想いはダイレクトにストレートに
「なんだこれ」
高木くんから謎の動画を見せられて、僕は頭が混乱していた。
始終男性がハードボイルド風に撮影されているように見えるけど、僕が見る限りかなり滑っている印象を受けた。
「伯父さんが作った店の宣伝プロモーションなんだ。凄いでしょ」
高木くんは目をキラキラさせていた。言いづらい、滑っているよだなんて、とても、言いづらい。そんな思いが顔に出ていたのか、
「なんだか、渋い顔してるけど、いいんだよ、正直にいって。滑ってるって」
「うっ……」
高木くんの優しい笑みがとても僕の良心を痛める。
「す、滑ってるかなぁ……」
僕は小声で本音を漏らす。
「だよね! 俺も滑ってるって伯父さんに言ったら、伯父さんマジ凹みしちゃってさー。涙流してたよ」
高木くんはそうはっきりと言って笑う。あー、高木くんは思うことをダイレクトに伝えるタイプだったかー。
「ま、でも伯父さんは打たれづよいらしいから、大丈夫でしょう。ところで、ゆうやんに少々頼みことがあってだね」
「ん? 頼み事?」
僕は首を傾げる。
「そうそう。前に伯父さんがどうしても会いたがっていたって言ってたじゃん? 次の日曜日に話が出来ないかって言われちゃってね。まぁ、ゆうやんの予定が空いていればっていう話なんだけど、どうかな?」
「話?」
「摩訶不思議体験談がどうしても聞きたいみたいなんだ、ゆうやんの都合に合わせるけど、どうかな?」
「別に大丈夫だけど?」
日曜は休みだし、特に出かける用事も無かった。まぁ、行くとしても本屋かマスターのいる喫茶店くらいだけども。
「ありがとう。伯父さんも喜ぶと思うよー。で、何時に何処で待ち合わせする?」
「時間と場所かぁ……」
待ち合わせに適した場所……、そうだ。
「学校から通りを抜けた先に喫茶GrowSeedっていう店があるだろ?」
「うん、行った事一度も無いけど、あるね」
「あそこにしない? 時間はそうだなぁ14時くらいで」
「わかった。伯父さんにも伝えておくよ。ごめんねー伯父さんのわがままにつき合わせるような感じになって」
次の日の日曜日。僕は予定時刻に間に合うように喫茶店へと入り、高木くんたちが来るのを待っていた。
「裕也くんにもお友達がいたのですねぇ」
マスターが何気に酷いことを言ってくるのは無視しておこう。
そろそろ約束の14時だ。
すると、ドアベルがカランカランと音を立てる。
「ゆうやん、やっほー! 伯父さん連れてきたよー」
カジュアルシャツ姿の高木くんが店の中へと入って来る。その後ろには件の動画で見たことのある男性が居た。
「伯父さん、話してたゆうやんがコイツだよー。ゆうやん、こっちが伯父さんの高木実靖おじさん」
「よ、よろしくです」
「どうも、あえて光栄だよ」
実靖さんから手を差し伸べられ、握手を交わす。
「まぁ、立ち話もなんですし、なんか頼んじゃってください」
「おっ、そうすることにし……あーーーーーーー!!!!」
いきなり耳をつんざくような実靖さんの叫びが聞こえた。
「お、お前が、なんでここにっ!!!!」
指をプルプルと震えさせて指差す先には……、
怪しく微笑むマスターがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます