第23話 アンナが話せないのは……
「はい……、そうですよね……。えーっと……」
アンナはミツルやアールヴに何かを話そうとしているのだが、明らかに恥ずかしそうにモジモジしている。
とは言っても、話を聞くだけの二人にとっては彼女が何故そんな恥ずかしそうな態度をとってしまっているのかは、全く理解できていない。
(なー、アールヴ。アンナちゃん、どうしたんだ?)
[さー、俺の方も詳細とかはまだ良くわかってねーからな、なんか話しづらいことでもあるんじゃねぇーのか?]
(話しづらいことね……)
まだ朝食を食べ終わった朝とはいえ、今日一日を無駄に終わらせたくはないミツル。
そうなると、できるだけ彼女との話もスムーズに進めたいなとは思い、横の方をチラッと見ると彼女の父親であるヨハンと目があった。
ミツルの方は別に偶然目があった程度のことであったのだが、どうやらヨハンの方としては違うようにとらえたようだ。
彼はミツルに何か分かったと言うような感じで頷く仕草を見せると……
「あー、アンナ!ちょっとお父さん、ミツルさんと大事な話があるの思い出したから、アールヴ君連れて向こうの方に行っておいてくれないか?大丈夫だって!お父さんの方から、あの事は話しておくからなぁ」
恐らく、ヨハンが言うあの事と言うのがアンナの今、話せない内容のことであろう。
[なー、ミツル~。お前、このおっさんと話せるか?]
(んー、まー。話を聞くだけなら問題はないと思うんだけど……)
[そっかー、分かった。ここは任せるけど、あくまでも先走った行動はすんなよなぁ]
(あー、うん。とりあえずは任せてもらってもいいよ)
「ねー、ねー。アールヴ君、ちょっとお姉さんとあっちの方に行ってようか?」
「んー?あっちー?」
「うん!
「えっ?ほんと?
と言うようなやり取りをしながら、アンナとアールヴの二人は席をたつと入り口の方へ二人仲良く歩いていく。
アールヴの本性を知っているミツルとしては、複雑な表情で二人の様子を見守っていた。
やがて二人の姿が消えると、ヨハンが若干前のめりになり……
「それで、ミツルさん。アンナが言いにくかったことって言うのがですね。実は、遊郭なんですよ」
「えっ……遊郭?って……、その女性が集まってるところの遊郭?」
「はい、もちろんです。ちなみに、その見かけたと言う人は女性ですからね!」
「女性を遊郭でってことはですよ……その、見たのって言うのは道端でとかじゃないですよね?」
「もちろん、そんなわけありませんよ。女郎としてですよ」
「なるほどね……。それでアンナちゃんは話しにくそうにしていたと言うわけですか」
「ええ。すいません、とは言ってもこういう話をおいそれと話すわけにもいかないですからね……。子供もいましたし」
ヨハンの話を聞きながら、ミツルは確かに女性からは話しづらいなと納得をする一方で、アールヴの事を子供と思っているヨハンとアンナに対して笑いそうになる。
だが、細かい事情を知らない二人。
そんなことはいけないとミツルは冷静になりつつ再びヨハンとの会話に望む。
「でもですよ。その女性は徴用組織を辞めたわけではないのですよね?」
「もちろん、その辺りは彼女の家族も知るところとなりまして、家族の者が問い合わせをした結果、徴用組織の在籍ありと言うことになりました」
「えーっと、それなら言いにくいのですが、それは徴用組織の仕事の一部に含まれていると言うことですか?」
「仕事の一部ですか……?」
ヨハンが明らかに怪訝そうな顔でミツルの方を見る。
「例えばですけど、特定の人物から情報を引き出す必要があって、その人物が遊郭に出入りをしていてとかで……」
「と言うことは、女郎としては見せかけとかって事ですか?」
「えー、まー。詳しくは分からないんですが……そういう可能性もあるのかなと……」
ミツルの言葉にヨハンは腕組みをしながら黙ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます