君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか  初日の感想

 宣伝なし。

 広告なし。

 キャスト発表もなし。

 パンフレットすら後日販売という、情報封鎖ぶり。

 上映が7月14日だと気付いたのは、先週『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観に行った時。

 そこでようやく、全然全く、これっぽっちも映画の宣伝をしていないと気付いた。

 宮崎駿(監督)と鈴木敏夫(プロデューサー)にしか出来ない、恐るべき荒技なのじゃあ。


 今日(2023年7月14日 金曜日)は、馴染みの映画館(シネプレックスつくば)が会員割引デーなので、ひと月前に有給を取っていました。

 お陰で、公開初日に、朝イチで観に行けた。

 平日の朝イチなのに、観客は四十名を超えておりました。

 普通は数名、俺一人という時もあります。

 流石はジブリ。

 ブランド力が違う。



 ここからはネタバレを含みますので

 未見の方は

 疾く

 疾く

 ページを閉じて下さい







 今回も、引退詐欺でしたね(笑)

 まだ八十二歳でしょ?

 あと三作品はイケる。

 クリント・イーストウッドは九十三歳でも現役だし。

 イケるイケる。

 事前情報が全くないので、色々と憶測して遊んでおりましたが(実は超人機メタルダーの劇場版だとか、宮崎駿版のアオイホノオだとか)、どれもハズレ。

 『千と千尋の神隠し』路線をバージョンアップした、ジュブナイルなカオスファンタジーでした。

 次元と時空を往来出来る建物(城? 要塞?)が出てくるので、宮崎駿版ダークタワーな感じ。

 今までのジブリ作品へのオマージュが込められた描写が散りばめられていて、宮崎駿の集大成という評価が多くなるでしょう。

 

 もう冒頭の火事のシーンからして、今までにない演出が溢れています。

 あの演出を見ただけで、頭にガツンと衝撃が来ますよ。

 炎が、溶ける流れる爆ぜる混ざる食い荒らす、侵食していく。

 もう冒頭だけで、これが最後の作品だなんて、信じなくなった。

 まあ、この二十年、毎度の事だけど(笑)


 主人公・牧眞人が気丈に振る舞って、母・久子の死&疎開&継母・夏子(母の妹、妊娠中)との対面イベントをこなす中、緊張を解すように登場する、お笑い担当たち。

 七人の小型婆さん小隊。

 もう大好きよ。

 ジブリの送り出してきた婆さんキャラが、全て揃ったかのような、贅沢な婆さん小隊。

 この七人の小型婆さん小隊を主役にしたスピンオフ作品、作って欲しいです。

 やってくれなイカな?

 お笑いキャラと見せかけて、戦闘には清掃用具を武器に駆けつけるし。

 若い頃は全員、鬼殺隊で働いていそう。

 特に一人だけ、柱クラスの戦闘力の持ち主もいるし。

 声が柴咲コウなので、おそらくは柴咲柱。

 厭々渋々と眞人に同行したお婆さんが、異世界転生、いや異世界転移したら、戦闘も漁業も一流な上に、転生システムをサポートする重要人物だとか、発想のぶっ飛び方が流石のレジェンド級。

 他の六人も、裏設定が尋常でなさそう。






 あ、くどいようだけど、

 未見の方は、引き返してね。

 ネタバレがあるよ。

 何度も警告させるなよ。

 作品を観ずに、先にここを読み進めるようなアホは、二度と読みに来なくていい。

 そんな無粋な無礼者は、二度と読みに来なくていい。

 作品に敬意を払えないのであれば、俺との縁は、ない。





 菅田将暉を起用して、よくもまあ情報封鎖に成功したな(笑)

 周囲の人間は、誰も気付かなかったの?

 エンドロールが流れるまで、菅田将暉とは気付かなかった。

 木村拓哉にも。

 作品本体に、夢中でしたから(言い訳)

 だって、アオサギの声、絶対に声優さんだと思っていたもの。

 主題歌の情報も、公開当日まで秘匿とか。

 四年前から米津玄師に主題歌をオファーして、度々監督やプロデューサーと会っていたのに、誰もリークしないとは。

 情報管理の為に、ジブリは忍者部隊でも駆使しているのかと妄想してしまう。

 滝沢カレンの口を塞げるとか、相当に凄腕の情報管制官がいるね。



 世界の均衡を保つ、積み木のメタファー。

 哲学に溢れているねえ。

 皮肉に塗れているねえ。

 警句に満ちているねえ。

 どれだけ世界の為だと言っても、悪意を持って積まれた積み木は、世界を穢す。

 で、インコ大王が、これまた分かり易くぶっ壊しちゃったね。

 自信満々に積み木に手を出して、全てを速攻で壊してしまう。

 現実でも、そういう政治家に事欠かないね。

 積み木を手にする資格も能力もないと、理解せずに手を出す輩に、事欠かないね。

 そして、全て壊しておいて、逃げてしまう。

 このシーンが、全ジブリ作品の中で、一番怖い描写かも。



 涙腺にジワジワと

 ジワジワと溜まってくるのよ

 主人公の母親が

「子供の頃、神隠しで姿を消していたけれど、一年後に笑顔で戻って来て、その間の記憶は何も覚えていなかった」

 という伏線。

 あれがラストで爆発しちゃって。

 その場で泣いている人もいた。

 俺は映画館を後にして、車の運転中に、涙腺が決壊しそうになった。

 眞人が未来を教えて警告しても、笑顔で元の時代に戻ってしまう、あの姿。

 火事で命を落とすと言われても、「眞人を産みたいから」と、炎の待つ未来へ。

 戻れば記憶も火を操る能力もなくなると、知っているだろうに。

 未来の我が子の為に、笑顔のまま。

 

 眞人は、記憶を保ったままなのだろう。

 あの本を、大事そうに持ったままなのだから。

 忘れた方が楽だったろうに。

 あの記憶を持ったまま、生きるつもり。

 うん、でもそうするよね。

 俺も、そうしているし。



 初日の初回の感想は、ここまでに。

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九情承太郎の「この映画を勧めるぜ」 九情承太郎 @9jojotaro

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