タイトル設定と、読書の「区切り」目安?
諸官が一堂に会するのは一日の中でも午前の会議しかない。官吏に問うとしても一人一人聞いていては時間が勿体無い。急事が無ければ、まずは大臣へ報告し、会議用の資料の確認を経た上で、翌朝重鎮が揃った時に本書の類を知る者がいないか訊くのが効率が良い。
ロスは、先に案を出し合った内容を参照しながら、議会用の資料を作り始めた。立ったままで羽根ペンを動かしているので、長身が不自然な格好で卓の上に曲がる。卓の正面の椅子に座っていたカエルムは、立ち上がってロスの肩を叩く。資料と真剣に向かい合っていたロスは一旦、動きを止めて会釈すると、カエルムの椅子に腰を下ろした。ペンを走らせる摩擦音が部屋に静かに響く。
「ん?」
反対側から資料を覗き込み、カエルムがその冒頭を指差した。
「議題名、普段と体裁が違わないか」
「あれ、そうでしたっけ」
壁際の扉つきの棚に近付くと、カエルムは扉の留め具を外した。過去の会議資料を整理してある本棚である。中から分厚い書類束を取り出し、一連の書類をざっと確認する。
「ああ、ほら。やはり変事が起きた場合の資料名は統一されている」
卓に戻って綴じられた資料の中から数枚をめくって見せ、肘掛け椅子に腰掛けている姫を振り返って手招きをした。
「もう学んだとは思うけれど、一応姫ももう一度確認しておきなさい。今後資料を作るときに参考になるだろうから」
近寄ってきた姫も直に手に取り、書類束の先頭から確認していく。
「種類ごとに名前を一緒にしているのね」
「ああ、出来たものには通し番号をつけておく。何を見ていたか後からすぐにわかるように」
数枚見た後に、名の異なる資料が現れた。確かに番号が「一」に戻っている。
「名前を変えてあると、今みたいに多くのものを確認するときにどこまで見終わったか、目印にもなるかも」
普段、椅子に座って教師の講釈を受けている時よりもこうして手にとって見る方がずっと分かり易い。何事も経験である。王女の場合、経験だからと言って臣下を心配させる「学び方」をしているのも確かだが。
***
こんばんは。
物語の各回のタイトル、迷いませんか? どうしたらしっくり来るか。それぞれの回で別のタイトルをつけている作者様、すごいと思うんです。
漫画でも小説でもドラマでも、各回のタイトルがうまいのは惹きつけられるな〜と。各回に出てくる台詞を持ってきたり、舞台になっている場所だったり。漫画では「よつばと!」うまいと思います。どれも「よつばと〇〇」で全体のタイトルと絡めてるんですよね。
私の場合、この長編姉妹作は……
「タイトル二字単語縛り」
前に普段エッセイの方で話題にしました時、他にも縛りがあるよ〜という方のコメント頂きまして、興味深かったです。みなさん、苦労・工夫されてますようで。
今までのところ本作は、
「入城」「異事」「偵知」「始動」「思惑」「交渉」「伝承」「友誼」「波瀾」
すみません! 「波瀾」は前回第一回を載せたときには「奇蹟」でした。これ、変えました。違うないしは今後の展開にとっておこうって。「波瀾」は物語の「波瀾」と海の「波瀾」をかけています。
タイトル決定、悩むんですよ。例えば「友誼」。「国交」ではそのままな上に伝えたいところまで伝わらない。「友好」も違う。両方入っている言葉が何かないものか……。
というわけでいつも、類語辞典を引いてピッタリきそうなものを探しています。(そして三回のうちどこかで合致すれば!)と書き進めています。
卒論を書いたときに大学にあった大きい類語大辞典がすごく見やすくて、使いやすくて読んでるだけで面白かったんですけど、卒論て家でも書くし、法外な値段でもなかったので……すいません、父にねだりました(お父さんありがとう)。これを書きながらそんなことを思い出しました。類語楽しい(でもタイトル選びは四苦八苦)。今ではネットの辞典が役にたっています。
各タイトルは三回。姉妹編では四回でした。これ、やってみてからメリットもあるかな、と。
というのは、読者様のうち毎回ハートをつけてくださる方からの通知を見ていると、同じタイトルである三回、四回分でハート通知が止まる、というケース、多いんですね。
ですから、読む側が「どこまで読もうかな」というときにマークにしやすいんだと思います。予想せずのことでした。
さてそろそろ二千字なので取り敢えずここまで。
今日、本編も更新しました! 番外編化している体験記前半と合わせて、本編もお読みいただければ嬉しいです。本当の(?)彼らがお待ち申し上げます(姫は姉妹編だけですけれど)。
天空の標
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