白状せねば、ならない。
「スガヲノ忍者」を書いて複数の小説投稿サイトで公開する以上。言っておかなければ、ならない事がる。
この作品は、俺の脳内で最も古くから巣食っている作品だ。
中二の頃に、まさに厨二病に罹患して真っ先に思い付いた作品だ。
初めはテーブルトークRPG(ソードワールドRPG)のシナリオだった。
ユーシア、レリー、ティル、シーラ・イリアス、彼らは、その頃から生きている。
これを知るのは、中学時代の同級生数名のみだ。
少しでも俺のシナリオやマスタリングが温くなると、プレイの最中に本棚から「ジョジョの奇妙な冒険」や「ゴッドサイダー」を読んで暇を潰そうとする、厳しいプレイヤー達だ。
ギレアンヌは、そのプレイヤーの一人が演じた魔法使いキャラが元ネタだ。
魔法使いキャラそのものより、プレイヤーの方が、ギレアンヌの元ネタになった。
彼はリアル世界でのチートキャラだった。
昭和の時代に、自室に最新のパソコンを買い与えられた中学生という設定を聞いたら、君はどんなキャラを想像するだろうか?
間違いなく、文系、理学系、オタク系だろう。
だが、彼はどの部活にも興味を示さず、中学時代から気侭に自由だった。
全校生徒が参加するマラソン大会で、陸上部を差し置いて余裕で優勝してしまうような身体能力の持ち主なのに、部活動から自由だった。
校内マラソン大会で優勝を義務付けられた陸上部選手たちの絶望しきった顔は、今でも覚えている。
陸上部の部員たちが、本気で走っても追い抜けないのである。
泣きそうな顔で追われても、迷惑そうな顔をしながら優勝した彼のチートぶりは、忘れようがない。
彼は、どの部活にも入らなかった。
自由な男だと思いたいが、飽きっぽいからだと、俺は思っている。
ギレアンヌは、そういう人物からインスピレーションを得て、生まれた。
話が逸れた。
いや、逸らした。
白状するのは、楽屋ネタではない。
記憶を遡ったら面白かったので、面白くない方向から、逸らした。
サービス精神からではなく、自己防衛だ。
さあ、恥を白状しよう。
「スガヲノ忍者」は、高校時代に漫画で描いた。
出版社にも持ち込んだ。
二度も。
新人賞に応募しましたとも。
二度も。
もちろん、落選。
編集者から「君、落選したけど、光るものがあるね。次の作品、待っているよ」という電話は来なかった。
諦めました、漫画家への道を。
現実を思い知りました。
厨二病患者には、よくある事です。
次はアニメ化です。
アニメの制作会社に就職しました。
懐に「スガヲノ忍者」の企画書を抱えつつ、流石にオリジナルは通るまいと思い、SF小説「ノーストリリア」をアニメ化したいと、面接でぶち上げたらウケてしまい、就職しました。
アニメ会社に、制作進行見習いとして。
もう、天下を取るルートが見えましたね。
安心して、仕事をしながら(覚えながら)「スガヲノ忍者」の制作を個人で勝手に始めました。
一ヶ月でクビになりました。
新人のくせに、制作進行の仕事をロクに覚えずに、作品のネームやコンテを描いて時間を潰そうとする馬鹿野郎に、プロデューサーが一ヶ月でキレました。
うん、客観的に見て、俺でもキレる。
最初で最後のアニメ会社からの月給は、十万円でした。時給で換算すると、五百円。
よく覚えている。
初めての給料で買ったのは、椎名へきるの「目を覚ませ、男なら」
1996年4月1日。発売日に買いました。
雨上がりの曇天の日でした。
死ぬほど覚えとるわい。
さあ、恥を晒すウォーミングアップは、整った。
ここまでが、準備運動。
もう自分の作品を表現する方法は、小説だけになりました。
「スガヲノ忍者」は、小説でしか表現できない。
覚悟完了。
当方に、執筆の用意あり。
一周回って、中学生時代になろうと思っていた作家へ。
書きまくりましたとも。
警備会社に勤務して生活費を稼ぎながら、半年に長編一本のペースで、書き上げました。
電撃ゲーム小説大賞や、ファンタジア長編小説大賞に、送りまくりました。一回目から、ずっと。
落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した
一次選考も通過せず、
編集者からの興味も引かず、
落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した落選した
ああ、一回だけ、一言だけ、コメントを、星海社の編集者からもらった。
応募したら必ず一言だけコメントするという義理で、一言だけ。
「いろんな方向に書き散らされていて、何を楽しめばいいのか分かりません」
ああ、そうかい。
悪かったね。
そんな低評価をされて、俺は「スガヲノ忍者」を封印した。
他の作品に、違う作風に、異なるジャンルに、誰も挑戦しないようなニッチな作品の執筆に挑んだ。
つーか、小説大賞への応募を辞めて、小説投稿サイトから発表を開始。
編集者しか読まない作品なんて、もう書かない。
馬鹿馬鹿しいだろ、そんなルーティーン。
警備会社を退職し、フリーになった時間で、書きまくった。
カクヨムで「鬼面の忍者」を皮切りに、様々な作品を発表し始めた。
どの作品にも、「スガヲノ忍者」で封印されて燻っていたキャラが、素性を変えて登場した。
作者が諦めようと挫けようと、忍び込んで暴れてくれた。
イリヤもサラサもユーシアもリップも、シーラ・イリアスもティルもアルディアも、ボンクラの作者を追い越して、他の世界で暴れてくれた。
もういい。
よく分かった。
よく理解した。
「スガヲノ忍者」が、俺の本命だ。
この本命を、小説投稿サイトを通じて、叩き込む。
七月七日に、
君に、叩き込む。
俺の本命を、叩き込む。
逃しはしない。
悪いが、君の退屈を破壊する。