第21話 試験の詳細

 「それ、ほんとですか?」


 ミツルが信じられないと言った表情で、ヨハンに訪ねる。


 ミツルとアールヴは結局、一晩かけてアンナのことについて話し合ったのだが、お互いの納得いく形で話し合いを終えることができなかった。

 唯一見つけられた着地点というのが、それはアンナの試験の詳細を先ずはもう少し知ろうと言うものだ。

 なので翌日朝食時に、アンナに詳細を聞こうと言うことで呼び止めて話をしようと思ったのだが……

 

 恐らくそんな二人の雰囲気をアンナ本人よりも父親であるヨハンが敏感に察知したようで、彼女との話に自分も混ぜてくれといいながら、ほぼ強引に混ざってきて話が始まるや、そこそこのうちにある条件を出してきたのだ。


 「はい、二言はありませんよ。お二人が娘の試験に協力してくれるのであれば、その間の宿泊費用は一切いただきませんので」


 (なー、アールヴ?これって、協力やっぱり無理なの?)

 [なに……報酬に吊られてるのか?]

 (えっ……、いや……)

 [いや、じゃねーよ!モロにそうじゃねぇーか。いいか、俺があのねーちゃんに協力できねー理由の一つ忘れた訳じゃねーよなぁ]

 (分かったよ。先ずは、そこを聞くんだよね)

 [おう!] 


 「あのー、すいません。ちょっと、アンナちゃんの方に先ずは聞いておきたいことがあるんですけど……」

 「はい?なんでしょうか?」

 「えーっとね、モンスターを倒すのが最終試験なんだよね?」

 「はい、そうです」

 「それって、どのように試験の判定をするの?」

 「試験の判定ですか?」

 「うん。例えば、昨日アンナちゃんに聞いただけの情報だと、アンナちゃんと友達をこの宿に置いておいて、俺だけモンスターを倒しに行って、その結果をアンナちゃんと友達の手柄にして、二人は合格とか、そう言うこともできるんじゃないのかなって……それに、試験の詳細とかも、まだ分からないから、協力するにしてももう少し詳しいことが分からないとね……」

 「あー、確かにそうですね」

 「えーっと、実はこれなんですけど……」


 アンナはそう言いながら、一つの親指大の石のようなものをテーブルの上に転がした。


 [魔石だな]

 「魔石?」

 「はい、そうです。これを指定の大きさまで大きくした後に教会に提出するって言うものなんです」

 

 [いいか…、あまり突っ込むなよ!後で説明してやるからな!]

 (あっ……、うん。分かった)


 「おねーちゃん。これをどのくらいまで大きくするの?」

 「ちょうど、お父さんの握りこぶし位までかな……」


 そう言ったアンナの視線が、ヨハンの右手に集中した。

 それを見ていたヨハンは、自身の右手を力強く握りこれくらいの大きさかと分かりやすく示してくれる。

 あまり深く突っ込まないように言われているミツルは、それがどの位の意味を持つのかも分かっていない。

 なので、ちょっと乾いた感じになってしまうが無言で頷くのが精一杯と言えば精一杯の動作だったのだが……


 「えっ?そんなに……?」


 横にいた事情を知っているであろうアールヴの反応は、ミツルとは全く正反対のリアクションを見せる。


 (あの顔からすると、かなり難易度が高いのだろうな……)


 「そうなんです……はい……」


 アールヴのリアクションがアンナにとっても当然と言うように、力ない感じで頷いていた。


 「提出するのは魔石だけでいいの?試験官とかが同伴したりはないの?」

 「はい、そうです」

 「なるほどぉ~」


  (ちょっと、アールヴ。それで、どんな感じなの?)

 [どんな感じなのとは?]

 (力になってあげれそうかどうかってことなんだけど……)

 [あー、そういうことか……。力になってあげれるのはあげれるとは思うけどよぉ……。多分、間に合わねぇんじゃねえのかな……]

 (間に合わない?)

 [おう]


 「ねーねー。おねーちゃん!その実技の試験って、失敗すると何かペナルティがあったりするの?」


 ミツルはこの時のアールヴの言うペナルティと言うのが、再試や追試、はたまた留年や退学とかそう言うものだと思っていたらしいのだが…

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