重なる光
その光景を黒い人形に包囲されながらも驚異的な視力で確認したエリクは、残る五枚の白い翼を羽ばたかせるアリアに告げた。
「――……青い箱が、
「えっ!?」
「道は、俺が作るッ!!」
再びエリクが右腕に凄まじい
それを見たアリアは再び白い翼を広げながら空中で踏ん張れるようにした瞬間、エリクが前方に向けて大剣を振り薙いだ。
再び極光にも似た
その瞬間、アリアは全ての翼を使い全力の速度で落下している青い
死者の怨念が宿る黒い人形達はそれを追うが、僅かにアリアの飛翔速度の方が僅かに速い。
そしてほとんどの建物が赤い瘴気に沈んだ都市の上空で、一筋の白い光が赤い
「エリク、箱は何処っ!?」
「あそこだ! ――……あれは……!?」
「どうしたの!?」
「……アレは、ゴズヴァールだ!」
「えっ!?」
エリクは大剣の刃先を赤い
それに従い斜め下側へ急降下するアリアだったが、エリクの視力が
「なんで、牛男が……!?」
「――……マズい!」
「!」
エリクが更に視認したのは、自分達と同じように落下する青い
明らかにゴズヴァールに狙いを定めている怨念を宿す黒い人形達は、その両腕を刃に変えた。
ゴズヴァールもそれを視認しているが、歯を食い縛りながら血だらけの身体にも拘わらず
その時、エリクとゴズヴァールの視線が重なり合った事を互いが認識した。
「――……奴は……!」
「――……!」
「……そうか。……ならば……ッ」
ゴズヴァールは白い翼と共に視認したエリクの姿を見て、口元を僅かに微笑ませる。
そして青い
更に落下している自分の位置を見極めた後に、ゴズヴァールは叫びながらエリクの耳にその声を届ける。
「――……お前に託す! 受け取れッ!!」
「!」
そう言い放つゴズヴァールは、中空にも関わらずその腕力だけで一トンを超える重量の青い
更に右脚で凄まじい蹴りを放ち、
ゴズヴァール自身はその反動で赤い
しかし満ち足りた表情で口元を微笑ませたゴズヴァールは、呟きながら顔を横に向けた。
「……アレクサンデル様。どうか、強くなられよ――……」
最後に
そして上下左右から迫る黒い人形達は変化させた腕の刃で、ゴズヴァールに全身を突き刺した。
「……ッ!!」
『キャハハハッ!!』
『死ンダ! マタ死ンダッ!!』
「――……
『!』
ゴズヴァールは自らの肉体を魔力で高め、身体全体の筋肉を膨張させる。
それによって突き刺した人形達の刃を肉体に留めて抜けなくさせると、腕と手足で自分を突いた人形達を固定した。
そのまま黒い人形達は放さず、ゴズヴァールは瘴気が満ちる都市に落ちる。
そして生気を失いつつある瞳を上空にある白い翼に向け、微笑みながらゴズヴァールは赤い霧の中に沈んだ。
「――……アリア!」
「ええ!」
エリクはそれを見送りながらも、投げ放たれた青い
そしてアリアに向かわせると、青い
左腕で掴んでいたアリアの腰からエリクは離れ、青い
そして
「――……俺はこのまま、
「!」
「君は、浄化の準備を!」
「……お願いね!」
「ああ」
互いが互いの言葉で頷き応え、アリアは翼を広げてその
そして加速しながら落下する
上段に大剣を構え、エリクは一呼吸を行い瞳を閉じて集中する。
そして瞬く間に全身から
あと数秒で、赤い
その瞬間を見極め瞳を再び開いたエリクは、軽く跳躍し黒い大剣を振り下ろした。
「――……ォオオオオオッ!!」
その瞬間、青い
振り下ろされたエリクの大剣は、青い
青い
更に黒い大剣と宿る
エリクの斬撃は再び赤い瘴気を吹き飛ばし、赤い
先程と同じように
「――……いける! ガァアアアアアッ!!」
修復されない
そして再び上段に大剣を掲げて凄まじい速度で振り下ろし、赤い
しかし、赤い
そして割れ砕けた隙間から夥しい瘴気と共に死者達の魂と怨念が溢れ出し、エリクを包み込むように襲った。
「……!」
『――……ドウシテ?』
『ワタシ、ナニモワルクナイノニ……』
『痛イ……怖イヨ……』
『死ニタクナイ……死ニタクナイヨォ……』
『――……マタ、私ヲ殺スノ?』
「……!!」
死者達の声が瘴気と共にエリクを包み、その怨念にも似た悲哀の声を漏らす。
それを聞いたエリクは僅かに動揺した瞬間、再び噴出した瘴気が全身に滾るエリクの
「……ッ!!」
『止メテ……オ願イ……』
『殺サナイデ……』
『一緒ニ、コッチニ逝コウ……?』
『皆、一緒ダヨ……。一人ジャナイヨ……』
死者達の声が更に重なり、エリクが纏う
その死者達の声に動揺が収めらず、また全身の
全身から力が抜け始める事を、エリクは自覚してしまう。
そして僅かに両膝が落ちてしまい、踏ん張る事が難しくなったエリクは厳しい表情を見せた。
更にエリクの背後からは、怨念を宿した黒い人形達が迫り来る。
それを感じ取るエリクは、苦難となった状況で表情を強張らせた。
「……クソ……ッ!!」
黒い人形達がエリクの背中に向けて、黒い剣を突き放つ。
その時、迫る人形達の背後から更に迫っていた青い光が、その人形達を吹き飛ばした。
「!!」
「――……やっぱり、おじさん達には僕等がいないとダメだね!」
「――……そうだな」
「……!?」
エリクはその時、死者の声とは全く違う声を背後から聞く。
それは聞き覚えのある者達の声であり、エリクの両脇から二つの斬撃がエリクの大剣の刃と並び重なるように振り下ろされた。
一つ目は、大鎌の刃に青馬が合わさり形成された青い
二つ目は、大小の赤い刀身と共に放たれた白く巨大な
エリクはそれを見て両隣に視線を向けながら、その斬撃を放った者達の名を呼んだ。
「――……ケイル……! マギルス……!」
「おじさん! もっと本気でやってよ!」
「こんな
「……ああ」
罵倒にも近い二人の言葉を浴びたエリクは、動揺した精神を立て直す。
そして再び集中したエリクは、体内に宿る全ての
「ウォオオオオッ!!」
「ヤァアアアアッ!!」
「ハァアアアアッ!!」
それに合わせるようにケイルとマギルスも斬撃に宿す魔力と
既に三人には死者の声は届かず、溢れ出す瘴気は三人の斬撃によって吹き飛ばされ、赤い
それと同時にエリクの持つ黒い大剣もまた、中央から折れ砕けてしまう。
その瞬間、赤い
それ等を迎えるように上空で白い翼を広げていたアリアは、右手に握る短杖を白く輝かせながら完了させた詠唱と共にあの魔法を死者達に放った。
「――……『
アリアが放つその救い光は、過去に制約で威力を低減されていた
都市全体にも及ぶその救いの光は、上空に飛ぶ
この時、落下していた浮遊都市は砂漠の大陸に落下する。
都市全体がその衝撃によって砕け割れ、白い光に覆われた浮遊都市は完全に破壊された。
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