砂地の残骸
赤い
それと同時に砂漠の地表へ落下した都市は崩壊し、辺り一帯は白い極光以外に見えなくなった。
その出来事からどれ程の時間が経ったのか、エリクは分からない。
しかし
「――……ここは……?」
エリクは夜空を見上げながら、左腕を地面に付けて身を捻りながら起き上がる。
その時にエリクが気付いたのは、地面に砂が多く存在していた事だった。
そして上半身を起こし、前に屈めながら両足を動かし自分の身体を立たせる。
エリクは疲弊した意識と身体を揺らしながら、それでも周囲を見渡し状況を確認した。
「――……これは……」
エリクが見たのは、浮遊都市だった物の瓦礫が夥しい数となって砂地の上で崩落している光景。
都市内部に存在した建物の原型はほとんど残っておらず、また
その状況を見渡す中で、エリクは無意識に右手で持っていた大剣の柄を見る。
黒い大剣の刃は
「……ありがとう」
エリクは大剣に軽く顎を下げて礼を述べた後、改めて周囲を見渡す。
そして疲弊した身体を歩ませ、瓦礫に満ちた砂漠の中を歩きながら声を発した。
「――……アリア! ケイル! マギルス! ……誰も、いないのか……?」
エリクは仲間達の名を呼び、瓦礫の中を歩き続ける。
砂漠には都市に溢れていた瘴気は無く、また死者の魂と思しきモノも見えない。
襲われていた
それでもエリクは諦めず、仲間達を探し続ける。
ひたすら大声で仲間の名を呼び、その生存を信じて叫び続けた。
「アリア! ケイル! マギルス! ……誰か、返事をしてくれ! アリア! ケイ――……ッ!!」
そうしている最中、エリクは瓦礫が崩れ流れ落ちる音を聞く。
その音の方角へ向かい歩みを進めたエリクは、瓦礫が積もった足場を踏み越えた先を見回した。
その時、視界の中に瓦礫が崩れたと思しき場所が目に入る。
そしてそこから、一人の人物が咳き込みながら這い出て来た。
「――……ゴホッ、ゲホ……ッ!!」
「ケイルッ!!」
瓦礫の中から出て来た人物の髪色と咳き込む声を聴き、それがケイルだとエリクは察する。
そして名前を呼びながら疲弊した身体を無理にでも動かし、駆け跳びながらケイルの前にエリクは辿り着いた。
「――……ケイル」
「……よぉ、無事だったか」
「お前も」
互いに無事を確認すると、エリクがケイルに左手を伸ばす。
それを右手で掴んだケイルは引き起こされ、二人は向かい合うように立ち上がった。
そしてその時、別の場所から瓦礫が崩れ吹き飛ぶような音がする。
互いに驚きながらそちらに意識を向けて構えると、そこには青い障壁に身を包んだマギルスと青馬が飛び出て来た。
「――……マギルス!」
「――……あっ、エリクおじさん! ケイルお姉さんも!」
マギルスは自分を呼ぶ声の方角を見下ろし、そこでエリク達を視認する。
そして地面に着地した後、二人が居る場所へ駆け跳びながら合流を果たした。
「お前達、無事だな」
「ああ」
「ピンピンしてるよ!」
「ブルルッ」
三人と一匹は互いに健在である事を確認し、そして伝え合う。
それを確認できたエリクは僅かに安堵の息を漏らしたが、同時にまだ確認できていない人物について呟いた。
「……アリア」
「!」
「アリアを、探していいか?」
「……ああ。どっちにしても、こんな状態だからな。
「だね!」
「ブルッ」
「……ありがとう」
二人と一匹の同意を得たエリクは、再び瓦礫が埋もれる砂漠の中を歩み始める。
それにケイルも付いて行きながら周囲を確認し、マギルスは青馬に騎乗しながら少し高い位置から周囲を見渡した。
まだ薄暗く静寂に包まれた廃墟都市の中で、エリクは必死に目と耳を凝らす。
しかしアリアを探すと自分で述べたエリク自身が、そのアリアの生存だけは諦めている事を自覚していた。
「……アリアは、自分の全てを懸けて、死者の魂と瘴気を浄化した」
「!」
「もう、アリアには自分の姿を維持する事も、難しかった」
「……」
「それでも、確認したいんだ。……すまない」
「……お前の、気が済むようにしろよ」
「ああ」
エリクにアリアの生存が難しかった事を伝えたケイルは、僅かに溜息を吐き出しながら頷き応える。
それに短く礼を述べたエリクは、瓦礫の中を進み続けた。
エリクの背中を見るケイルとマギルスは、互いに顔を見合わせる。
そしてケイルが思い出したように、マギルスに話し掛けた。
「……そういえば、クロエも見当たらないな……」
「クロエなら大丈夫だよ、きっと」
「……まぁ、
二人はそう会話を交えた後、離れるエリクの背中を追うように歩みを再会する。
そうして三人はしばらく、周囲の捜索を続けた。
時は流れ続け、白く染まりつつあった夜空に日の光が昇り始める。
その時間に休む事もせずアリアや生存者達の捜索を続けていたエリクは、平らな瓦礫の上で日の光で反射した光を見つけた。
「……!」
「エリク?」
「アレは……!」
視界に映る光を見たエリクは駆け出し、ケイルとマギルスもそれに付いて行く。
エリクは駆け寄ったその場所を見下ろしながら目を見開き、膝を曲げて身体を屈めた。
その瓦礫の上には、見知った白い魔玉が嵌め込まれた短い杖が置かれている。
しかし魔玉も杖も割れ砕けており、そこにアリアの魂が存在していない事をエリクは察しながら、瞳を閉じて唇を噛み締めた。
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