聞き流しは時に必殺技にもなりえる

「実靖おじさん、この映像一体何?」

 ソファで寝転がってくつろいでいる少年が映像に写っていた男性本人に話しかける。

「新しく作ったプロモーション動画だー。どうだ上手く撮れているだろ?」

 映像の本人、高木実靖はドヤ顔で少年に答える。

「うーん、上手く撮れているというか完璧に滑っているね。読書なんてからっきしダメなくせに……。というかこれで依頼が増えたらみんなのセンスを疑うよ」

「甥っ子にあるまじき容赦ない指摘が胸に刺さるぜ……」

 実靖は胸に手を当ててほろりとする。

「そういえば、例の友達の話はどうなったんだ?」

「ゆうやんのこと? なんかなんとか自己解決したって話だったけど、一応実靖おじさんが会いたがっていたよっていうことは伝えたよ?」

「そうか、無事に解決したのかー。それは良かった。まだ解決出来そうになかったらお役に立とうかと思ったのだがね」

「そういって、仕事にしようとしてたでしょ?」

 少年の指摘に実靖はギクッとした態度を取る。

「い、いやぁ、そんなことないよ。私はただ、甥っ子の友達の力になろうと思って」

「そう言って、俺の依頼にも容赦なく依頼料を巻き上げてくる親族はどこのだれだっけ?」

「はい、仕事にしようとしてました。すいません。でもなぁ、この世界は常に危険と隣り合わせなんだぞ。いつ何時裏社会からの魔の手が迫ってくるか分からないからな」

「裏社会ってマフィアとかそんなやつ? まさかぁ、俺たちは一般人だよ? そんな怖い人たちに狙われるとか……ないない」

 実靖の言葉を冗談ととって笑い出す少年。

「お前の考えているような裏社会とはちょっと違うんだなぁー、これが」

「ふーん。それはまるで、その裏社会を知っているような口ぶりだね? おじさん」

 少年はテーブルに置かれていたアイスティーをストローですすって飲む。

「まぁな。あそこには悪友もいるし、嫌でも情報が入って来るわけよ。なんてったって、私は超有能な何でも屋だからなっ!!」

「はいはい、そんな有能な何でも屋のおじさんをもてて俺は幸せ者ですよっと」

 少年はやる気の無い返事を返した。

「ということで、甥っ子に頼みごとがあるんだが」

「何?」

 実靖はニヤニヤとした表情で少年を見る。

「今度の日曜。その友達というヤツに会わせてくれないか? 場所はそっちで指定して構わないから」

「いいよ。その代わり条件がある」

「いいだろう」

 少年は交換条件を持ち出し、実靖はソレを了承する。

「この映像もゆうやんにみせるからねー。おじさんがどんなキャラか知ってもらう為に」

 少年はいたずらっぽい笑みをしてみせた。

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