二人の武具
戦う為に必要な装備が売られている店に訪れた二人は、そこで互いが使う
それから二人は武器が置いてある場所から離れ、次に防具が並べ置かれている棚に移動した。
その中の一つを見て足を止めたアリアに、エリクは問い掛ける。
「――……どうした?」
「コレ、買っておこうかなと思って」
「……胸当てか?」
「ええ。小さめのなら私も付けられるだろうし、幾ら魔法で治せると言っても心臓を一突きされたら死んじゃうもの」
「そうか。君用なら、買うべきだろうな」
アリアが防具を身に付ける事に関して、エリクも賛成の意見を見せる。
そしてアリアが注目した防具は、自身の
そして胸当てが並べられている棚を眺めるアリアは、ある一つに注目する。
更に受付で見ている
「店主さん。この胸当て、もしかして魔石を嵌め込めるタイプ?」
「ん? ああ、そうだよ。加工して形を整えた魔石を嵌め込めば、魔法効果を付与できるって代物さ」
「そうみたいね。……身を守る『
「……もしかしてお嬢ちゃん、魔法使いかい?」
「まぁね。……ふーん、コレで金貨三枚かぁ」
「値段が張るのは当たり前さ。嵌め込める魔石さえあれば、魔法が使えない奴でも魔法で身を守れる代物だからな。ただの鉄の胸当てより、遥かに頑丈になるんだぜ?」
「うーん。……ちなみに、ここの相場は他の防具屋と同じようなモノ?」
「ああ。それは帝国の中でも有名な職人が作った魔石防具だから、高めなのさ」
「もしかして、これって鍛冶師マイブの防具?」
「おっ、詳しいんだな。ほら、裏側に『マイブ』って名前が彫られてるだろ。これが鍛冶師マイブが作った証拠だ」
「……確かに、
「おお、嬢ちゃん買うのか。毎度あり!」
高額の装備を購入するアリアに対して、店主は現金ながらも笑顔を浮かべる。
そしてアリアは購入する防具を試着しながら、サイズが合うかを確認した。
そして合う事を確認しながら納得し、改めて購入する装備の代金をアリアは財布の中にある四枚の金かで支払う。
店主はその財布中に在る金貨の枚数に驚きながら受け取った後、釣銭の銀貨を渡した。
それから新たな防具を身に着けたアリアは、エリクに振り向きながら微笑んで問い掛ける。
「どう、似合ってる?」
「似合ってるかは分からないが、戦う時には必要だ」
「あら、素っ気無い。そんなんじゃ女性にモテないわよ」
「モテる?」
「女性に
「……女を抱くとは、なんだ?」
「えっ」
こうした会話の最中に疑問を浮かべるエリクに、アリアは数秒ほど遅れながら驚愕の表情を浮かべる。
すると引き気味の表情を浮かべながら、改めてエリクに問い掛け始めた。
「……ねぇ、エリク。貴方、女性とお付き合いしたことは?」
「女と突き合うとは、模擬戦のことか。女の傭兵は滅多にいないからな。一度か二度、あるかないかだ」
「……」
「どうしたんだ?」
そんな事を聞き返すエリクに、アリアは愕然とした様子を深める。
すると表情を素早く切り替え、小さな声ながらも鋭い口調で新たな問い掛けを向けた。
「エリク」
「なんだ?」
「正直に答えて。貴方、子供がどうやって生まれてくるかは知ってる?」
「……よくは、分からないな。夫婦になった男と女が一緒にいると、勝手に来るものではないのか?」
「……これは、酷いわ」
「何がだ?」
「いえ、いい。というか私から言いたくないし、教えたくない!」
「どういうことだ。顔も赤いが、大丈夫か?」
「もうこの話題は終わり、終了! 次は貴方の防具を選ぶわよ!」
「あ、ああ」
頭を抱えるアリアが唐突に話題を切り上げ、エリクの防具を探し始める。
そんな様子を不思議に思いつつ、エリクは共に店内を歩いた。
その中でエリクに合いそうな黒鉄製の防具が置かれた棚に来ると、再び受付側に居る店主に対してアリアは声を向ける。
「店主さん。この人に合いそうな防具を見繕ってほしいの」
「ああ、良いぜ。――……しかしデケェな、アンタ。どんな防具を探してんだい?」
「籠手と、頭に付けられる軽い兜ね。この人、傭兵で背負ってる
「大剣使いで、
店主はエリクを見回すように眺めた後、目の前の棚から幾つかの防具を選ぶ。
そして大きな受付机にその防具を置き、二人に見せながら選んだ防具を紹介した。
「お前さんを見る限り、防御性よりも機動性を確保して急所は守れるってタイプが好みだろ」
「そう、見えるか?」
「所々の身体の
「……付けてみていいか?」
「ああ、いいぜ」
手袋と黒鉄が組み合わされた
そして幾度か握りを確認して腕を軽く振るエリクは、装着した籠手に関する感想を述べた。
「意外と軽いな」
「それはお前さんが鍛えてる証拠だ。そこらへんの金属製より、この黒鉄製のは重いからな」
「そうなのか」
「でも、かなり硬いぜ。鉄剣や低級の魔獣程度じゃ、切ったり噛みつかれても簡単には貫けない。大剣使いなのに、武器を持つ指が切り飛ばされたら意味が無いからな。上手くやれば、これを着けたまま剣撃を防げるぞ。まぁ流石に、骨が折れちまうだろうけどな」
「そうか」
「何日か使ってれば、固い感じも馴染むと思うぜ。どうだい?」
「……どう思う?」
エリクは勧めらている防具を見ながら、金銭を握っているアリアに購入の是非を問い掛ける。
それを聞いたアリアは少し考え、エリクに頷いて見せた。
「良いと思うわ。あと店主さん、そっちの
「ああ、そうだぜ。サイズも紐で調整は出来るはずだ」
「じゃあ、全部まとめて買います」
「おお! 色々とお買い上げ、ありがとうございます!」
エリクの防具も購入したアリアは、再び金貨を一枚を支払う。
そして
「……少し違和感はあるが、すぐ馴染むと思う」
「そう。だったら、次の店を探しましょ。店主さん、それじゃあね」
「ああ! また機会があったら来てくれよな」
高額品を幾つも購入した二人に対して、店主は気分の良い表情と声を見せながら見送る。
しかしエリクが背負う黒い大剣を改めて見つめると、連取は訝し気な様子で呟いた。
「……よく見たら、あの
店主は自身の抱いた考えを否定しながら嘲笑し、そのまま受付に戻る。
そんな様子の店主に気付かない二人は、今度は旅に必要な野営用の天幕、そして消耗品などを扱う店を探し始めた。
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