第15話 双方が為に



美音  (何も考えずに来てしまった・・・・・)


「コンコン」


明母  「どうぞー」


美音  「失礼します」


明母  「あら~美音さん来てくれたの?」


美音  「いきなりで申し訳ありません」


明母  「いいのよ~美音さんは娘なんですからそんなこと気にしないで」


美音  「ありがとうございます」


明母  「あれ?一人?」


美音  「あ・・・きょ、今日は一人で来ました」


明母  「・・・・そう、ま、そんなとこ立ってないでこっち座りなさいな」


美音  「はい」


明母  「本当にうれしいわ~美音さんが一人でも来てくれて」


美音  「・・・・・・良かったです」


明母  「・・・・・」


明母  「それで・・明と何かあったの?」


美音  「・・・いえ、いつも通りで変わりありません」


明母  「なら良いんだけど、美音さん何か私に話があってきたんじゃない?」


美音  「・・・・・いえ」


明母  「私ね、入院生活が長いから人の表情でだいたいのことはわかるのよ?」


美音  「え・・・そ、そうなんですか・・」


明母  「嘘笑」


美音  「・・・・・」


明母  「明はどう?迷惑とかかけてない?あの子ふわっとしてるでしょ?

     だから心配なのよ笑」


美音  「いえ、明さんには良くしてもらってます」


明母  「何か不満があったら言ってね、私からガツンと言ってあげるから」


美音  「・・・・・・」


美音  「お、お義母さんあの・・」


明母  「無理に今じゃなくても良いのよ?」


美音  「え?」


明母  「そんな深刻な顔してるんですもの私に言いづらいことでも

     あるんでしょ?」


美音  「・・・・はぃ」


美音  「でも・・今言わないと・・私が後悔してしまいそうで・・それに」


美音  「・・・お義母さんに聞きたい事もありまして」


明母  「聞きたい事?」


美音  「はぃ、初めて挨拶させていただいた時の帰り際」


美音  「あまり無理しないように・・と言われたのが気になりまして」


明母  「・・・・・」


美音  「私、無理してるように見えましたか?」


明母  「あら、そんなこと気にしてたのね」


美音  「・・・・・・」


明母  「特に深い意味で言った訳じゃないのよ」


明母  「ただ・・心底、結婚して幸せって感じには見えなかったの」


美音  「!!」


明母  「ごめんなさいね、親としてこんなこと言ってしまって」


美音  「・・・いえ」


明母  「ただ、あなたの悩みや、質問は真剣に、そして正直に答えたい」


美音  「・・・・・お義母さんに全てお話しします、本当の事を」




~美音は全てを明母に伝える~




明母  「・・・・・・」


美音  「ごめんなさい・・・」


明母  「うふふ~あははは」


美音  「え?」


明母  「まるでドラマのようなおもしろいお話ね!」


美音  「・・・これが真実です」


明母  「そう~、その話に明がのっかったのね笑」


美音  「・・・・・はぃ」


明母  「あの子らしいわ~うふふ」


美音  「お、怒らないのですか?」


明母  「怒らないわよ~二人で決めた事なんでしょうし」


美音  「・・・・・・」


明母  「それに、自分たちの為って言ってたけど、あなたのご両親や私たちに

     心配かけまいとしてやったことでもあるんでしょうから」


美音  「そ・・それは・・ま・・まぁ」


明母  「それで?」


美音  「え?」

明母  「黙っている事への罪悪感だけでここに来ただけじゃない様に

     見えるのよね・・・」


美音  「・・・・・・はぃ」


美音  「明さんへの気持ち・・・・偽りの夫婦・・・」


美音  「いえ、曖昧な言葉はやめます」


美音  「明さんと接していくうちに、本気で彼に惹かれました」


明母  「・・・・・」


美音  「このことをなぜお義母さんにお話ししたくなったのか自分でも

     わかりません」


美音  「でも、あの時のお義母さんの言葉・・・・」


美音  「今、この関係に対して私、無理してる・・・偽りはもう嫌だと・・・」


明母  「あなたはどうしたいの?」


美音  「・・・明さんの本当の特別になりたいです」


明母  「ならそうなれるように行動なさい」


明母  「あなたが今までどのように生きてきたか私にはわからないけれど

     明と出会って正直な気持ちをさらけだしたんですもの、頭で考えないで

     本能のままでいんじゃないかしら?」


美音  「お義母さん・・」


明母  「やらないで後悔するよりやって後悔したほうがかっこいいでしょ?笑」


美音  「はい・・・ありがとうございます」


明母  「明には内緒にしておくからまた一人で来てお話きかせてね!」


美音  「はぃ!」


美音  (お義母さんに話してよかった・・・・)



    (・・・・・・・・よし)




~美音会社~





京子  「美音~おひ」


美音  「京子、お昼行きましょ」


京子  「あ、う、うん」


京子  (どうしたんだろう・・・なんか・・あるわね)


美音  「京子にお願いがあるの」


京子  「めずらしいわね」


美音  「京子の言ってた通り・・明さんとこのままの状況を続けていくことが

     つらくなったの」


京子  「・・・・それで」


美音  「だから・・・この関係をやめようと思う」


京子  「え?でもあんたそれでいいの?」


美音  「うん、もういい」


京子  「それで私にお願いとは?」




京子  「わかった、でも本当にそれでいいのね?」


美音  「うん」


京子  「了解・・・」


美音  「ごめんね、こんな事頼んで」


京子  「いいってことよ、これでもあんたのこと親友だと思ってるんだからね」


美音  「京子・・・ありがとぅ」



(ピローン)



明   (美音さんからだ)


美音  (明日、仕事終わりお時間ありませんか?お話したい事があります)


明   (また何かの打ち合わせが必要になったのかな?了解ですっと)


明   (最近、頻繁に会えてうれしいな・・・美音さんは・・・・

     どう思ってるんだろう・・)


美音  (・・・・・・・・・・・・)





~ファミレスにて~





明   「お待たせしましたすみません、ちょっと遅れてしまって」


美音  「いえ」


明   「今日はどうしたんですか?また何か打ち合わせが必要なことでも

     あったんですか?」


美音  「・・・・・・・・」


美音  「明さんとのこの関係終わりにしたいんです」


明   「え???」


美音  「私から提案して、明さんのご家族まで巻き込んでしまって本当に

     申し訳ないと思ってます」


明   (な・・・なんで)


美音  「私の勝手な言動で明さんに迷惑かけるこになって本当にごめんなさい」


明   (う・・うそ・・だろ・・・)


明   「あ、あの、なぜ急に」


美音  「・・・・・・ごめんなさい」


明   「だ・・だれか好きな人が出来たとか・・・ですか?」


美音  「・・・・・・」


美音  「私はこれで・・・」


明   「あ、ちょ、ちょっと待って・・・」


明   (そんな・・・・・いきなりすぎるよ・・・)





~明帰宅後~





(・・・・ガチャ)


ハラミ 「ミヤァァァ~~」


たらこ 「ミヤァァァ~~」


明   「ただぃま・・・」


明   「二人とも・・・ごめんな・・俺、美音さんに振られちゃったよ」


ハラミ 「ミアァ?」


明   「振られるもなにも、そもそもそんな関係ではなかったってことだよな」


明   「自分でもここまでショックを受けるなんて・・・思わなかった・・・」


たらこ 「ミアァ~ァ」


明   「・・・・・・・・・・」





~次の日~





同僚B 「よう!幸せいっぱいの御手洗君じゃねーか」


明   「・・・あぁ」


同僚B 「なんだなんだ~そんな凹んだ顔しやがって」


明   「あ、いや・・・なんでもないよ」


同僚B 「なんかあったら相談しろよ!先に結婚した先輩が夫婦円満の秘訣を

   おしえてあるからよ!」


明   「ああ・・そうだな」


明   (なんかまだあいつに報告する気にならないや・・)


(ピローン)


明   「・・・・京子さんからだ)


京子  「元気~今日さ暇?飲みにいこーぜ!)


明   (美音さんからは聞いてるはずだし気を使ってくれたのかな・・・)





~居酒屋にて~





京子  「遅いぞー」


明   「あぁ・・すみません」


京子  (相当ダメージでかそうだな・・・)


京子  「とりあえず生とおかわりくださ~い」



明   「美音さんから話聞きましたか?」


京子  「あぁ・・聞いたよいきなりで明もびっくりしたでしょ」


明   「・・・・まぁ」


明   「俺、なんかしたのかな・・・・」


京子  「明は何も悪くない、ただ・・・」


明   「ただ?」


京子  「あの子が不器用なだけ・・・・かな」


明   「京子さんは事情知ってるんですよね?」


京子  「え!?」


明   「教えてください・・誰か好きな人が出来たとかですか?」


京子  「ま・・・まぁ詳しくは私も知らないのよ・・」


明   「そうですか」


京子  「まぁさ、結局のところ偽りは偽りってことよ」


明   「・・・・」


京子  「これで明もまた独り身なんだから良い人見つけなよ」


明   「もともとそんな気はないし、特に今は考えられないかな」


京子  「美音に本気になってたってことだね」


明   「・・・・・・・ですね」


京子  「私なんかどう?結構尽くすタイプよ」


明   「気を使ってくれてありがとう」


京子  (結構本気で言ったつもりなんだけどな・・・・)


明   「これ・・・・美音さんに渡しておいてくれますか?」


京子  (離婚届け・・・)


明   「僕のは書いておきました、提出は美音さんにお願いすることになって

     しまいますが」


京子  「・・・わかった、渡しておくわね」


明   「お願いします」


京子  「ところでさ、明、美音と出会ったイベントあったじゃん?」

明   「はぃ・・・それがなにか?」


京子  「わ、私も一回行ってみたいんだけどさ、一人だと勇気がいるのよ」


京子  「だから、明一緒にいってくれない?」


明   「いま・・・とてもそんな気分じゃないんだけど・・・」


京子  「気分転換よ!いいじゃない、一回くらい付き合てくれても」


明   「・・・・ん~わかりましたよ」


京子  「よっしゃ、じゃー次の出会いイベント日よろしくね!」


明   「了解・・・・」





~イベント当日~





京子  「ひえぇ~結構人来てるのね~」


明   「前に来た時より多いかもしれない・・・」


京子  「私もここで運命の人と出会うことになるのかも~」


明   「だといいですね~」


京子  「なんだよ~明もせっかく来たんだから楽しみなさいよ」


明   「あ・・あははぁ・・・」


明   「この後、1対1での10分間フリータイムがあってそこで色々

     お話するんですよ」


京子  「へぇ~なんか緊張するわね」


明   「京子さんでも緊張するんですね」


京子  「あんたね、私をなんだと思ってるのよこれでも純な乙女なのよ」


明   「そうでしたか笑、でも京子さんならみんなアタックしてきますよ」


明   「ほら、何人かこっちみてます京子さんを見てるんですよ」


京子  「あら~~なんか目線が怖い・・・」


明   「そろそろはじまりますね、僕はこっちなんでがんばってください!」


京子  「了解、あんたもね・・・・」




イベ女1「お仕事は何されてるんですかぁ~?」

    「結婚って幸せな気分にさせる言葉ですよね~~」


明   「あ・・・あははぁ・・・」

    (一度味わってるとはいえ、やっぱりこの雰囲気無理だ~)


司会者 「では皆さん10分たったので席替えタイムでーす」


イベ女2「やっぱり結婚って~憧れますよね!綺麗なウェディングドレス着て~」

イベ女2「素敵な家庭を築いて~」

イベ女2「いつまでイチャイチャしたいですぅぅ~~」


明   「そ、そうですね・・」

    (ってかこの人、前の時も居たよな・・・・)

    (京子さんは大丈夫かな)


イベ男1「な~んて素敵な女性なんだ、運命を感じました!お付き合いして

     いただけませんか~?」


京子  「いや、無理ってかあんたに運命を1ミリも感じないんだけど」


イベ男2「あ・あ・あ・あ・ああの・・・趣味はなんですか?僕は・・

     映画鑑賞とか・・・・」


京子  「あんた映画鑑賞とか嘘でしょ、そんな女性寄りな話無理にしないで

     本当の自分出しなよ、そーいう所に女は惹かれたりするもんよ」


イベ男3「うひぉ~ちょーまぶいっすね!俺なんかどっすか??」


京子  「はぁ??とりあえずそこの池の鯉、飲み込んでこいや」



明   (あはは・・・さすがだな)


明   (やっぱりここの雰囲気は合わないな、京子さんいには悪いけど次の人で

     帰らせてもらおう・・)


女   「・・・・・はじめまして」


明   「え?!!・・・なぜ・・・」


女   「趣味は最近バッティングセンターとマンガにはまってます」


明   「あ・・・・・あ・・・」


女   「好きな食べ物はカレーライスとオムライス、それと店主のおっちゃんが

     チャーシューをサービスしてくれるこってり味噌ラーメンです」


明   「なぜ・・・ここに・・」


女   「好きなタイブは普段ふわっとしてるくせにいざと言うときはすごく頼りに

     なって、すごく優しく一緒にいるだけでなぜか幸せな気分にしてくれる

     猫とおでんが好きな男性です」


明   「・・・・・・・・・グスッ」


女   「あなたの事も知教えてください」


明   「・・・・趣味は最近もう一匹増えた愛ネコと戯れることで・・・」


明   「性格はのんきと良く言われます」


女   「・・・・・・・・」


明   「好きな食べ物は好きな人とおいしいお酒を飲みながら食べるおでん」


女   「・・・・・ぐすん」


明   「好きなタイプは普段は頭も良くクールでなんでも完璧にこなすのに

     予想外の事が起きるとアワアワしてしまう、カレーとダジャレが

     好きな占い師です」


女   「・・・・うぅぅ・」


明   「美音さん・・・」


美音  「私はあなたの事が好きです・・・本気で好き・・」


明   「僕もです」


美音  「あの時とは意味が違うのでしっかり聞いてください」


明   「・・・はい」


美音  「私と結婚してもらえませんか?」


明   「もちろんです!」


美音  「明さん・・・・・・・」


京子  (これで偽りじゃなくなったわね・・もうこれはいらないっと)

     離婚届け (ビリビリ・・・・)




~イベント後~





明   「でもほんとびっくりしましたよ」


美音  「私の中でケジメをつけたかったんです」


明   「別れを言われたとき本当にショックだったんですから」


美音  「・・・ごめんなさい」


美音  「でもショックって聞いてちょっとうれしい・・かな笑」


明   「まったく・・・笑」


美音  「京子にも協力してもらって・・・ほんと感謝してる」


明   「そうですね、なんだかんだあの人がいたから今の僕らがあるような

     ものですから」


美音  「なんか急にお腹へっちゃいました」


明   「お!奇遇ですね、僕もです」


美音  「明さんは何が食べたい気分ですか?」


明   「そうですね~」


明&美音「おでん!!」


明   「あはは・・・」


美音  「うふふ・・・」


明   「ではいつものところ行きましょっか」


美音  「はい!」


美音  「あ、食べ終わったら帰り明さん家に寄ってもいいですか?

     ハラミちゃんとたらこにも会いたいですし」


明   「もちろんですよー」


美音  「それと・・・・」


美音  「今日はソファーで寝ちゃだめですから・・・ね」


明   「!!!」


美音  「うふふ・・・」


明   「よ、喜んで!」





~完~


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

~双方が為に~ なべちん。 @838861

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ