帝の正体
その事実が映像を通して各国にも広まる中、ケイルはそれを防ぐ戦力を集める為に、妖狐族クビアの転移魔術を用いて
そして
しかしそこには、
そんな大広間に訪れたケイルは、シルエスカの存在に驚きを見せる。
すると傍に膝を着いて頭を下げていた
「――……
「は、はい」
すると大広間の扉となっている襖が閉められ、僅かながらもその場の空気に変化が及んだことをケイルは感じ取った
「……結界か?」
「そうねぇ」
部屋全体を覆うように結界を敷かれた事をケイルは瞬時に察し、それを肯定するようにクビアは頷く。
そしてその結界がどのような意図で張られたかを考えている中で、シルエスカは真剣な表情を浮かべながら小声を向けて来た。
「……悪い時に来たものだな、お前達も」
「えっ」
そうした言葉を見せるシルエスカは、向かい合うように座るナニガシや
それに気付いたケイルは、自分にとって不都合な状況が今まさにこの一室で起きていたのではないかという可能性に至れた。
すると改めるように、胡坐で座る隻腕のナニガシが新たな
「――……
「……御無沙汰しております」
「ふむ、既に『赤』は別の者に譲られたか」
「……その通りです、今の私は一介の剣士に過ぎません。このような身で急な申し出を行い、申し訳ありません」
「なに、構わんさ。それに、お主達の用向きも理解しておる。
「はい」
「ならば丁度良かろう。今この場には、
「……では、この方達が……」
ナニガシはそう言うと、ケイルはその左右に控える四人の
その一人は自分の師匠である『
ナニガシが技を伝授し枝分かれした、『日』『月』『星』『雲』『雨』の流派を冠するアズマ国屈指の剣士達。
その内の四人が集まっている事を理解したケイルは、改めてそれぞれの面持ちに意識を向けると、いずれも師の
それを察したナニガシは、口元を微笑ませながら
「
「……四人?」
「いいや、五人だぞ。残りの一人、『
「!」
ナニガシはそう言いながら、自分の背後に在る障子に遮られた場所に首を傾ける。
それを聞いたケイルは驚きを浮かべ、アズマ国の頂点である
しかし
「――……余には、お主等のように弟子は
「!」
障子の向こう側からは男性か女性か分かり難い程の中性的な声が発せられ、ケイルは僅かに驚きを浮かべる。
そして障子の向こう側に居る人物こそが、『茶』のナニガシが守り仕えアズマ国の象徴となっている『
すると
「
「……はい」
「
「……え?」
ケイルの赤髪を見ながらそう声を向ける
そして自分を指して誰を懐かしんでいるのかと僅かに思考した時、七百年の時を生きる『茶』のナニガシを見ながら気付くように声を呟かせた。
「……
「無論、ルクソードの事やえ」
「!!」
「ルクソードは余の友にして、ナニガシの
「……あ、ありがとうございます」
ケイルは自身の予測が当たっていた事に驚きながら、目の前に居る
更にルクソードの子孫である
「……本日は、
「
「では。……既に御存知の事かもしれませんが、
「
「えっ」
「
「……!」
そんな時にこの事態が起き、アズマ国の助力を求めて
そうした流れを理解したケイルは、改めて
「どうか、御助力を願います」
「……残念ながら、それは出来ぬ」
「!?」
「友の子孫であるお主等の頼みは聞いてやりたいが、そればかりは出来ぬ。済まぬがな」
「……り、理由を聞いても?」
「むざむざ
「!?」
「
「……で、でも。このままだと、世界が……!」
「無論、それも分かる。……故に、
「……えっ?」
ナニガシ達を
それを聞き唖然とする様子を見せたケイルだったが、そんな二人の会話に割り込む形で『星』の当主が口を挟んだ。
「――……
「し、しかしなぁ。これはもう、
「あのメディアなる者は確かに脅威ですが、
「
「帝様は
『星』の当主を始め、『雨』と『雲』の当主達も同じように
それを聞きながら無言で表情の強張りを強めている
「……ど、どういうことだよ?」
「見た通りだ。
「……
「そうだ。……話を聞く限り、
「……
ケイルとシルエスカはそう情報を伝え合い、帝がナニガシと同じ『聖人』である事や、その能力の一端について推測する。
するとそんな二人の会話が頭に付く狐耳に届いたクビアは、溜息を漏らしながら教えた。
「当たり前よぉ。ここの
「……え?」
「……お前、今……なんって言った?」
「だからぁ、あの
然も当然のように話すクビアの言葉に、シルエスカとケイルは驚きを浮かべながら表情を固める。
すると先程から口論染みた説得を行い続けていたアズマ国の面々の中で、ついに
「――……とにかく、余が行って来るから! お前達には留守を任せるぞ!」
「あっ、ちょっと!」
「……!?」
「なっ!?」
周囲の説得を無視するように、帝は障子の向こう側で立ち上がる動きを人影で見せる。
それを止めようと各流派の当主達が立ち上がったが、その障子は内側から開かれ、改めて
その容姿を見たケイルとシルエスカは、思わず腰を浮かせる。
障子の向こう側に居たのは銀色の髪と銀色の瞳を持つ青年であり、黒髪黒目ばかりのアズマ国人とは思えぬ
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