決戦の大地
『天界』へ向かうウォーリス達を追う
そうした一方で、追われている事を認識していないウォーリス達の居る黒い塔は、『青』の
その塔内部で囚われているアルトリアは、長い渡航の合間に悪魔騎士ザルツヘルムと僅かながらも会話を交える。
しかし
その話を聞いた直後、真っ白な空間に包まれた壁部分に黒い穴が出現し、そこからウォーリスと側近アルフレッドが姿を現す。
そして空間内を見渡すウォーリスは、ザルツヘルムに歩み寄りながら話し掛けた。
「何か変わりは?」
「ありません」
「そうか」
短く答えるザルツヘルムに、ウォーリスはただ頷く。
そして黒い
「そういえば、その
「……ッ」
「少し、楽にしてやろう」
ウォーリスはそう言いながら右手の親指と薬指を重ね、擦り合わせながら音を鳴らす。
するとアルトリアの動きを封じていた
それに僅かな驚きを抱くアルトリアだったが、呪印の影響によって極度の衰弱状態に陥っている自分の身体を思い出す。
そして両腕で上半身を起こす事すら難しくなっている事に気付き、苦々しい表情を浮かべながらウォーリスを睨んだ。
「……今の私なら、拘束するまでも無いってことね……」
「その通りだ。……だが仮に、まともに動けるようになったとしても。お前では私には勝てないのは証明されている。ましてや、アルフレッドとザルツヘルムが居る状況ではな」
「……ッ」
「あるいは、
「……よく言うわよ……。その『鍵』に頼って、世界を手に入れようなんて考えるくせに……ッ」
「『鍵』を手に入れる為の努力を、惜しまなかったと言ってほしいものだ。……数百年の夢を叶える為に、私は自分でやるべきことを怠った事は、一度として無いのだから」
「……アンタの夢って、結局なんなのよ……。……何の為に、世界なんか……!」
辛うじて両腕で支えながら上半身を起こしたアルトリアは、疲弊した様子で荒い息を吐きながら憤りを宿した声で問い掛ける。
それに対して背を向けていたウォーリスの口を介して、ゲルガルドは自身の夢について語った。
「君は、『転生者』を知っているか?」
「転生者……。……前世の記憶を覚えている、魂を持つ者」
「私自身もウォーリスに宿る
「……!?」
「私は君達の生まれた
「……別の世界……?」
「正確に言えば、別の『星』と言うべきだろう。……その星は人間が繁栄した世界でもあったが、人技術に頼り続けた人類は退化を続け、結局は自分達の生み出した技術力によって星の命を滅ぼした」
「……それが、何なのよ……」
「私はな、『人間』が愚か存在だと知っている。……だからこそ愚かな『人間』を導き、全ての外敵から守れる存在が必要なのだ」
「……随分と、御立派な事を言ってるようだけど……。……それをアンタがやるって話なら、そんな事なんか誰も望んじゃいないわ」
「何も知らぬ愚者の望みなど、絶対的な支配の前には無意味だ」
「!」
「そして私は、その愚者を従える『王』を求めている。……だからこそ二千百年前、私達は人間世界の統一を目指し、『大帝国』と『
「……そして今度は、
「残念ながら、この時代に私のような『転生者』は少ない。何より『王』と成れる器と魂を持つ者が、人間で私以外に存在しないのも悲しい事実だ」
「……結局、それはアンタの独りよがりってことじゃないのよ」
「悪い事かね? それは」
「!!」
「他人の為に行動する人間など、この世には一人としていない。全員が自分の為に動き、自分の為に生き続ける。……仮に無償で他者の為に命を賭すような人間がいるとすれば、それは洗脳されている者か、精神的な異常者だけだろう」
ウォーリスは世界を手中に収める理由を明かし、力説するようにそうしたことも語る。
それを聞いていたアルトリアは僅かな時間だけ口を閉じたが、口元を微笑ませるように歪めながら再び鋭い眼光と言葉を、ウォーリスを介して話すゲルガルドに向けた。
「……確かに、そうかもね。……だからこそ、アンタには何一つとして共感できないわ」
「奇遇だな、私も他人に共感した事が無い。……特に君のような、精神異常者にはね」
ウォーリスを介して睨むゲルガルドは振り向き、アルトリアの意思が衝突するように睨みを重ねる。
そして互いの意思に理解するつもりが無い事を明かすと、そのままウォーリスは顔を背けて別方向へ歩み始めた。
すると目の前に右手を翳し、中空に投影した操作盤を出現させる。
そしてその操作盤を扱う姿を見せると、アルトリアは膝を
「今度は、何をする気よ……」
「情報では、そろそろ『
「……!?」
ウォーリスからそう述べられた途端、塔全体に地響きが生じ始める。
その振動によってアルトリアは姿勢を崩し、石造から滑り落ちるようにしながら床へ倒れた。
それに対して動じない周囲の中で、ウォーリスは口元を微笑ませる。
すると壁側に外の映像を映し出し、アルトリアにも理解できるように状況を伝えた。
「塔の下層を切り離したのだよ。……この
「!?」
「
「……何を、言って……!」
「そういえば、君は見ていなかったな。
「!?」
「もし切り離した
ウォーリスはそう口にしながら、投影された操作盤に
そして五分に設定した時間が減り始めた後、別の
「……さて、これで時間が経てば爆発が起きる。そして、もうすぐ
数え終えたウォーリスに合わせるように、その画像に映し出された筒状の中から赤い点滅が通過し終える。
それと同時に傍に控えるアルフレッドが投影された操作盤を扱い、壁と天井、そして床に外の光景を映し出した。
そこに広がる景色を見回すアルトリアは、あまりの光景に唖然とした様子を見せる。
しかしウォーリスは微笑みを強め、嬉々とした声を上げながら叫んだ。
「フ、フフッ。ハハハハ……!! ――……見た前、諸君。これが『
笑いながら周囲に映し出される景色を仰ぎ、ウォーリスはそう告げる。
全てが青に染まり大小様々な雲の浮いた広大な空間に、白に染められたかのような数々の大地が浮遊していた。
更にその中央に位置するような場所には、巨大な神殿と思しき大陸が居を構えながら浮かぶ光景が広がる。
この巨大な白い大陸こそ、『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます