愚者の魂

 私は愚か者です。

 

 学が無く、知恵も無いです。

 浅慮で、他者を冒涜する事しか知りません。

 瞳は悪意しか映しません。

 口を開けば、息を吐く様に他者を嬲ります。

 他者に寄生し、生を貪っています。

 自らの手で何もなさずに、他者を貶めています。

 おおよそ集団には馴染めずに、孤高を気取っているだけです。

 そのくせ、陰鬱に耐え切れず、また他者を甚振るんです。


 私は害悪です。


 何の益も生み出しません、しかし存在し続ける事で、様々なものに苦痛を与えます。

 目的もなく、漫然と命を冒涜しているのです。

 生きる目的が無ければ、死ぬことが許されません。

 自ら生まれた事を呪い、また存在している事を呪われています。

 

 私は人の形をした、得体の知れない何かです。

 唯一出来る事が有るとすれば、覆轍であらんとする事だけです。

 ですが私を見て、我が身を正そうと思う者が存在するでしょうか。

 それ程に人間が賢いならば、私という存在は既に消滅して然るべきでしょう。


 人は六道という世界で、業を背負い生きる事を義務付けられます。

 ならば私には地獄は勿体ない、餓鬼では生ぬるい。畜生では心の安寧を齎すだけ、修羅でもまだ足りない。ましてや人間や天上など、以ての外です。


 私は、ここに存在し続けています。

 そして私の存在は、全ての人を不幸にします。

 その私を放置し続けた人類は、既に堕落しているのでしょうか?

 それとも、私の様な存在にすら、無関心なのでしょうか?


 何故、人間は私を消去しないのでしょう。

 それは、倫理という欺瞞でしか有りません。

 世界の平和を求めるのなら、私は抹消されるべきでしょう。

 二度と蘇らない様に、徹底的に。


 私は愚か者です。

 ですが私はこれ以上、誰かに害を与える事を望みません。

 世界は、正しい選択を行うべきです。

 愚か者に、正義の鉄槌を。

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愚者の証明 東郷 珠 @tama69

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