第41話国際電力会議
7月19日金曜日AM10:00
沢田、矢部、二階堂の3人は総理官邸で安倍総理と向き合っていた。
二階堂が言う。
「それでは、来週の月曜日に帝国ホテルで電力会議を行います。参加国はドイツ、イタリア、カナダ、南アフリカ共和国、オーストラリア、インドネシア、トルコ、アルゼンチン、オーストリア、ポーランド、ギリシャ、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ベルギー、スペイン、スイス、ハンガリー、台湾の以上20か国で宜しいですね」
総理が言う。
「台湾を入れることについては中国から横槍が入るかも知れないが、台湾電力は中国とは無関係だからね。気にする事は無い。韓国はどうなってるんだ?」
二階堂が答える。
「竹島の件と、去年のレーダー照射問題、それと慰安婦像撤去を含んだ問題解消を条件にしましたが、経済と政治は別に考えて欲しいと言う返答だったので保留にしています」
総理が頷いて言う。
「頭を下げてくるまで無視しましょう。しかし、20ヶ国が一度に契約するとなるとハイドロエナジーの契約金は凄い事になりますね」
矢部が言う。
「ドイツの電力使用量が飛び抜けて多いので200ミリオンにしますが他の国は一律100ミリオンで合計2100ミリオンになります。初めのアメリカでの契約から『自国内でのプラントで、自国内での水素の利用に限る』と入れてあって正解でした」
総理が言う。
「JARE からの収益も考えると納税番付上位の常連になるのも近いですね」
沢田が言う。
「税金は喜んで納めますよ。ただ、無駄遣いは止めて欲しいです」
安倍総理が聞く。
「例えば?」
「アメリカに買わされている戦闘機だとか、基地に対する支出。議員の地元に向かって延びる無駄な高速道路。豪勢で低家賃な議員宿舎等の議員の待遇。国民の怒っている声は聞こえますよね」
総理が言う。
「沢田さん。こうやって面と向かって正直な意見を言われると気持ちいいですよ。国会以外で面と向かって意見を言う人が居ないのでね・・・アメリカの件は安全保障条約が絡んでいるのでね」
沢田が言う。
「そんな条約、止めちゃえばいいですよ」
総理が椅子から背中を浮かす。
「何かアイデアが?」
「エネルギーは力ですよね。水素の契約に『貴国、又は貴社の国が日本に対して武力を使っての威嚇、又は武力を行使した場合には、この契約は直ちに終了する。その場合の契約金の一切の返金はしない』なんてどうかな。契約が済んでる相手にも、再契約時に同じ様な内容を追加して」
二階堂が言う。
「1年後だと、アメリカでは水素発電のシェアが十分に広がってますね。後戻り出来ない。メジャー3社が国に指示しますよ。絶大な力をもっていますから」
沢田が言う。
「隣国の北朝鮮と韓国と契約する場合には期間を1ヶ月更新にして、何か有ったら直ちに水素発電を使えなくする。ミサイルが日本の上を飛んだら終わり」
総理が笑う。
「それはいい」
二階堂が言う。
「安保解消はどうですか?取りあえずF35の契約を止める」
総理が言う。
「基地を引き上げると言われたら?」
沢田が言う。
「引き上げて貰いましょう。継続して基地を使いたい場合は、一切の経費はアメリカ持ちにして、アメリカの管制空域も無くす」
総理が言う。
「それじゃ、まるで、喧嘩を売ってるようだ」
二階堂が言う。
「喧嘩を売るんです」
沢田が二階堂の、言葉を引き継ぐ。
「万が一、戦争にでもなったら空母くらいは簡単に沈めますよ。私が」
総理の目の色が変わった。
官房長官が言う。
「それが出来たら総理の名前は日本の近代史の中でも輝くでしようね」
総理が考えて言う。
「やりましょうか。安保破棄」
二階堂が言う。
「F35は以前の予定通り三菱重工に依頼した工場で組み立てましょう。やはり、大金を遣った工場を使わないのは無駄です。アメリカからの完成品は無しで」
官房長官が言う。
「国内での組み立てで1機当たり少なくとも15億円の節約になります。納入間近な20機は仕方ないとして、残りの分は国内に切り替えましょう」
総理が言う。
「本来、国内組み立て分も、あと30機有れば十分だ。沢田さんが心強い事を言ってくれるので、純国産が出来るのを待ちましょう。横田空域も今年、一部通過が可能になったが、未だに日本の空とは言えない。返還させよう」
二階堂が興奮して言う。
「日本もやっと本当の独立国になりますね」
その時、Jアラートシステムの警報が鳴り響いた。
二階堂がスマホに映し出されている情報を見て言う。
「北朝鮮のミサイルです。東北方面に飛行中!」
沢田は二階堂のスマホを確認すると官邸から走り出た。
沢田は北に向かって全速力で飛んだ。着ていたサンローランのスーツが破けるが気にしない。
Jアラートでは5分後に秋田県上空に到達となっていた。
マッハ3以上のスピードで飛んでいたが間に合わない。秋田まで10分は掛かってしまう。
福島県の上空で静止して意識を北に集中する。
沢田の目に飛行する弾道ミサイルが見えた。
全身の力を両手に集める。両手が白く光る。光の玉を放った。意識はミサイルにロックオンされている。
0.01秒後、ミサイルは秋田の手前、日本海上で爆破された。
さらに意識を北西に向ける。飛んでくるミサイルが2機。同様に爆破して沢田は首相官邸に戻った。
飛び立って僅か10分で戻って来た沢田を二階堂が迎えて言う。
「撃墜したんですか? 3基のミサイルが発射された様ですが」
「バラバラになって日本海に墜ちてるよ」
総理が執務室で2人を迎えた。総理が言う
「沢田さん。ミサイルはあなたが?」
沢田がボロボロのスーツ姿で答える。
「空母ぐらい沈めるって言ったのを信じて貰えますか? あーあ、スーツが台無しだ。マクロンさんから貰ったのに」
安倍総理が笑いながら言う。
「日本の守護神ですね。スーツは私からプレゼントします」
アメリカのNSA (国家安全保障局)の衛星は北朝鮮からのミサイル3基を捕捉していた。日本に向かって飛び、海上で消えた。
直ぐにワシントンのトランプ大統領に報告が届く。補佐官が日本に確認すると、日本側で撃墜したと言われる。
トランプ大統領は考えた。運良くイージス艦がミサイルを捉えたのか・・地上のイージスアショアは、まだ出来ていない。
午後6時。首相官邸には自衛隊3幕僚長が集められ、安保解消の会議が終了していた。
アメリカ大統領に向けて公式のEメールが送られる。
ワシントンDC、ホワイトハウス・ウェストウィングのオーバルルーム(楕円形の大統領執務室)隣の秘書室で日本からのEメールは受信された。
現地時間、午前4時。夜勤の秘書がメールを受信した。内容に驚き、少しの間動きが止まる。
日本からのメールをプリントアウトし、秘書は躊躇せずに大統領の携帯電話を呼び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます