兵の集傑
アルトリアは
そうした一方で、同じく自分の師匠達の救援を仰ぐ為にアズマ国に向かっていたケイルは、妖狐族クビアの転移魔術で都に到着し、凄まじい速さで駆けながら
しかしクビアが同伴している姿は無く、代わりにその手には紙札が複数枚ほど握られている。
更にその中の一枚が仄かに魔力を灯しながら、クビアの『
『――……私は貴方の足に
「分かった!」
魔術師としては優秀ながらも身体能力は聖人のケイルに及ばないクビアは、
そうしてケイルは一人で自然と田畑が広がる田舎道を全力で走り、僅かニ十分程で
しかし屋敷の周囲には近くに住む村人達も慌ただしい様子で集まっており、それを見たケイルは瞬時に状況を理解する。
「――……っ、皆も
村人達を見て先程の
そして屋敷の入り口正面に押し寄せる村人達を対して、ケイルは一息を吐きながら目を見開いて大声を発した。
「――……
「!?」
自身の
その隙を見計らうかのように村人達の垣根を潜り抜けると、ケイルは屋敷の門前に着地しながらそこで居る千代に声を掛けた。
「
「
「はい! ……師匠達は?」
「あの
「しまった、すれ違いか。……クソッ、そりゃそうか。師匠達だって動いてるよな」
「お前さん、どうするんだい?」
「師匠達と一緒に、
「そうかい。……
「はい。――……クビア、聞こえてたか? 師匠達は都だった。アタシだけ戻せ!」
『はいはぁい』
それを見ていた村人達の威圧は解かれて驚きを浮かべながらも、それを見送る千代は|義孫《《ケイル》に託すことを選んだ。
そして再び、ケイルは
するとクビアと合流し、そのまま声を向けた。
「――……都に行く! 補充の紙札!」
「分かってるわよぉ」
「もう一枚くれ! 可能なら、『茶』の
「えぇ、あのお爺ちゃんをぉ?」
「なんだお前、
「知ってるも何もぉ、里から逃げて来た私をしばらく匿ってくれたのがぁ、あの
「えっ!?」
「それから
「……だったら丁度いい、お前も来い!」
「えぇ!?」
「
「ちょ、ちょっとぉ!」
ケイルはクビアとアズマ国の
ナニガシは
だからこそケイルは、クビアの手を強引に引きながら都まで向かう。
そして他の国とは違い壁や門の無い都へ走り入りながら、逆に壁と門に囲まれている
しかしそこも、
その数も
「――……クソ、ここもかよ。……仕方ねぇ、壁を飛び越えるぞ!」
「はぁ、はぁ。ま、待ってよぉ……」
「だらしねぇな、それでも本当に魔人かよ?」
「わぁ、私は肉体派じゃないのよぉ」
「チッ、仕方ねぇ。ほら、担いでやるから!」
ケイルに腕を引かれながら走らされて疲労困憊のクビアを、ケイルは仕方なく背負う。
そして入り口から離れた壁へ向かい、足に蓄えた
するとケイルは淀み無く着地し、
そしてナニガシが居る後宮へと辿り着き、それに気付いた顔見知りの門番の一人が声を掛けた。
「――……あ、貴方は……
「師匠達はっ!?」
「今は
「なら丁度いい! 早急に
「お、御待ち下さい!」
ケイルがナニガシと同じ
それから十分程が経過した後、先程の門番と共に複数の警備兵が訪れ、その中には
そして
「――……
「
「それは、狐のクビアだな。それの
「すいません。この状況だったので」
「それはいい。それより、帝に会いたいと聞いたが?」
「師匠達に、また一緒に
「……やはり、そういうことか」
それに応じるように警備の兵は構えている
「お前が来訪したことを聞かれた
「!」
「私が案内しよう。ついて来い」
「はい。あっ、コイツも連れって良いですか?
「……まぁ、いいだろう」
そして
通り道を渡り終えて木造式の大きな
そして最奥に存在する巨大な広間の襖には警備をする
「――……その者達で、間違いは?」
「ありません」
「……では、通れ」
そして彼女達はそれに応じて入室し、
「
「……!」
その
その中の一人はケイルが良く知る師匠の
更にその奥では『茶』の
そんな
その後ろ姿を見たケイルは、静かな呟きながらも驚きを浮かべた。
「……シルエスカ……!?」
「――……
後ろに立つケイルの声が届き、
そこには二年前に旧ルクソード皇国から旅立った、元皇王にして元『赤』の
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