終盤の諸々の事態が起こる時刻、それに登場人物の行動も合わせなければならなかったので、苦労しました。

 あと、課題は謎を本編で全て解明しなかったこと。姉妹編がありましたから、このことは不可避だった。

 これはかなり悩みました。読了した方は皆、「え、これで終わりなの?」と物足りなく思うのでは、満足いかないのでは、と。


 そう思った方もいらっしゃると思うのですが、結果的に「『天空』だけでも楽しめる」というご感想を多くいただき、あぁ、ありがとうございます……及第点だぁ〜……となりました。


 なんか他にもある気がしますけれど、うん、ありすぎて書けなさそう。

 ちらほら、直したいところが見つかっています。

 私、応募規定にある「選考期間内の修正変更内容は対象外」というのが、修正・変更した章まるごとが対象外になってしまうのだと思っていたのですけれど……これは修正した内容が考慮されないということで、修正前の稿は選考対象に残る、ということみたいですかね?


 校正漏れもあったりで。直したい。


 **


 最終日は、嬉しいことがありすぎて罰が当たるんじゃないかと思いました。

 エッセイにちろりと書きましたが、起きたらお星様が100越え! 私のすべての小説の中で、初めての100越えです。もうどの作品も80、90、100なんてざら、という書き手さんがたくさんいらっしゃる中で「何いってるのよ」程度かもしれないのですけれど、私にしてみたら80? 90? うそ三桁? 感動度合いが筆舌し難い。

 さらに本日、泡沫希生様が読了、長文レビューくださいまして。オレンジ11様が今日の短時間で全部一気読み、お星様いただきまして……なんだか私、今年の幸運使い果たしたかな? 現在お星様106。過去最多。


 期間内最後のレビュー紹介。今までいただいたレビューもどれもみなさま流石であるのと同様、このレビュー文もまた、とても丁寧で。

「二つの国の宝に起こる異変と迫る刃。聡明な王子は悠然と立ち向かう。」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891239087/reviews/1177354054894077149


 蜜柑桜の小説内で、殿下、支持率、すごい! 下手な政治家には負けないかしら? どうだろう。

 ありがとうございます。本当に。


 番外編は多分二つ書くと思います。一つは書き始めていますが、もう一つはまだネタを探し中です。

 出張中に書けるかなぁと思っていた……よりも時間が取れずです。残念。二月だからバレンタインなので、短編シリーズのショコラティエ匠響子には何かやってもらわなければならないですし。


 何はともあれ、お祭りは終わりました。

 短編二本、長編一本、去年が短編だけだったのと比べ、随分と……去年の短編は両方、読者選考通過できたのは嬉しかったです。「シンデレラ」も「星流夜」もお気に入りだったので。


 怒涛の、数ヶ月でした。みなさまもお疲れ様でした。ありがとうございました。何度でもお礼申し上げます。


 文章錯綜してるかもです。ご容赦を。






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