結晶の想い
現世に出現した聖域で始まる
しかも四百年前にこの
そして場面は、同じ聖域の
負傷している者達をクビアは魔符術で癒し、ケイルは自身の
目覚めたアルトリア自身も、適正の無い
そうした面々の中、マギルスとバルディオスは
「――……
「……
「ううん。どっちも生きてるみたいだし、あの大きな
「……いったい、何が起こっとるんじゃ……?」
マギルスは離れた場所から感じる
それを聞くバルディオスは事態の推移が分からず、困惑した面持ちを見せていた。
しかし次の瞬間、マギルスが驚く表情を浮かべる。
「……あれ、
「!!」
そして次の瞬間、二人の
するとそこに黒い渦状に形成された時空間の穴が出現し、マギルスは叫ぶ。
「来たよっ!!」
「!?」
治療に当たっている者達はマギルスの叫びを聞き、危険な相手が現れた事を理解する。
リエスティアの治癒をしていたケイルは立ち上がりながら腰に携える長刀の柄に手を運び、傍に居るシエスティナを自分の
クビアもまた立ち上がり、両手で紙札と扇子を摘まみ広げながら覚悟を決めた表情で戦闘態勢に入る。
更に横になっていたアルトリアも瞼を開き、治癒を終えた肉体を機敏に動かしながら屈んだ状態で身構えた。
それぞれが覚悟を備えた姿勢を見せる中、時空間の穴から一つの人影が現れる。
するとその輪郭がはっきり見えた瞬間、それぞれが驚きながらその人物の名を呼んだ。
「――……エリク!」
「エリクかっ!?」
「おじさん!」
一部を除き
しかし次の瞬間、エリクの
そこには銀髪紅眼の姿をした、【
それを見た瞬間、三人はそれぞれに足を止めながら身構えながら武器を構える。
「!!」
「うわっ!?」
「クッ!!」
「――……大丈夫だ」
「!」
「エリク……!?」
警戒しながらジュリアに構える仲間達に対して、その前を歩くエリクが制止の声を向ける。
そして
「奴はもう、俺達を殺さない」
「……どういう事だよ? いったい」
「奴の目的も、俺達が探していた
「目覚めさせるって、あの……例の?」
「そうだ。……だが俺達が預かったアレが、その少女を目覚めさせることが出来るらしいと『
「!」
「それがあれば、
「……アレって、『白』から渡されたモノのこと?」
「ああ」
「……ちょっと待って」
エリクの言葉を聞いた各々は、唖然とした面持ちを浮かべる。
しかしそれを聞くジュリアが一切の反論を挟まず視線を逸らしながら何もしない様子を見て、アルトリアは躊躇いを見せながらも応じた。
すると右手を真横に翳し向けた
それは
そして『
「これでいいの?」
「ああ。これを、ある者達に渡したい。いいだろうか?」
「……それがこの状況の条件なら、仕方ないでしょ。はい」
「ありがとう」
すると振り返りながら現れたままの時空間の穴へ視線を向けた後、エリクは呼び掛けるように声を発した。
「受け取った、来てくれ」
「え――……!!」
「こ、今度はなんだ……!?」
その声に応えるように、時空間の中から新たな人影が二つほど現れる。
それを見て新たに警戒を見せるアルトリアやケイル達だったが、姿が見えると困惑した様子を浮かべた。
そこから出て来たのは、緑色の肌をした小柄な
すると先に出て来た小柄な
「『――……えっ!?』」
「……あの姿、まさか
「『な、なんで……ヴェルズ様がいるんだっ!?』」
「……魔族語? 私を見て驚いてる?」
自分を見ながら驚く魔族が
しかしその
するとアルトリアは、驚く
「『バ、バフォメットさん! アレって、ヴェルズ様かっ!?』」
「『――……姿こそ似ていますが、人間ですね。……おや、魂の色合いも
「『じゃあやっぱり、あの子はヴェルズ様の生まれ変わりってことか。……フォウルの旦那に代わったそっちの男は、ドワルゴン様の生まれ変わりなんだよな? 今の人間大陸って、スゲェことになってんだな』」
「……ヴェルズ……ドワルゴン……生まれ変わり……?」
魔族語を話す二人が自分を見ながらそうした話をしているのを聞いたアルトリアは、奇妙な困惑を浮かべる。
するとそんな視線を身体で遮るエリクは、二人に歩み寄りながら手に持つ白い
「これでいいか?」
「確認の為に、触れさせて頂いても?」
「ああ」
エリクが差し出す
そして片膝を着きながら
すると次の瞬間、
そして
「『……思い出した』」
「!」
「『アイリ、アイリだ。……そうだ、アイリなんだ。あの子が俺に、最初に教えてくれた……名前……。……なんで俺、あの子のこと……忘れちまってたんだ……っ』」
それを見たエリク達は言葉こそ理解できずとも、
逆にその
「……あの
「……俺達が触れても、何も起こらなかったが」
「私達が触れても意味が無いってことは、彼等にだけ効くんでしょ。……その
「……そうか」
アルトリアの推察を聞いたエリクは、膝を着くほど泣き崩れている
そして彼にとってその
「
「……!」
エリクはそうした
するとその瞳を通して視るエリクの姿が、かつて彼と親交のあった【
互いに言葉こそ理解できずとも、その表情が互いの心を理解させる。
そして涙を腕で拭いながら微笑んで立ち上がった
「『……バフォメットさんも、思い出したんだよな?』」
「『はい。偉大なる
「『へへっ。……ありがとな。コレ、貰っていくぜ?』」
「ああ」
それを了承だと理解した
「『あの人等に礼を伝えてくれ。それと
「『はい。』――……【魔神王】様が、皆様に御礼を仰っています。謹んで御受け取り下さい」
「あ、ああ」
「そして
「……ッ」
まるでここに居る者達が【
そんな会話を聞き取れない【
「『御礼、伝えてくれたかい?』」
「『はい』」
「『そっか。じゃ、帰ろうぜ。…あっ。ジュリア様は……どうしますか? 一緒に来ます?』」
「『……お前達は先に戻ってろ』」
「『えっ。は、はい。――……じゃ、ありがとな! アンタ達!』」
「それでは、
【
そして彼等の身体が完全に入り込んだ後、
そうして突如として現れた二人が消えた事で、彼等の目線は一人の人物に注がれる。
それは彼等と共に魔大陸へ向かうのを保留し、その場に残った【
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