第3話

 少年がソラシタ公園のトイレ裏に着くと、そこには先客がいた。

 爽やかな印象を抱かせる、イケメン。少年はまだ誰もいないと思っていたので、驚いてその男に警戒心を抱く。


 その男は一見、犯罪とは無縁そうな好青年だった。しかし、今、この公園のトイレ裏にいるということは、彼が電話で話していた男だという可能性が高い。その一方で、偶然トイレ裏に居合わせた一般人だという可能性も考えられる。

 少年は何も話さず男の行動を待った。もし一般人なら、あの紙を見せるわけにいかない。


 そんな少年の心配は、男の「よお」という第一声で晴らされた。その声が先ほど電話越しに聞いた声と同じであったからだ。

 少年は安堵のため息を吐く。そしてまっすぐ男と向き合うと、小さく頭を下げた。


「初めまして。……これ、例の自作案です」


 少年はそう言うと、ポケットから紙を取り出す。そこには、少年が考えた詐欺の手口がいくつか書かれていた。

 男は黙ってそれを受け取り、中身に目を通す。そして、読み進めていくうちに、その表情が驚きのものに変わっていった。


「これ、本当に君が考えたの?」


 男は読み終えると、第一声にそう尋ねた。少年は「もちろんです」と頷いて答える。

 男は「これは逸材だ……」と呟くと、少年に一緒に来るように言う。少年は満面の笑みを浮かべ、彼の後をついていった。



***


 少年が連れてこられたのは、高級マンションの一室だった。そこにはという言葉よりもという言葉が似合う顔をした男が一人、少年を待っていた。少年をここまで案内してくれた爽やかイケメンとはまた違うタイプのイケメンである。


 ――状況的に、彼がこの組織のボスなのだろうか。まだ断定はできないが、そう仮定して彼のことはと呼ぶことにしよう。


 少年はそう考え、今度は案内してくれた男の呼び名を考える。しかし考えるのが面倒になったのか、彼は案内してくれた男のことを爽やかイケメンと呼ぶことにした。もちろん、二人の男はそんな少年の思考を知るはずもなく、二人で話を進めている。どうやら、爽やかイケメンがボスに先ほど少年から見せてもらった紙を見せているようだ。


「これを見てくれ」


 ボスは何も言わずそれを読む。そして読み終えると、怪しく笑った。


「へえ。教えてくださいって言う割には、よく詐欺の手口としてできているね」


 少年はその感想に嬉しそうな顔をする。


「よし、次はこの手口でいこう」


 ボスが、紙に書かれた一つの案を指さし、爽やかイケメンに言う。爽やかイケメンは頷いて、その案の内容を確認した。


「分かった。それじゃあ早速用意――」


 爽やかイケメンがそう言いかけたとき、誰かの訪問を告げるインターフォンが鳴る。イケメン二人組は顔を見合うと、眉を顰めた。そうしている内に、再びインターフォンが鳴る。

 爽やかイケメンが仕方ない、といった様子でインターフォンを確認した。そしてそこに映りこんだ男に、爽やかイケメンは目を見開かせる。


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