第11話
話し合いの結果、西吉と兼政、先川原と成岡がそれぞれタッグになって行動することになった。聞き込みは、先川原と成岡が商店街を、そして西吉と兼政が商店街以外の大きな商店を回ることになり、話し合いを終えたときには門限まで残り2時間しか残っていなかったので4人は急いで聞き込みの場所に向かった。
西吉と兼政のタッグは初っ端に入った文具店でアクシデントに見舞われた。
「よう。新聞部ペア。」
と声を掛けてきたのは2人が第一高校に訪れたときに会ったガタイの良い先輩だった。
「取材は上手くいっているのか?」
「いえ、探していた方からは取材を受けられなさそうでして……」
西吉は先輩と話しながら考える。ここで幼馴染を探しているのだと話したとしても、特徴を聞かれればボロが出る。しかし、高校からほど近いこの文具店に、こんな遅い時間に来るのには理由が必要だろう。考えてみると、2人で来ているというのも妙だ。
と、言葉が滞ったところで兼政から助け舟が入る。
「俺ら2人で一緒に試験勉強しようと思ってたんですけど、図形問題で使う定規が無かったんで買いに来たんです。」
先輩は訝しげな顔をする。ガタイが良く、勉強よりスポーツの方が好きそうな人だという印象を西吉は抱いていたが、先輩は白い目をしている、つまり生まれつき頭が切れるはずの白の魔法使いであることを今更になって認識する。
「お前ら今まで寮で勉強していたのか?」
西吉は質問の意図を読もうとして、リアクションが遅れる。一方で兼政は深く考えず適当に返事をする。
「はい。」
「寮によっては、門限になっても寮生が帰らないと担任に話が行くらしいから気をつけろよ。」
「なるほど。そこまでは考えてなかったです。忠告ありがとうございます。」
兼政が答えるとほぼ同時に先輩は白い目を光らせ、口を三日月型に歪める。
「すまん、返事を忘れちまったんだが、お前ら今まで寮で勉強してたんだっけ?」
さすがの兼政も先輩のその顔を見て何かがおかしいと気付く。
「それで、門限になったから帰ろうという発想も持ち合わせてなかったんだよな。」
西吉は額を抑えて天井を仰ぐ。
「なら何で、お前らは学生鞄を背負っているんだ?」
先輩の言葉に兼政があからさまに動揺する。そんな2人を見つめて先輩が歯を見せて笑う。
「ガハハ。実は取材されたときに協力してやろうと思ってな、第二高校の新聞部に連絡したんだよ。そしたらな、そんな企画は立てていないって言われてよ。笑えるよな。」
西吉と兼政は、何が笑えるんだと言わんばかりにムスッとした顔をしている。
先輩は2人の顔を見てさらに笑う。
「そんな顔すんなよ。俺は別に味方でも敵でもねえ。場合によっては協力してやる気もあるんだぜ。ただし、お前らが嘘をつかなければな。」
西吉と兼政は顔を見合わせる。実は青と緑の魔法使いは幼馴染だったのだと伝えれば嘘になるし、行方不明になった友達を探す手掛かりなんだと伝えたら、そういうのは警察に任せるのが一番なんだ等と言われ、場合によっては担任に連絡される可能性もある。
西吉は深く思考を巡らした後、先輩の優しさを信じて答えを返す。
「今は、事情を言えません。ただ、犯罪や悪いことをするつもりはありません。だからこのことは誰にも言わないでください。お願いします。」
頭を下げる西吉に対して、先輩は困った顔をする。
「青と緑の魔法使いのことはもう話しちまったよ。」
西吉は顔を上げ、目を見開く。
「誰にですか?」
「クラスメイトの中野ってやつだよ。ほら、俺って元来口の硬い性格じゃないからよ、青と緑の魔法使いを探してる怪しい2人組がいるって話をしちまった。」
西吉は溜息をつく。中野という人間がどんな人間かは知らないが、細坪と卯辰の失踪に関わっている可能性は限りなくゼロに等しいだろうと西吉は考えることにした。
「そのくらいなら構いません。これからは言わないと約束して頂けませんか?」
「善処するぜ。」
先輩の曖昧な答えにがっかりしながら西吉は兼政を促し、店を出た。
◇
そしてその頃、先川原と成岡は商店街入口付近の肉屋から重要な手掛かりを得る。
「緑と青の目の
肉屋のおばちゃんの思い出トークを話半分に聞きながら、卯辰についての詳しい話をどうやって引き出そうかと2人は静かに考えた。
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