第5話 相談員呪われる

「さて、これで機能しますよ」


ルイスは魔方陣の修復を終えると、腰を伸ばした。

馬に5日乗りっぱなしで、その後の数時間に渡る雪山登山の後だ。疲れが溜まっていた。


「ルイスさん、それで、タイロス様のことですが」


スパイルが手持ちぶさたに指をくるくる回しながら言った。


「ああ、そうですね。一度、治療師ドクターに見ていただきましょうか。今日のところはこれにて失礼しますよ」


ルイスは王宮に帰ってから報告がたくさんあることを頭の中で整理していた。


まず、話の一部分しか記憶していない様子で、怒りっぽい。衣類にも頓着せず、寝巻きのズボンが汚れているのは小便が上手く処理できないからだろう。

身の回りのことは上手くできないようだ。あの痩せかただと食事も取れていないだろう。


「スパイルさん、タイロス殿は食事は?」


「あまり取りたがらないですね。それよりも部屋に引きこもって本を読んだり、誰もいないのに一人で話していることが多いです」


やはりか。とルイスは思った。

これは早急に対応するのが良いだろうとルイスの中では療養所に入所の方向で考えていた。


「こいつめ!まだ居たのか!」


不意に部屋にタイロスが入ってきた。


「ワシの本を取る気だろう!お前なんか、こうしてやる!」


タイロスが呪文の動作に入った。


「いけない!ルイスさん逃げて!! 」


ルイスは言われるまでもなく、修復したばかりの魔方陣へと逃げ込んだ。


「スパイルさん、また、来ます!」


魔法扉ポータルが起動するのと、タイロスの呪文が完成するのは同時だった。


光に包まれて、一歩踏み出すと、ルイスはマールベルグ王国の王宮の一室に移動していた。


赤い絨毯が敷き詰められた王宮の一階にある場所だ。


「ふう」


ルイスはため息をつき、大変な一週間だったな、と頭を掻くと、手に違和感を感じた。


「!?これは……」


ルイスの手に、髪の毛がごっそりと抜け落ちて、まとわりついていた。


ハゲバルドネスの呪いだ。

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王立療養所~大賢者は認知症~ ghostwriter @ningensakkaku

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