第20話 ミツルの考え

 「アールヴって、俺のことどのくらいまで知ってるの?」

 「んー、どのくらいって言われてもなぁ~。仕事の関係でいきなり担当にされて資料渡されてって感じだからなぁ~」


 アールヴの言葉に、自分の元いた世界に何か共通なものを感じるなとミツルは感じながら、ふと自分が首を吊ろうとした、あの僅か二日前の出来事を改めて思い出した。


 「俺って昔から要領が悪いって言われ続けてたんだよね。小さい頃から何をやるにも自分で決めれなくて、余りを仕方なく受け持って、自分で決めたわけでもないから興味もない。かといって断ることも出来ない。そんな状況でやっても上手くできなくて……」

 「ふーん……」

 「大きくなってもそんな調子は変わらなくて、次第に周りに集まってくるのも俺が自分で決められない性格だとか、断ることが出来ない性格だとか分かって集まるヤツばっかになってな。気が付くと、なんでもかんでも嫌なことは俺に押し付けて後は知らんぷりっていうヤツばっかりだったんだよ」

 「でも、よー。だからって……」

 「アールヴの言いたいことも分かるよ。もしかするとアンナちゃんは違う理由で、ああなっているのかもしれないかもしれない。それに、これから先、その時の自分に重なるような人を全員、気にかけていく暇なんて無いってことも……」

 「だったら断った方がいいんじゃないのか?」

 「そうなの?それなら、アールヴの言う通りやっていけば、今後苦労がないってことか?」

 「お前が、それを望むんなら、そう言う生き方もできるぞ!」

 「えっ?出来るの?」

 「おう、なんって言ってもよ!俺神だし!」


 ミツルの中では、アールヴの否定を期待していたのだろう。

 だが実際には思いの外自信満々のアールヴ。

 一瞬で決心が鈍りそうになりながらもミツルは必死に思い止まる。

 

 「でも多分だけど、俺これからモンスターと戦ったりする機会って何度かあるよね?」

 「んー、旅をするってことだとあると思うぞ」

 「それなら、やっぱどこかで戦い方を覚える必要があると思うんだけど……」

 「それが今だと?」

 「今かって?って聞かれるとちょっと分からないんだけど……ただ、こういうことって後に回すと、その分切羽詰まるって言うか大変なことになったりしないか?」

 「んー、それはどうだろうな。なるかもしれねぇーし、ならねぇーかもしれねーな」

 「だよね。でもそれなら逆に今やれることかどうかって言うのを考えてみると、たぶん今やれることなのかなって思うんだよね」

 「まー、やろうと思うなら情報を集めながらでも出来なくはないかもな」

 「だよね。それなら、やっていきたいなと思うんだけど……」

 「どこで、どうやって覚えるんだ?」

 「それだよね……それでアールヴが教えてくれるなら、それが一番いいとは思うんだけど……」

 「俺が教えるって言ってもな……10日くらいとかだと多分、属性とその使い方くらいしかおしえられねーぞ」

 「それ覚えれば、周囲のモンスターと戦えるの?」

 「一人でってことか?それともおねーちゃんも一緒ってことか?」

 「出来れば一緒がいいんだけど……」

 「遭遇するモンスターにもよるんだけどな……後、あのおねーちゃんが想像以上にっていってる理由は、単に戦力として意外にももう一つあるんだよなぁ」

 「もう一つ?」

 「おう、単に戦力って問題なら最悪、ミツルが一人で戦って後であのねーちゃんの手柄にすればいいんだけど……でも、あのねーちゃん試験って言ってたよな?」

 「うん、言ってた」

 「試験って普通、受ける本人の成果を試すような何か仕掛けって言うのがあるんじゃねぇのか?だとするとだ!あのねーちゃんの試験の場合は、あの貧弱な魔法でモンスターを倒した証しみたいなのが試験を突破するには必要だと思うんだ!じゃねーと試験の意味ねーし。だとしたら、あの魔法の力は最低限に達してねぇんだよぉ」

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