戦士の成長
ついに激突したエリクとログウェルだったが、その
自らの長所とも言える
二人の衝突は
ログウェルはほとんど肉体から
そうした戦いを
「――……おいおいおい。エリクの奴が、あんな一方的に……!」
「……動きに無駄が多いんだ」
「え?」
「俺でも分かる。あの人の
「そ、そうなのか?」
「俺も散々、ログウェルに言われたんだ。無駄な
「……
「
エリクの劣勢に驚愕するバルディオスに対して、ユグナリスは冷静ながらの熱が籠る声でそう話す。
三年以上に渡りログウェルから
それ故にログウェルには予測に近い先読みで
その一瞬で
逆にエリクは全身を常に
そうした
ユグナリスも自身の経験からその結論へ至り、歯痒い思いを向けながら二人の戦いを見続けていた。
そんな時、彼等とは異なる声が発せられる。
「――……大丈夫だよ」
「!」
「マギルス殿っ!?」
その声を発したのは、同じ
ユグナリスの『
「おじさんなら、すぐに覚えるよ」
「え?」
「覚える……?」
「僕と遊んだ時なんか、すぐ覚えちゃってたから。僕も、最初は凄く焦ったんだ」
「……?」
「口で教えるよりも、実際にやった方が覚えるの凄く速いんだよね。僕もそうだけど……おじさんは、僕よりずっとそれが凄いんだ」
「……」
自身の経験によってエリクへの信頼を向けるマギルスに、二人は不可解な様子を見せながら映像へ視点を戻す。
すると二人の戦いに場面は戻り、ログウェルの夥しい
縦横無尽に走る長剣が間合いを伸ばすようにエリクの
割れ砕けた白い
それでもエリクは倒れず、今度は
身を
そうして苦戦を強いられるエリクだったが、その瞳からは戦意は衰えていない。
むしろ眼光は鋭さを増し、ログウェルの
「――……ほっ」
「ッ!!」
ログウェルが放った一つの
すると
それに気付いたログウェルは微笑みを深め、今度は鋭く素早く薙ぎ上げた剣戟をエリクの両肩に向ける。
鎖骨ごと両断しようとした
他者からは圧倒されるように視えていたエリクだったが、その
それに真っ先に気付いていたのは対峙しているログウェル自身であり、剣戟を止めず余裕を崩さぬ微笑みで声を向けた。
「儂の動きが、
「!」
「やはりお前さんは、追い詰めると
「クッ!!」
そうした声を向けた瞬間、宣言通りにログウェルの剣戟が速度を増す。
しかも戦闘において致命傷となるだろう箇所も狙い始め、エリクはそれに対応するしかない。
最初は
更に深く切り裂き始めたを剣戟を幾多も受けると、エリクは咄嗟にログウェル自身に対して視線を向け、胴体を中心とした両腕と両脚の動きを視ることに切り替えた。
「ッ!!」
すると次の瞬間、エリクは速度を上げた剣戟の一つを大きく跳び避けずに最小限の動きだけで回避して見せる。
それを見たログウェルは満足気な笑みを零し、口を微笑ませながら声を向けた。
「そう、ちゃんと
「ッ!!」
向かって来る
まさにログウェルと同じ
そして徐々に、エリクが
「……
「だから言ったじゃん。エリクおじさんなら、大丈夫だよ」
「そんな……。……この短時間で、ログウェルの剣を見切り始めたっていうのか……。……俺でも、一年以上は掛かったのに……っ」
僅かな時間で
それは彼に対する純粋な驚愕だけではなく、
そうした嫉妬の目が向けられている事に気付く余裕すらないエリクは、必死にログウェル自身の動きを見て致命傷となる
しかし
『――……なんで俺は、お前の動きを捉えられないんだ……?』
『……アタシを知ってる気になってるからだ』
『え……?』
『お前は気配の読みも、目もいい。だが周囲に気配を紛れさせ、感情の無い動きと刃を捉えきれなかった。それだけだ』
『……感情が、無い?』
『アタシが剣を習った流派では、これを『
『かすみ……?』
『自分の意識を周囲に溶け込ませ、思考せずに自分の身体を動かす。……
『……それだけで、あんな動きが……!?』
『出来るみたいだぜ。……無意識に動くアタシの身体は、無駄な動きが一切ないらしい。そして
エリクが思い出していたのは、仲間であるケイルと
ログウェルの動きを捉えながら自身の直感のみで剣戟を避ける事に専念するエリクは、最小の回避動作から反撃の
その為には回避と同時に攻撃の動作も必要となる事を無意識ながらも理解し、エリクは自分の鼻先に飛ぶ
「おぉっ!!」
「グゥッ!!」
ログウェルは歓喜した様子で身を屈めながら、エリクの大剣を回避する。
その反撃としてバネのように跳ね上げた身体と右腕で剣の突きを放ち、エリクの下顎を狙った。
エリクはそれを仰け反りながら回避し、顎先に切り傷を作られる。
それでも回避からの反撃に成功し、瞬く間に来る相手の
「ほっほっほっ。やはり
「ッ!!」
「生死を賭けた戦いの中で、成長できる者! それでこそ、儂の認めた『
歓喜と共に更に速度と鋭さを増した剣戟を放つログウェルに対して、エリクは再び防戦に入る。
それでも徐々に学習し始める
その領域まで彼を引き上げているのは、『敵』である老騎士ログウェル。
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