神の暴虐
『マナの樹』が聳え立つ
そしてウォーリスは自らの意思によって
そうした一方、肉体の主導権を奪い返したゲルガルドは
しかし
すると『
それを察知し逃走に入ったゲルガルドに対して、
転移させた赤い球体を巨大な劫火として放つ
しかし劫火から僅かに離れた中空に現れたゲルガルドは、転移魔法によって直撃を逃れていた。
「――……クソッ!! あの攻撃、やはり【
そして自身の記憶に残る第一次人魔大戦での【
しかしその悪態を全て口から放つより早く、次の事態は襲って来る。
それは先程の赤い球体がゲルガルドの周囲に複数も転移して現れ、再び巨大な劫火となって炸裂したのだ。
ゲルガルドはそれに気付き、着火した球体に巻き込まれる前に再び転移魔法で逃走する。
その距離は『マナの樹』からかなり離れた十数キロほど先であり、そこから先程まで居た中空に巨大な赤い劫火が発生した光景を目にした。
劫火の巨大さは先程の数倍に及び、十数キロ以上も離れたゲルガルドの視覚でも強化せずとも映し出される。
それによってゲルガルドの表情は血の気を引かせ、声を震わせながら呟かせた。
「あの一瞬で、私の居場所を――……ッ!!」
「――……逃がさない」
劫火を見据えながら
それは殺気に満ちた
「……クソッ!!」
逃走が不可能だと判断したゲルガルドは、
振り向きながら両手に創り出した
一薙ぎで
しかし歯を食い縛らせると、身体能力を極限まで高めながら動かし、両腕に握る
「グッ、ォオオッ!!」
一切の躊躇いも無く殺す気で放つゲルガルドの斬撃は、全て
そして銀色の髪で覆われ隠れていた赤い瞳が銀髪の隙間から覗き見ると、その斬撃を凌駕した速度で
「ッ!?」
掴まれた瞬間、
それはゲルガルドの首回りにも纏っていた
掴まれてから反応する事すら出来なかったゲルガルドは、首を折られてから初めて傾く視界で自身に異常が起きたことに気付く。
そして次の瞬間、自身の腹部に巨大な衝撃を受けながらゲルガルドはその場から斜め下側に吹き飛ばされた。
それは
森を削り取りながら吹き飛ばされるゲルガルドは、再び自分が居た『マナの樹』の傍まで戻された。
「――……ガ……ぁぐ……ッ」
地面を削りながら勢いが止まったゲルガルドは、身に着けた
その
そして後から訪れる凄まじい痛みで歯を食い縛りながら、ゲルガルドは両手を動かし自身の首を支える。
左手で首を真っ直ぐに立たせ、右手で頭を固定しながら肉体の治癒をさせ始めながら呟いた。
「……治癒が、遅い……。
ゲルガルドはエリク戦でも見せた驚異的な再生能力が発揮されていない事に気付き、それを疑問に思いながらある事を思い出す。
それは自分が
『
膨大な
その原因は
その事象を第一次人魔大戦の経験と情報から知るゲルガルドは、
しかしそれに対する対策を行える時間も無く、治癒に集中しようとしていたゲルガルドの視界に再び恐怖が押し寄せた。
「
首と頭を支えながら治癒しようとするゲルガルドの目と鼻の先に、音も無く再び
そして赤い瞳で見下ろしながら、鋭い眼光を向けた。
すると次の瞬間、
そしてゲルガルドの意思に関わりなく、その身体は中空に浮かされながら両腕を左右へ伸ばされ、両足を真っ直ぐにさせられた。
「これは……ッ!?」
身動きの取れないゲルガルドは、自身の肉体に及んでいる赤い光に困惑を浮かべる。
するとゲルガルドの背後に赤い光で形成された十字架が出現し、それに両手と両足、更に折れている首も真っ直ぐに固定させた。
拘束されたゲルガルドは藻搔き動くが、赤い魔力で構成された十字架と枷は千切り取れず、また転移魔法などを使おうとしても発動しない。
そんなゲルガルドに対して、歩み寄る
「……これでお前も、逃げられない」
「ッ!!」
その赤い瞳に恐怖を抱くゲルガルドに、再び目にも止まらぬ
それは常人であれば一撃で肉体が四散し絶命するであろう重い
しかしそれこそ目的とするように、
「が、はっ!?」
「……フッ」
「ぁ、ぐぎゃっ!!」
「……フフ……ッ」
「ぶぐっ!!」
「フフ……アハ……ッ!!」
「ぐっ、きさ――……ガッ!!」
「アハハハハァアッ!!」
痛みを与え続けながらも気絶を許さず、そして殺さぬようにか細い拳を奮い続ける
それは魂の持ち主だったアルトリアの精神から懸け離れた思考と行動であり、目の前の
ゲルガルドも
腹部への殴打を中心に両手両足にも殴打を浴びせる
しかし
すると精神体となったゲルガルドは
『――……ウォーリスッ!!』
『……フッ、どうしました? 父上』
『
『御断りします』
『!?』
『このまま貴方も、そして私も、復讐心に染まる
『……正気なのか、貴様はっ!?』
『お前にだけは言われたくはない。憎悪と狂気に身を委ね、あらゆるモノを道具として利用して来た、お前にだけは』
『ッ!!』
『お前の信用を得る為に、私はこの日まで外道に身を堕とした。
『ジェイクと、ナルヴァニアだと……!?』
『これが
『……ウォーリスッ、
そしてウォーリスの人格を破壊しようと、その胸部分を穿とうと右拳を放った。
しかしゲルガルドの右腕は、その真横から伸びる黒い腕によって掴み止められる。
それに驚愕しながら横目を向けるゲルガルドは、そこに立つ人物を見て目を見開いた。
『貴様は……ヴェルフェゴール!?』
「――……困りますねぇ。契約の報酬を、破壊されてしまうのは」
ゲルガルドの右腕を止めたのは、ウォーリスと契約している悪魔ヴェルフェゴール。
今まで姿を見せていなかったヴェルフェゴールは、その精神内部でウォーリスの傍に控えていた。
そんなヴェルフェゴールに対して、ゲルガルドは掴まれた右腕を引き下げる。
するとゲルガルドは凄まじい形相を浮かべながら、邪魔をしたヴェルフェゴールに対して怒鳴りを向けながら襲い掛かった。
『
「おやおや。――……
『
「
精神体で襲い掛かるゲルガルドに対して、ヴェルフェゴールは
そして襲い掛かるゲルガルドに躊躇なく逆撃を浴びせ、精神体の顔を右手で掴みながら精神世界の床へ叩きつけた。
『ブギィッ!!』
「貴方の魂、あまり綺麗ではありませんねぇ。……どうぞ、
『この……離せ――……チクショオォオオッ!!』
ヴェルフェゴールはゲルガルドの頭を掴んだまま、そのまま大きく振り被る。
すると凄まじい勢いでその場から吹き飛ばし、ゲルガルドの精神体を
そして再び
それから幾度もゲルガルドは肉体に与えられ続ける痛みを味わいながら、
こうして絶望に染まる
それから逃れられる術も失い、自らの目的も果たせないまま生き地獄を味わっていた。
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