鞄と服
定期船の乗船手続きを終えたアリアとエリクは、北港町の市場と商店が立ち並ぶ場所まで訪れる。
そして幾つかの商店内を覗きながら何かを探すアリアに、エリクは問い掛けた。
「何を探しているんだ?」
「うーん。旅をする為の背負えるタイプの鞄が売られてる御店と、旅用の服を買える御店。あとは私と貴方用の装備を置いてそうな店に、野営する時に使う旅用のテントとかランプとかある御店。それと消耗品諸々を置いてる雑貨屋かな」
「そ、そんなに行くのか?」
「当たり前よ。二人旅になるんだからそれなりに荷物は必要になるでしょうし、割高だけど港町だからこそ集められる物は集めておいて、あとは一気に移動しちゃう方が良いからね」
「……そうか、分かった」
「あっ、あそこ鞄で売ってるわね。行きましょ」
幾つかの店に行くことを語るアリアに、エリクは何とか理解しようと聞き取る。
そして旅用の丈夫な革鞄を売る店を見つけると、エリクが背負うのに丁度良い茶色で大型の皮革製を購入した。
更に腰に提げる
その支払いとして合計で銀貨三十枚で購入すると、それを身に付けたまま次の店を探しながら話を交えた。
「――……どう? 歩く分にはそのリュック、邪魔じゃない?」
「ああ、それほど邪魔ではない」
「じゃあ、戦闘になるとしたら?」
「……そうだな、相手次第だな」
「弱い相手ならそのまま、強い相手なら脱がなきゃダメか。――……あっ、あそこが服飾店みたいね。行きましょうか」
「ああ」
旅で起きそうな事態を想定する二人は、咄嗟の事態に着けている鞄での動作を確認し合う。
そんな二人が次に見つけたのは、旅用の服も扱う店だった。
店内に入った二人は一通りの服を確認すると、アリアは先にエリクの服を見繕おうとする。
「まずは、
「俺のか? 俺は別に、このままでも……」
「ダメ。旅路中はそのままでもいいけど、宿のある町や首都に寄る時にはある程度、人から見られても怪しまれない程度の服を用意しなくちゃ」
「このままでは、ダメか?」
「ダメ」
「……分かった」
「よろしい」
エリクにも納得させたアリアは、店の中で服を選び始める。
大きめの服を探す為に店主に相談すると、合う大きさの服を持って越させながら何度も何度も着せ替えた。
その中の数着を選ぶと、今度はアリア自身の服を選び始める。
そして店主と話しながら、微妙な面持ちを浮かべた会話を交えた。
「……うーん。ここ、男物の服は多いけど女物の服は少ないわね。……ねぇ、店主さん。女物の旅用の服とか扱っている御店、知ってます?」
「女物の旅行服かぁ。旅する女ってのも少ねぇから、大体どこも似たり寄ったりだと思うよ」
「そっか、そうよね。……じゃあ私も、旅路中は男物の服で良いかな。体のラインも隠せるし」
店主に聞いたアリアは女物の品揃えの薄さを納得し、結論として小柄な服を何着か購入する。
そして幾つかの布地も購入し、旅中に敗れるだろう服の修繕を行う素材も用意した。
そして財布の中に在る金貨一枚を支払って選んだ服を購入しようとすると、店主は僅かな驚きを浮かべる。
しかしその時は何事もなく銀貨数十枚の釣銭を受け取り、二人は店の外へ出た。
そして次に見かけたのは、剣や弓など軽装鎧などを置いている装備店。
アリアはその店を見ながら、隣に立つエリクに問い掛けた。
「貴方の武器は、その
「ああ。あと、胸の短剣は投擲にも使う。……もう、一本しか無いが」
「そういえば、前に投げてたわね。そっちの
「普通の剣だと、すぐ折れる。この
「そっか。なら必要なのは、使えそうな投擲用の短剣とかね。一応、私も剣は使えるから一本だけ買おうかしら。そうすれば貴方が
「そうか。任せる」
「防具も必要よね。貴方の装備、その胸当てだけだし」
「ああ。
「じゃあエリクには、頭を守る兜と篭手を買いましょう。盾とかは必要?」
「盾は要らない。どうしても必要なら、
「そっか。じゃあ、貴方に合いそうな装備を探しましょうか」
「分かった」
そうしてアリアとエリクは話し、装備品が置かれた店へ入る。
エリクはそこで投擲し易い
それからアリアも自分が扱えそうな剣を選び、腰に提げる為に
互いに扱える武器を選び終わった後、二人は防具選びに入った。
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