仲裁の対話
復活し激突した【
その二匹によって二人は捕食されそうになるも、それを止めたのは同じ魔大陸の
更にその【
彼は
そうして
暗雲と共に暴風と豪風が降り注いでいた天候は
そんな
「――……戦いが止まった……?」
「なに?」
「
「どちからが勝ったのか? ……まさか、エリクが……」
「……いや、巨大な
隣に立つシルエスカは『青』の呟きを聞き、状況に変化が及んだ事を察する。
すると少し離れた場所で立っている
「――……この匂いは……」
「どうしました?」
「……俺と似た、魔力の匂いを感じる」
「えっ」
「……この匂いの数、まさか……!」
「!?」
「お、おいっ!!」
エアハルトは遠く離れた
すると
そして海に足を
海の上を走るエアハルトの姿を見たそれぞれの者達は驚愕し、互いに声を漏らした。
「彼はどうしたのです、急に?」
「
「……ああ」
先んじて向かい始めたエアハルトの動向を見て、『青』やシルエスカ達も聖域へ向かう事を決める。
そして更に天候が落ち着くのを待ち、転移魔法が可能になる時まで心構えをしながら待った。
そうした一方で、【
ジュリアやフォウルもそれに従い、その場には巨大な二匹も含めた六名の
そうした場において開口一番に口を開いたのは、その話し合いの場を設けたジャッカス自身でもある。
「――……じゃあ、最初に俺達の話からしよう。フォウルの旦那やジュリア様は、知らない話だと思うから」
「……知らない話?」
「五百年前だっけ? その時に起きた
「!」
「でもその子は眠った状態でさ。それから何年や何十年……何百年経っても、歳を取らずに眠り続けてるんだ」
「……それが、アイリか?」
「俺達も、最初はその子の素性がよく分からなかったんだ。……でもその子を見ると、無性に懐かしくて。それでいて、その子を知ってるような気がするのに思い出せなくて……。……それでその子が誰なのか知る為に、村の皆やジークヴェルトの国も一緒になって、色々としたんだけど。それでも、思い出せなくて……」
「……」
「……それから、百年くらい経った後だ。村に、その子にそっくりな人間の女が現れたんだ」
「え?」
「その女がさ、眠ってる人間の女の子が居ないかって尋ねて来たんだよ。……そして、その子について色々と教えてくれたんだ。その子の名前がアイリで、その子は……俺達の村で育った女の子だって」
「!!」
「そんで、その子の育て親は俺なんだって言ってさ。最初は何言ってんだって思ったんだけど……でも、そう言われると。その子を見てる時に感じる俺の
「……その女ってのは? 名前や見た目は?」
「名前は、えっと……こう名乗ってた。クロエって」
「!?」
「クロエ……!?」
「サキュバスみたいに黒髪と黒い目で、若い人間の女だった。
「……『
ジャッカスの話す言葉に、フォウルもジュリアも互いに驚愕した面持ちを深める。
するとその話は続けられ、四百年前に現れたという『
「その
「!」
「『その時に、
「はい。
苦笑いを浮かべるジャッカスに対して、隣に控えるバフォメットは微笑みを浮かべる。
そして視線を集める二人に対して、ジャッカスは自身が関わってくる話を続けた。
「で、それを聞いてからバフォメットさんに頼んでよ。配下のヴェルフェゴールさんって悪魔に、人間大陸の監視を任せたんだ」
「!」
「それから三百年くらい、特に
「!?」
「それでもう一人と契約しながら人間大陸の監視をするって、いきなり言われてさ。とりあえず貰った魂はバフォメットさんに頼んで
『……それが、ウォーリスの時か』
ジャッカスは配下である
あの時、ウォーリスと契約し精神内部に留まっていたヴェルフェゴールは、契約を破った代償としてその魂を回収しようとした。
しかしそれを途中で止めると、そのまま魂を奪わずにウォーリスの精神内部から消えてしまう。
それが崇拝する【
フォウルもまたそれを聞いて納得しながらも、この場に訪れたジャッカスについて尋ねる。
「……それで、今回はマナの
「いや、それもあるんだけど。この
「……」
『マナの実は、俺達にとっては
『そうです。それに久しく食べてませんでしたし、ちょっと食べたいなと思っただけです』
「だからって
『別にいいではないか』
『そうですよ。好き勝手をやってた人間達には、丁度いい
「まぁ、そりゃな。でも
『むぅ』
『ふぅ』
改めて食欲に従い
それを聞き流すように顔を背ける二匹に対して、ジャッカスは溜息を漏らしながら二人に視線と話を戻した。
「まったく、自由奔放っていうのも考えものだなぁ。……あぁ、話がかなり逸れた。えっと、何処まで話したっけ?」
「……『
「そうそう。それで
「もう一つの
「アイリって子が目覚める為に必要なモンを持ってる
「!」
「……なるほど、そういうことか。『
ジャッカス達が伝え聞いた『
そんな
「まさか、アンタなのかい? その必要なモンを持ってるって」
「違うぜ。
「マジかい! その
「少し離れたとこに居るだろ。……お前、本当に【
「いや、一応そういう
「なるほどな。……さっき、ジークヴェルトとか言ってたな。あのエルフの坊主、元気にしてるか?」
「ああ、元気だぜ。今は
「ほぉ、あの泣きべそ掻いてた鼻タレ坊主がな」
「アンタが村に来た時にはな。でも今じゃ、立派に他の魔族達と同盟とか友好関係を築く立役者になってるよ。そうそう、アンタの孫が統治してたっていう南の方も、ちゃんと仲良くやってるぜ。まぁ、たまにオーガが来て暴れたりするけどさ」
「そうか。……なんだかんだで俺達が居なくなっても、
しかしそうした話をする二人の傍らで、ジュリアだけは異様な
「……どういうことだ? クソ
「あ?」
「アイリを目覚めさせるモンを、
「……俺が言って信じたか? クソガキが」
「!」
「テメェは自分の
「ク……ッ!!」
呆気を含むフォウルの言葉に対して、ジュリアは激昂を起こそうとする。
そんな二人の間を仲裁するようにジャッカスが割り込み、声を挟んだ。
「ストップ! 二人とも、喧嘩は止めてくれよ!」
「……チッ」
「フンッ」
「それよりさ、その相棒って
「……ま、それは別にいいがな。……お前はいいのか? ジュリア」
「!」
「テメェの方法以外で、アイリが目覚めるかもしれねぇぞ。……どうする? テメェのやり方を貫くか、それとも他人に委ねるか。どっちにする?」
「お、おいおい……フォウルの旦那……!」
「このクソガキが
「……」
別の手段で『アイリ』を目覚めさせる方法があると聞いたジュリアに対して、フォウルはそう尋ねる。
その返事によっては制止を聞かずにジュリアと戦う様子を見せるフォウルに対して、ジャッカスもその意思と本気を察しながら二人を交互に見た。
するとジュリアは歯を食い縛った後、ジャッカスを見ながら溜息を零して答えを返す。
「……はぁ……。……アイリが目覚めるんだったら、それでいい」
「ジュリア様……!」
「だが、もしアイリが今の世界に……人間達の姿に幻滅したら。……その時は、アタシが人間大陸を滅ぼす。それを止めるなよ?」
「ああ、いいぜ。
二人は鋭い眼光を向け合い、互いに納得した答えを得る。
こうしてジャッカスの仲裁を得た二人は、自分達の意思を貫く形で事態の進展を選んだのだった。
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