第4話 最終奥義

 ──私たちはそれはそれは

 全力で逃げていた。

 女神のプライドなどもうない。

 そして、走りながら

 私たちは喧嘩をはじめる。


「なにしてんのよおおおおお!!何が俺を信じろ…(ドヤ顔)よ!少しでも信じた私がバカだったわ!!このトマトバカ!!」


「うるせええええ!大体お前ら女神が悪いんだろうがああああ」


 後ろを振り向くと、大魔王サタンが追ってきている。


「逃がさんぞ……無駄な時間を使わせおってええ」


「「ひいいいいいいいいいいい」」


 走りながら、ユウタが尋ねる。


「なんかないのか女神!!」


「だってもうなにも……」


 あ、

 そ、そうだ!


「ユウタ!この緊急事態だから大女神様も許してくれるはず、あなたのレベルを今から

 最大まで上げるわ!

 フェアリープロテクション妖精の加護!」


 先程と同じ妖精が出現し、勇者ユウタに力を与える。


「早くステータスの確認を!」


「わかってるわ!」


 ステータス


ステータス Lv99(max)

 HP 1050

 MP 1023

 攻撃力 1023

 防御力 1050

 素早さ 500

 魔力値 500


 耐性 なし

 特性 なし

 備考 勇敢な性格



 もうステータスには興味がないわ!

 相手はレベル99のSランク勇者3人を返り討ち

 にした化け物!

 こんなステータス値なんてゴミ以下よ!

 潰されてケチャップにされてしまうわ!

 そんなことよりもスキルよスキル!!



「スキルは……あっ何か覚えているわ!!!」


 スキル トメィトゥ

 

 スキル一覧 トマト・カッター


 スキル名 トマト・ケチャップが

解放されました。

 スキル名 トマト・トマトが

解放されました。

 スキル名 最終奥義トマト・ゴットブローが解放されました。



 最終奥義……!!!

 もう、これしかないわ!!!

 だって、他のは弱そうだもの!!

 大体トマト・トマトってなによ!

 あ、ちなみにゴリラの正式名称は、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラと言われているけれど、

 実は、あれはニシローランドゴリラというゴリラの一種の学名で、他にも、ヒガシローランドゴリラとかもいて、その学名は、

 ゴリラベリンゲイグラウアーって

 いうのよ?

 どう? 勉強になったでしょ?

 って今はどうでもいいわそんなこと!!


「ユウタ! 貴方の最終奥義が解放されたわ!

 トマト・ゴットブローと力を込めて大魔王サタンに向けて放つのよ!」


「やってみる!」


 私たちは足を止めて、

 大魔王サタンに向き直った。


「なんだ?命乞いか?」


「命乞いじゃないわ! 私たちは最終奥義を残していたのよ!」


「最終奥義……? 良かろうやってみろ」


「ユウタ! 頼んだわよ!」


「喰らえ!! トマト・ゴットブロー!!!」


 ユウタの前にまた丸ごと一個の

 トマトが出現する。

 そして、今度は鋭い回転を放っている。

 トマトは先程のようにポタッと落ちることはない! 第1段階はクリアよ!!!


「いけ! 頼む!」


 勇者ユウタも願っている。


 まだ鋭い回転を放っていた

 トマトはついに動き出した。

 そして、大魔王サタンの

 顔面にヒットし、弾けた。


「「……」」



 大魔王サタンは、息を吸い込むと

 大声を出した。


「ふざけとんのかあああああああああああああああああ」


「「すいませんでしたああああああ」」


 やっぱ無理だったわ!

 一瞬、これは……?って思ったけど

 ただ、トマトぶつけただけだったもの!!


「終わりだ」


 大魔王サタンは、ペロッと顔に残ったトマトを舐めると、呪文を唱えた。


デッド・パニッシュ悪魔の鉄槌


 目の前には、禍々しい巨大なハンマー。

逃げる隙も与えてくれそうにない。

終わった……今度こそ本当に終わりよ。

 呆気ない人生……いや女神生だったわ!

 絶対死んだら後輩サケノミコを恨んでやるんだからね!!

 きゃあああああああああああ!!


 って、あ、あれ……?

 しかし、大魔王サタンは一向に襲いかかってこない。


「……おい!!!!」


 大魔王サタンがなにやら声を荒げている。


「「はい!!!!!」」


「このトマトはどこで作ったのだ」


「え……作ったというか俺のスキルですけど」


 勇者ユウタが震えながら答える。


「ほぉ……。これは美味い。

 実は我も自家栽培を始めて最近野菜について勉強しているのだが、トマトだけはなかなか上手く出来なくてな……」


 え……? 何言ってるの?

 てか、あんた自家栽培なんかしてるの?

 あの大魔王サタンが?

 えー……意外。

 というより、魔界にも野菜って概念あったのね……。


「決めた……」


 大魔王サタンは何かを決意したらしい。

 やはり、私たちを殺そうというのか。

 恐る恐る勇者ユウタが聞く。


「なにを決めたのでしょうか?」


「……勇者よ、お前と協定を結ぶ。

 このトマトを我に供給し続けるというのなら

 お前とこの世界には一生手を出さないと誓おう。」


 ええええええええええ!!!!

 何を言ってるのこの自家栽培マンは!

 バカなの?

 こんなこと口が裂けても言えないけど!


「結ぶのが結ばんのかどっちだ!!」


「む、む、結びます!!!!」

 勇者ユウタが怯えながら答える。


「よかろう」



♢ ♢ ♢



こうして、大魔王サタンに滅ぼされかけた、村の平和は守られた。

 勇者ユウタとのTMT(トマト)協定によって。そして、大魔王サタンが勇者に敗れたという情報は魔界にも広がり、この勇者が住む世界には、誰一人立ち向かってくる魔物はいなくなった。


 そして、私も世界を救った功績を讃えられ、トマトの女神と

呼ばれるようになり、大変めでたく──


「ないわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


私の汚い大声が、綺麗な世界へと響き渡った。

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どうやら異世界転生を失敗してスキルがトマトになったようです せかけ @sekake

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