第4話
「は? 警察が何でここに――」
焦った様子を浮かべる爽やかイケメン。それもそのはず、画面の先では警察手帳を広げた男が立っていたのだ。
その様子を不思議に思ったのか、ボスがインターフォンを確認しに来る。そして、画面先の男を見るなり顔を歪ませ舌打ちをした。
「落ち着け。まだ詐欺のことでここに来ているのか分からないだろ。怪しまれないよう、とりあえず話を聞くんだ」
ボスの指示に、爽やかイケメンは頷くと、インターフォンに出た。
「はい」
『警察の者ですが、お話良いですか?』
「何の話ですか?」
『ここら辺で誘拐事件が発生しましてね。中学生くらいの男の子なんですけど、ここに連れ込まれているのを見たという通報があったんです。家宅捜索の令状も出ているんで、入らせてもらえませんか?』
爽やかイケメンとボスは同時に少年の顔を見る。少年はいたずらっぽく笑っていた。
「このガキ、まさか――」
爽やかイケメンがそう言った時、部屋のドアが開いて、警察が入ってきた。先ほどインターフォンに映っていた男もおり、「あ、鍵は結局オーナーに開けてもらいました」と呑気に笑っている。
ボスは、やられたと言わんばかりに額を押さえた。爽やかイケメンは爽やかさがなくなるほどの眼光で少年を睨んでいる。
「ま、とりあえずは未成年者誘拐の容疑で逮捕。その他のことは後で詳しく調べさせてもらうからね」
警察の男はそう言うと、二人に手錠をかける。爽やかイケメンは「待て、これは合意の上だ。あのガキが勝手についてきたんだよ」と少年を見ながら抵抗する。
しかし、少年は目元へ手を持っていくと、「違うよ。無理やり連れてこられたんだよ。怖かったあ」と泣き始めた。爽やかイケメンは茫然とした様子で少年を見つめる。
「おやおや……これはどういう事でしょう。ま、詳しくは署で聞くから」
警察の男はそう口角を上げると、二人を連れていくよう部下に命令をした。二人は部屋を出るまで少年のことを睨んでいたが、当の少年は全く気にしていないようで、手で目元を押さえている一方、口元にうっすらと笑みを浮かべていた。
二人の姿が部屋の外に消えたのを確認すると、警察の男が少年の名前を呼んだ。
「ヨル」
ヨルと呼ばれた少年は先ほどの嘘泣きをやめ、満面の笑みで警察の男を見る。警察の男は彼の近くへと行き、優しく肩を叩いた。
「お疲れ様。ヨルが書いた手口の紙は後でちゃんと俺が回収しておくから」
警察の男の言葉に、ヨルは満足そうに頷くと、「よろしくね、朝山さん」と無邪気に笑う。そして、ポケットからチョコレートを取り出し、それを美味しそうに食べ始めた。
「また詐欺グループが見つかったら、ヨルに頼むかもしれない。その時はよろしく。無理をしない程度で良いから」
朝山と呼ばれた警察の男の言葉に、ヨルは楽しそうな笑顔を見せる。
「はいはい。また詐欺の手口と、どうやって詐欺グループの中枢に入るか考えておくね」
少年は、嘘を吐く 猫屋 寝子 @kotoraneko
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