第22話 試験に失敗したら……

 「えーっと、試験に失敗したら徴用組織と言うのに組み込まれてしまうんです……」

 「「徴用組織?」」

 「はい、徴用組織と言うのは、町や周辺の治安を守る為の領主様と教会が組織をした色々な仕事を受け持ってくれる機関のことなのですが……」

 「へー、なんか凄そうな組織があるんだね。でも試験に合格をしたものを組み込むんじゃないんだねぇ~……」


 恐らくミツルの中では、前にいた世界の知識と照らし合わせて公務員的な職業を想像しているのだろう。


 「はい、そうなんですけど……ただ、その組織。どうやら評判があまりよくないんです」

 「評判?どんな?」

 「それが……、どうやら人買いの噂まで広がっているらしく…」

 「人買いって……、えっ……その組織って、領主様とか教会が関わっている組織なんだよね?」

 「はい…もちろんそうなのですが、ただその中でも周囲が言うには恐らくは、数年前に領主様が代替わりしていることが影響しているのではないかと言う話なのですが……」

 「代替わりと言うのことは、父から子へとかそういうこと?」

 「はい、数年前に流行り病で今の領主様のお父様が亡くなられてしまい、その後で今の領主様になったのですが、その方の統治方法と言うのが、色々と問題がありまして……」

 「具体的にはどういうこと?」

 「今回の試験に影響をすることだと、教会への援助を打ち切ったことだと思います。先代の領主様は教会に毎年ある程度の寄付をしていました。そのお陰で、教会は楽とは言いませんが、それなりには無料学校と言うのを運営することができたようです。それが今の領主様になって、いきなり寄付を打ち切ると言うことになりまして……」

 「えっ……そうは言っても、教会の学校は今も無料学校なんだろ?って言うか、領主が寄付金を打ち切って、それでもお互い仲良くして、組織とかを立ち上げたの?」


 [おい、ミツル!お前、話が長くなるんだよ!]

 (いやっ……、でもさ……)


 一人だけ話の内容がつかめないミツルは、苦笑いを浮かべながら小さくなり再び話を聞くことにした。


 「はい、無料なんですけど。その代わり実技試験で魔石を提出ってことになってまして……領主様と教会が仲が良いのかは実際のところ不明です…」

 「おねーちゃん。ちなみに、実技を受けない場合も無料なの?」

 「無料なんだけど……といいますか……私が初めて通いだした頃は、実技試験も魔石提出とかじゃなかったんだよね……」

 「それって、もしかして教会が資金難で学生に魔石を集めさせているってことに聞こえるんだけど……」


 [おい、ミツル!お前、意外と飲み込みはえーなぁ]

 (ここまで、来ると魔石が価値のあるものだってのは嫌でもわかるぞ)

 [あー、まーなー]


 「多分、ミツルさんの言われる通りだと思います……」

 「それで試験に失敗した人は徴用組織って言うのに組み込まれるんだよね?それで人買いの噂ってことは……なにかへんな噂話があったりするの?」

 「えーっと、実は知り合いの方が徴用組織に組み込まれた人を別な場所で見たと言ってまして……」

 「別な場所?違う町とかってこと?」

 「ええーっ…はい、町と言えば町なんですけど……」

 「ん?町と言えば町ってことは……ここよりは寂れてる場所ってこと?」

 「いいえ!こことは段違いに栄えている場所です!王都付近の繁華街です!」


 (アールヴ、王都ってことは、ここは王国なのか?)

 [おう、そうだぞ!]

 (王国の王都って、その国で一番栄えている都市だよな?)

 [まー、たぶん、そうだな]


 ミツルは、アンナの言っていることに疑いを持ち始めていた。

 彼女が言う徴用組織。

 治安を守るための組織と言うことであれば、町の中や周辺にいるのが、恐らくはメイン業務とはなるだろうが、だがそればかりではないはず。

 場合によっては、遠くまで離れて情報収集と言った業務も必要となると考えたからだ。

 

 「えーっと、ごめん。アンナちゃん。そう言った説明だと徴用組織がなぜ人買いの噂があるのかハッキリしないんだよね……」

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