第3話

次にお話したいのは「思い出」についてです。

自分を振り返って、数日間考えて見た事はありますか?

本当に1日何もしないで考えるのは、できないですよね。

私はこれをしたことがあります。

何故なら私は前科者です。

10日間留置所に居ました。

当時の私は鬱病から、抗うつ剤を処方されていました。

でも、ご存知ですか?

例え鬱病でも、犯罪は、許されません。

通院記録も、抗うつ剤を飲んでいても、法律では関係ないのです。そして、

しっかり処罰を受けます。

当時の私はこんな理不尽なことがあっていいのか!と怒り、そして、全てが終わったと、抜け殻になりました。

留置所内では嫌になるほど時間がありました。

鬱病なために、他の人との相部屋を強く拒んだため、私は一番端の一人部屋に居ました。

毎日がとにかく長い。

そして、どうしてこんなことになってしまったのかを一から考え始めました。

私の病気はいつか、信頼できる人が現れて、理解してくれて救ってけれる物だと信じ、ずっと長い間そんな人を探しては失敗し、

みつけた!と思ってはまた違うを繰り返し、運が悪いのだと思っていました。

信じすぎて裏切られる。

そして事件を起こしました。

裏切ったのは相手なのに、何故罰せられるのが私なのだろうかと当時は怒りと憎しみしか無かったのです。

しかし、1度無になって考えてみました。

わたしの心が宿った時、属に言う物心ついた頃からのことを考えてみました。

すると、不思議でした。

何故か辛いことばかりの人生だったはずが、

思い出すことは、嬉しかった事、楽しかったことを思い出すのです。

人は良い事はすぐ忘れてしまいます。

悪いことばかりが記憶に残るのですが、何故か、留置所という何も無い部屋で、無になって思い出すと、

楽しかったことが沢山思い出されたのでした。

私の中できっと、苦しいことの印象が大きすぎて、楽しかったこと出来事をいつの間にか封印してしまっていたのでしょう。


思い出して見ませんか?

楽しかったこと。

無いに等しい人といるかもしれません。

でも、1度くらい、心から笑った事はありませんか?

封印してし閉まってあるその気持ちをまた、おもいだしてみませんか?


ここで話はちょっとそれてしまうのですが、

留置所にいた頃こんなことがありました。

私が拘留されてから、1週間過ぎた位だったでしょうか。

隣の部屋に高齢な方が入ってきました。

とても大人しく、私にも気を使ってくれて、看守にもいつも、

「ありがとうございます」というほどの穏やかな優しそうな方でした。

私は「こんな方が事件を起こしてしまうなんて、よっぽど何かあったのだろう」

と、勝手に思っていました。

ただ、気になったことと言えば、貸し出しの雑誌がいつも、若者向けのファッション雑誌だったことくらいです。

それもきっと、お孫さんに服を買ってあげたいのかな?なんて思ったりしていました。

その後私が留置所を出ると、直ぐに驚きのニュースが、流れました。

留置所内で、自らの命を終わらせてしまったのです。

介護疲れで、身内を手にかけてしまい、逮捕されたのだとニュースで知りました。

本当は優しい方なのだと私は感じました。

きっと亡くなるにも、私が出てからにしようと配慮してくれた気がしてなりません。

留置所に入ってみると、色々な人がいて、それぞれの人間模様があります。

そして中にはこの様な、悲しい出来事も起こってしまうのです。

もし、この方にお孫さんがいたとしたら、私はその子が心配です。

全く接点もなかった他人同士ですが、

私の心にいつまでも、記憶されています。


介護疲れもそうです。ひとりで抱え込んでしまったのでしょう。

真面目で正義感の強い優しい方だったのでしょう。

どうすることも出来ずに追い詰められてしまったのでしょう。

この方にも、きっと、楽しかった思い出が沢山あったはずなのです。

自分を救えて、自分を守れるのは自分だけ。

でも、世の中には自分を犠牲にしてでも、誰かを守ろうとする温かい人も居るのです。

わたしはそんな人と話がしたいです。自らの命をたってしまう前に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メンタルコーディネーター とさかのらてぴ @taruto501

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ