復讐の声
停滞させている
それが承諾されたことを確認した後、アルトリアはケイルと共に部屋から離れた。
その後、兄セルジアスに先導されながら二人はウォーリス達が居る部屋に訪れる。
それを迎える形で立ちながら一礼して迎えるカリーナと、その傍に在る
すると入室した三人を見るウォーリスは、アルトリアとケイルを見ながら声を向ける。
「――……今度は君達か。次は何を聞きたいんだ?」
「貴方、
「……
「そう」
「……だが、成長した君と
改めてウォーリスはそう話し、メディアとアルトリアという母子が似た雰囲気を持っている事を話す。
それを聞いたアルトリアは渋い表情を強め、隣に立つケイルに視線を向けた。
するとケイルはその視線に気付き、敢えて問い掛ける。
「なんだよ?」
「……何でも無いわ。……それより、
「
「親子で察しが良くて助かるわ。……またリエスティアの魂を、別の
「可能だ。我々が乗っていた
「そう。だったら
「説得が必要なら、私が
「随分と信用してるのね、
「彼は私にとって、唯一の
「あっ、そう。だったらその時には、アンタに任せるわ。――……で、そっちも良いの?
ウォーリスから協力の承諾を得たアルトリアは、続いてカリーナへ問い掛ける。
すると僅かに悩む様子を見せながらも頷き、それを受け入れる様子を見せた。
「
「私を信頼ね……。……あんまり、人を信じすぎない方がいいわよ」
「え?」
「信頼してる相手にだって、嘘を吐いたり黙ってたりすることだってあるわ。……私はまさに、その典型なんだから」
信頼を向けているというカリーナの言葉に対して、アルトリアは微笑みながら自身に対する皮肉を述べる。
それを聞いていたケイルは微妙な面持ちを浮かべて溜息を吐きながら、思い出すようにウォーリスに視線を向けて問い掛けた。
「アタシも、お前に聞きたい事がある。……お前の仲間だった、あの
「……事実だ」
「それも、ゲルガルドの命令だったのか?」
「……違う。君の一族をゲルガルドに献上させるよう頼んだのは、私自身だ」
「なにっ!?」
「ゲルガルドに取り入るよう見せる為には、献上品が必要だった。そこでアルフレッドから得た情報で、ゲルガルドが欲しがっていたルクソードの血を引く
「……ッ!!」
改めて自分の一族が狙われた原因が目の前に居るウォーリスだと知った時、ケイルは激昂を見せながら無意識に自身の左腰に右手を差し向ける。
しかしそこには本来あるはずの
「チッ!! ……アタシの一族は、どんな実験に使われた?」
「……ユグナリスも扱っていた『|生命の火』。ルクソード血族だけが扱えるというその能力の発現条件と情報。それを実験で確認していたと聞いている」
「『生命の火』……。……あの皇子がやってた炎か」
「そうだ。『火』の称号を持つ
「……ッ」
「だがルクソード血族の中でも、『生命の火』は聖人に準ずる能力を持つ者しか扱えない。更に『生命の火』自体にも能力差があり、シルエスカのように魔法に似た形で炎を操るだけの者や、ユグナリスのように自身の肉体を炎へ変える事もある。ゲルガルドはその能力の発現条件と、個体差による能力差を確認していた」
「……その実験に使われた一族の中に、赤い髪の男と女は居たか?」
「確か、実験記録に有った。どちらも既に準聖人に到り、男の方は『生命の火』を発現していたと聞く。だから能力は、シルエスカと同程度だったとも研究記録に記載があった」
「……ッ!!」
ウォーリスはケイルから聞かれる話を元に、ゲルガルドの研究記録を思い出して話す。
それを聞くケイルは、その男と女が自分の両親である事を察した。
そして両親の顛末を、ケイルは敢えて問い掛ける。
「その二人は、どうなった?」
「……実験の途中、二人とも死亡している。その死体は、ある場所に保管されていた」
「ある場所?」
「ベルグリンド王国の南方領地。そこにある古城の地下だ」
「!」
「ゲルガルドは貴重と呼べる実験体は、死体となっても保管している事があった。君の一族の遺体も、何かに流用できる可能性を考えて保管していたらしい」
「……その場所は?」
「今はもう無い。『
「!!」
「君の一族がそうした末路を辿ったのは、全て私のせいだ。釈明のしようもない。……もし望むのなら、私は君に討たれよう」
「……ッ!!」
改めてウォーリスはそう伝え、ケイルの一族をゲルガルドに献上し悲惨な末路を辿らせた罪をそうした形で晴らす事を受け入れる。
それを来たケイルは激昂の感情を高めながらウォーリスが居る
ウォーリスはそれを左顔面に受け、
それを止めようとしたカリーナだったが、ウォーリスは左手を上げて庇おうとする
「……いいんだ、カリーナ」
「ウォーリス様……!」
「彼女には、こうする権利がある」
「……何が、権利だよッ!!」
「グ……ッ!!」
上体を起こそうとしたウォーリスに対して、ケイルは憤怒のまま更に左右の拳を振り抜く。
そして顔面に容赦の無い殴打を幾度か浴びせながらも、セルジアスやカリーナは凄まじい
それから唇を始めとして頬や額が切れて血を流すウォーリスに、ケイルは新たな怒鳴りを向ける。
「――……ハァ……ッ!! ……まだだ。まだ、テメェには聞かなきゃならない事がある……!!」
「……」
「アタシの一族を襲って攫った、アイツ……あの女も、
「!」
「あの
「……」
ケイルは自身の幼い記憶に浮かぶ、自分の一族と家族を襲い攫った女魔法師の素性を聞き出そうとする。
しかしそれを聞いたウォーリスは僅かに表情を渋らせると、その視線を微かにアルトリアが居る方向へ動かし、すぐに戻しながら伝えた。
「……すまないが、それは言えない」
「あぁっ!?」
「その代わり、君の気が済むまで殴るといい。……それでも気が晴れないなら、私を殺すといいだろう」
「ウォーリス様っ!!」
「その代わり、私は絶対にその情報を教えない」
「……そうかよ。……だったら……っ!!」
ケイルの一族を襲った実行犯について情報を敢えて伏せるウォーリスに、ケイルは怒りを治められずに再び拳を振るおうとする。
それを止めようと間に庇おうとするカリーナの動きすら目に入る様子すら見えず、ケイルは感情のままにウォーリスを痛めつけようとした。
しかしその瞬間、アルトリアが声を発する。
「――……
「!」
「……なに?」
「ナルヴァニアが雇ってた【結社】の構成員で、ウォーリス達と連絡を取り合い、リエスティアを隠した人物。……そういう事なんでしょ」
「……!!」
アルトリアの言葉を聞いたケイルは、驚愕しながらも呆然とした表情を浮かべて目の前にいるウォーリスへ再び視線を向ける。
するとその青い瞳には静かに瞼が落ち、
そうした二人の様子を見るアルトリアは、今度はウォーリスに声を向けた。
「私への義理立てのつもり? だったら余計な御世話よ」
「……さっき、君は言っていただろう。信頼できる相手でも、黙っている事はあると。……君が彼女に黙っている事実を、私が言うわけにはいかないと思ったまでだ」
「……マジなのかよ……。……おいっ、いつから知ってたっ!?」
二人の会話を聞いていたケイルは、アルトリアが自分より早く
するとアルトリアは無表情のまま視線を落とし、それに答えた。
「……樹海で貴方が、私と
「!?」
「御父様も、よく言っていたわ。私と
「……っ!!」
アルトリアの母親が自分の一族を襲撃し攫った張本人である事を知ったケイルは、呆然とした表情から徐々に怒りが再発し始める。
そして
『――……あー、聞こえてるかなー? 人間大陸で平和ボケして暮らしてる、人類諸君ー!』
「!?」
「な、なんですか……この声……!?」
「……これは、『
「全員に届いてるの? まさか、誰が……」
突如として彼等の脳内に、女性らしき高い声が響き渡る。
それに動揺するカリーナを見ながら、ウォーリスは自分達に届いている声が魔法の『
更にアルトリアはその場の全員に『
しかしそうした中でその声を聞いたセルジアスとケイルだけは、無言のまま表情の強張りを強めていった。
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