いつの間にか誰かから買わされる

 うねうねとした白い物体は扉の隙間からどんどん進入してきて、僕たちの周りに集まってくる。

「これは、式神の一種だな。低級だが、数を打てば当たるといったところだろう」

 影山さんは僕を後ろでかばうような動作をしながらそう告げる。

「やはり私ごと始末する算段だったらしいな。通りでこんな少年一人だけでアレだけの大金を払うとか大口叩いていたわけだ」

「一体全体、何がどうなっているか僕には全く分からないんですけど、説明を出来ればお願いできますか?」

 状況がまるで読み込めてない僕は、影山さんに説明を求める。

「こんな状況に君がなっているのは、君が“裏社会”の一部を敵に回したからだ」

 裏……社会? なんか文字の響き的に危ない感じがプンプンするんですけど!?

「そ、そ、そんな、危ないおじさんたちが居るようなところに喧嘩を売った覚えはないんですど。僕!」

「危ないおじさん……?」

 僕の言葉に影山さんは少々首を傾げる。

「あー、どうやら君が思っている裏社会というのは、違う界隈のことだろう」

「違う界隈?」

 え? 裏社会にも界隈が存在するの?

「私が言っている裏社会とは、いわゆる異種格闘技みたいな感じだ」

「異種格闘技?」

「そう。魔道士もいれば猛獣使い、霊能者や科学者、私みたいな暗殺者や爆弾魔、破壊神だっている」

 後半、モロに僕が思っている危ない裏社会のメンバーじゃないですか。とはあえて口に出せない。

「そういう奴らが巣くっているのが裏社会なんだ。その裏社会には一人の首領が居てね。その首領が強靭な力で裏社会を取り仕切っているといっても過言ではない。君が命を狙われている理由がそれだ」

「僕と首領に一体どんな関係性があるっていうんですか?」

「先ほど写真のデータを見せただろ?」

「はい。僕が助けてあげたおばあさんの画像ですよね?」

 影山さんから見せられたおばあさんの画像を思い出す。

「あれが、裏社会の首領。エーデルワイスだ」

「あー、裏社会の首領……って……」

 えーーーーーーー!!!! 僕はそんな人を助けてしまったの!!

「なんで、そんなすごい首領を助けてあげたのに、僕は命を狙われなきゃいけないんですか!」

 そうだ、そんな裏社会をまとめるトップの命を救ったのに、何故僕は命を狙われないといけないんだろう。

「よくある話だが、そんな首領の存在を快く思っていない奴らが少なからずいるんだ。奴らはそんな首領を亡き者にしようとこの表で暗殺計画を企てた。表ではあまりド派手なことは出来ないのを逆手に取ってね。しかし、ソレを君が阻止をした。だから君も消すということを考え付いたのだろう」

 どうやら僕はお人よしに人助けをして反感をいつの間にか買ってしまったらしい。もう!そんな!わかりやすい!暗殺の!仕方!なんて!しないで!欲しい!

 いや、暗殺なんてそもそも駄目なことなんだけども。

 そう言っている間にも得体の知れない物体はどんどん僕たちの周りを取り囲って、逃げ道を塞いでいく。これじゃ、帰るに帰れない。

「一体、どうすればいいんだー!!」

「なら、私と契約するか?」

「え?」

 だんだん自棄になってきた僕に影山さんはとんでもない提案をしてきたのだった。

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