厩戸
「では、こちらの方は
「そういうことです。ごめんなさいね、ややこしいことになってしまって」
一方、
詫びの品を渡したいとまで言われたものの、皇族に謝られるほどの身分ではない。慌てて遠慮したのだが、彼は「いいからいいから」と言って取り合ってくれなかった。
「難波皇子さまは昔からそうなのです。やけに人懐っこいのですよ。せっかくですし、お礼は貰っておいたらどうでしょう」
「おいおい犬みたいに言うな。人付き合いが良いって言え」
「相手が困惑しているのなら距離を置くのもまた人付き合いの力です」
水をひと口飲んだ厩戸に、難波は「はいはい」と肩をすくめる。続けて止利の方に顔を向けると「なかなか可愛くないだろ? こいつ」と苦笑してみせた。
「ふふ、大人びすぎているのですよ
調子麻呂が空になった止利の器に水を注ぐ。難波が「そうそう!」と笑った。
「確かに年相応なところも見かけるけどな。時たま驚くようなことを言う。まるで世の中を分かりきってるかのような口をきくんだ」
「何も分かっておりませんよ、私は」
「いやいやいや、どうだかな。まだ十一なのに達観してる」
「えっ!? じゅっ、じゅ」
慌てて口を塞ぐ。想像していたより幼かったものだから杯を落としそうになった。
「大人っぽく見えるだろ。こいつ」
「てっきり十五歳は過ぎているものだと······」
「背が高いからでしょう、私は。
「ああ、大臣は背が低いからな。この間も
「最近仲が悪いんですよねぇ、お二人は。前はそれほどでも無かったのですが」
皇子二人がそんな話をし始めたが、たかだか
「よろしければ、皇子さまの馬を見てみませんか? 政治の話はお二人に任せましょう」
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