枷なき憎悪
世界を支配し得る
しかしウォーリスの反逆に遭い、『魂』に蓄積したの負の感情によって狂気と絶望に満ちた
アルトリアやエリクすらも及ばなかった
そして
『
その際に舞う鮮血が赤い
しかし銀色の長髪に鮮血が幾つか付着し、短くも揺れる隙間からは赤い瞳と表情は憎悪と狂気の笑みを見せていた。
その
更に
「――……ま、まって……ブッ!!」
「アハハハハッ!!」
「……や、め……て――……グハッ!!」
「アー? ハァアッ!!」
「……ご、ごめ……ぶぐっ!! ……ゆ、ゆるして……あがっぁあっ!!」
それだけではなく、ダメージを与えた
狂気の笑いを見せながら殴り続ける
それに対してついに懇願してでも止めようとするゲルガルドだったが、それでも晴れない
そんな時、不意に
すると殴り続けていたゲルガルドとは異なる方角に赤い瞳を動かし、そちらを見据えながら呟いた。
「……この魔力は……」
「……ぁ……ぇ……?」
そして与えられ続けた痛みが止まった事に、朦朧とするゲルガルドは腫れあがった顔と霞む視線を向けながら
すると赤く鋭い
「ご、ごめんなさい……許して……ください……」
「……飽きた」
「……ぇ?」
「もう、お前に用は無い。――……このまま消えろ」
「……ヒ、ヒィイイ――……ッ!!」
赤い魔力で形成された十字の張り付け台に固定されたままのゲルガルドに、
すると両拳に纏わり付く血を中空に作り出した水で洗い落とし、赤く染まった血の球体を高温に熱しながら巨大な赤い光としてゲルガルドに放った。
それを受けたゲルガルドは、地面ごと削り取られながら放熱する球体に飲み込まれる。
そして森を削りながら上空へ曲がり昇る高熱の球体は、そのまま凄まじい劫火となって炸裂した。
すると炸裂した劫火の中から、黒焦げになった人間らしき形の物体が落下していく。
それを確認したのは、二人の戦闘音を聞き付けて向かっていた青馬に騎乗し
「――……アレが、音の正体っぽい!」
「アレは、魔力の炎……。それに、あの黒焦げになっているのは、誰だ……!?」
「アリアお姉さんかな?」
「いや、アルトリアとは
「……えぇっ!?」
二人は
その体格がウォーリスと類似している事を悟った未来のユグナリスの言葉に、マギルスは驚きと疑いを向けた声で問い掛けた。
「なんで敵の
「……こんな
「お兄さんの未来だと、どうなったの?」
「……俺はテクラノス老師やゴズヴァール殿の助力を得て、ザルツヘルムを倒した後にこの
「!?」
「そして『器』と『魂』を糧に作られた『マナの実』を食べて、
「……それが今回は間に合わなかった、って感じじゃないよね。コレは」
「ああ。……もし、俺の未来と君達の現世で違うことがあるとしたら……リエスティアとアルトリアが、まだ生きているってところだ」
「じゃあ、アリアお姉さんがやったのかな?」
「
「何かいる!」
自身の知る未来と大きく異なる現状を垣間見て、未来のユグナリスは困惑した表情を浮かべる。
そんな折、マギルスと未来のユグナリスは同時に
そこは森が削り取られたかのような光景が窺え、その先に削り取られていない箇所が見える。
するとそこに立ちながらこちらを見上げている、長い銀髪と赤い
それを最初に見たマギルスは、首を傾げながら疑問を口にする。
「アレ、誰?」
「……まさか。いや、でも……!」
「お兄さんの知ってる人?」
「あの顔立ち、リエスティアに似ている……!!」
「えっ」
「髪色も違うし、ちゃんと自分の足で立っているけれど――……間違いない! 彼女は、リエスティアだっ!!」
「あっ、ちょっとお兄さんっ!? もう、しょうがないな――……ッ!?」
未来のユグナリスはそこに立つ女性が
その感情任せの行動に驚くマギルスは、僅かに遅れながら青馬を駆けさせて同じ女性の場所まで向かおうとした。
しかし次の瞬間、マギルスは
そして
「これ、エリクおじさんの魔力……? でも、
マギルスは地上から追い掛けているはずのエリクが以前にも発していた魔力を再び放ち始めている事に気付き、困惑した様子を見せる。
しかも感知している魔力は通常時の
「おじさん、また
この状況で再び赤鬼となっているエリクの魔力を感じ取り、マギルスは脳裏にある光景が思い浮かぶ。
それは初めてエリクが赤鬼になった瞬間と、その
無意識にエリクの暴走が再び起きた原因へ至ったマギルスは、黒焦げになったウォーリスを思い出しながら未来のユグナリスが近付く
その周囲にはアルトリアと思しき人影は見えず、マギルスは表情を強張らせながら呟いた。
「まさか、アリアお姉さんがもう死んでて……それを、おじさんが見つけて暴走しちゃってるんじゃ……!?」
『ブルルッ』
「どうするのって、そんなの僕も分かんないよ!」
謎の女性によって
その解決の糸口になりそうな方角へ視線を向けると、
未来のユグナリスは遠目から見ていた女性の姿に、驚きながらも僅かに喜ぶような表情が浮かぶ。
それは髪や瞳の色こそ違いながらも、間違いなく未来で失った
「――……リエスティアッ!!」
「……」
「リエスティア、リエスティアなんだろっ!? ……ほんとに、本当に生きてる……!」
「……?」
傍で降りた未来のユグナリスは、
それに対して相手は眉を
「俺だよ、ユグナリスだ! ……もしかして、覚えてないのかい?」
「……ユグナリス……」
「そう、ユグナリス。ユグナリス=ゲルツ=フォン=ガルミッシュ。俺の名前だ、そして……君を愛している男の名前だ」
「……ユグナリス……。……ああ、知ってる」
「!」
「お前は、嫌いだ」
「え――……ッ!?」
未来のユグナリスが自身の名を教えた瞬間、
そして赤く鋭い眼光を向けながら、周囲に水の球体を複数ほど作り出した。
すると次の瞬間、その水球から凄まじい
それ等の軌道は未来のユグナリスを狙いながらも、瞬く間に『生命の火』を纏わせたユグナリスは放たれた
「リ、リエスティアッ!? 何を――……!」
「お前も、死ねッ!!」
「ッ!!」
攻撃を避けられた
『火』『水』『風』『土』『雷』『光』『闇』の七属性の魔力球からそれぞれに殺傷性の高い魔法が放たれ、それ等が全て未来のユグナリスに襲い掛かった。
話し合う余地すら与えない
しかしそれを追う
「リエスティアッ!? なんで俺に――……クッ、正気に戻ってくれっ!!」
「消えろッ!!」
何とか説得を試みようとする未来のユグナリスに対して、
その容赦の無い攻撃はどれも即死するであろう威力だったが、未来のユグナリスはそれ等を掻い潜りながら必死に呼び掛け続けた。
それを遠目から見るマギルスは冷や汗を浮かべると、
『ブルルッ』
「……えっ。……じゃあ、アレって
『ブルッ』
「それじゃあ、
『ヒヒィン』
「……エリクおじさんが見つけたのは、魂が無い身体ってことかな。……でも、アリアお姉さんの魂は
『ブフッ』
「ええっと……。……
再び復活した
こうして未曾有の危機に直面する彼等は、まさに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます