エピローグ
「ねぇねぇ樹さん」
今日も上司が可愛いと心の中で叫びながら名前を呼ぶ。可愛い上司は、最近少し丸くなった。何と言ってもシャーロットに名前で呼ばれても怒らなくなった。本人曰く「言い返すのも疲れた」ということらしいが、細かい理由なんて気にしない。
「好きです。樹さん」
「何度言えばいいの? 私は、」
「だってほら、樹さんに番ができてフェロモンも抑えられたのに、わたしはこんなにもまだ樹さんのこと好きなんですよ」
「はいはい」
仕事の帰り道、シャーロットがお腹空いたと言ったら、食事にも付き合ってくれた。
「これこそ本当の好きじゃないですか? 真実の愛ですよ」
彼女の想いは今も変わらない。
「あんまり言っていると、瑠衣さんに怒られるから」
「一緒に怒られましょーね!」
「何で私も怒られなきゃいけないわけ?」
冷たくあしらってはいるものの、樹の表情は柔らかい。
シャーロットが直接そうさせたわけではないけれど、笑った顔をたくさん見れるようになったんならひとまずはよしとしたい。
「この後ホテル行きましょうよ」
「お断りします」
この想いは偽りじゃなかった。しかし残念なことに二人の想いも偽りじゃなかったようだ。
――まぁ一緒に過ごす時間はわたしの方が長いわけだし。
「大好きです」
と言う度に耳を赤くする人を見続ける毎日もつまらなくはない。
――ずっと一緒にいられたらいいのに。
そう願うのは傲慢なことかもしれない。
ただ、気づいてほしい。彼女のことを愛せるのは一人だけではないということを。
彼女だけが特別ではなく、世界はもっといろんな可能性があるということを。
αとΩの三角関数 汐 ユウ @u_ushio
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